びんのなか

想い出話や感想文など。読書メモが多め。ネタバレだらけです。

底なしの沼

 ふと星新一の「底なしの沼」を思い出しました。

だいぶ前にも書きましたが、私がこの作者を知るきっかけになった作品です。そのため、ものすごく印象に残っています。

 

 ものすごくくだらないことが切っ掛けで始まった地球とバギ星の戦争。お互いが戦争をやめたくてもやめられず、ただただ疲弊していく話です。戦争を始めるのは簡単だけれど、終わらせることがいかに難しいかということが描かれていました。

 

 あと「白い服の男」という作品。これは表題作になっています。「戦争」という概念を地球上から消し去ることで平和な世界がつくられている話です。戦争に興味を持つだけで大罪。また、戦争という概念を消し去るために歴史は改変されていきます。そして「平和」という目的のためには、いかなる非人道的な行為も許されるのです。作中で、<私は最も正しい戦争よりも、最も不正であっても平和のほうを好む>というキケロ(紀元前のローマの哲学者らしいです)の言葉が出てきます。それを徹底した世界。読んだ当時は、偽りで塗り固められた平和な世界に少し恐怖を覚えました。

 

 今では戦争がこの世からなくなればいいのにと思います。平和な世界が戻って来ることを願っています。