びんのなか

想い出話や感想文など。ネタバレだらけです。

オズのつぎはぎ娘

 オズシリーズ7作目。表紙絵を見てもわかると思いますが、見どころはかかしのロマンス。

 

 

 

ーあらすじー

 オズの寂れた処にナンキーおじさんと一緒に住んでいた少年オジョ。オジョはおじさんと魔術師のピプト博士の家を訪れます。ピプト博士は<いのちの粉>の発明者で、妻のマーゴロットのためにパッチワークキルトの人形(=ツギハギ娘)に命を与えて召使を作ってやろうとしていました。ピプト博士の家には他にも<いのちの粉>で生命を与えられたガラスのネコ、バングルがいます。ところがツギハギ娘に命を与える際ハプニングが起きて、ナンキーおじさんとマーゴロットは大理石になってしまいます。この魔法を破るためには、エメラルドの都にある<六つ葉のクローバー>、ウィンキーにいる<黄色いチョウの左の羽根>、<暗闇の井戸の水を1ジル>、<ウージイのしっぽの先の毛を3本>、<生きている人間のからだの油を1滴>が必要だそうです。これらを探すためにオジョはツギハギ娘のスクラップスとバングルとともに旅に出ます。

 旅先で出会ったウージイはしっぽの先の毛を抜いてもよいと言ってくれますが、どんなに引っ張ても抜けないので同行することになりました。それから危険な葉っぱから偶然助けてくれたモジャボロも加わり、エメラルドの都を目指します。途中、木挽き台の馬に乗ったかかしに出会い、かかしとスクラップスは惹かれ合うのでした。

 エメラルドの都に着いたところで、オジョは<六つ葉のクローバー>を見つけます。ただし、オズの法律でこれを摘み取ることは禁止されていました。しかし、オジョはおじさんを助けるため法律を破ってクローバーを摘みました。そしてオジョはオズマの命令で逮捕され、囚人となってしまいました。その後、自分の罪を認め赦されたオジョは、スクラップス、かかし、ドロシーとともに再び旅に出ます。

 <暗闇の井戸の水>を無事手に入れたオジョたちは、次にチョウの羽根を手に入れるため、ウィンキーのブリキの木こりを訪ねます。ここで、ブリキの木こりから<生きている人間のからだの油>を手に入れ、残るは<黄色いチョウの左の羽根>だけになりました。しかし、生き物を傷つける行為を一切認めないブリキの木こりは、チョウの羽根を取ることを許しません。絶望したオジョでしたが、ブリキの木こりはオズマのところへ行くことを提案します。

 エメラルドの都へ戻ると、大理石となったナンキーおじさんとマーゴロット、そしてピプト博士がいました。グリンダに命じられて魔法使いは、ピプト博士から魔力を剥奪し、大理石となった2人の魔法を解いて元に戻します。こうしてオジョは大好きなナンキーおじさんと再会することができたのでした。

 

ー登場人物ー

オジョ:主人公。貧しくて退屈な生活に飽きてきている。自分が<不運なオジョ>だから、何事もうまくいかないのだと思い込む。本来は心優しい少年だが、おじさんを救うために何かと利己的な行動が多い。

スクラップス:ツギハギ娘。オジョが脳みそをこっそり追加したためか、容姿同様ぶっ飛んだキャラに。かかしのことを心からハンサムだと思っている。

バングル:ガラスのネコ。ピンクの脳みそとルビーの心臓を持っている。このため、うぬぼれやで高慢な性格となった。常識はある方。魔法使いによってピンクの脳から透明の脳に入れ替えられて、つつましい性格となった。

ウージイ:箱が組み合わさったような生き物。怒ると火を吐くことができる。ミツバチが大好物。自分がとても恐ろしい生き物だと思い込んでいる。

モジャボロ:放浪癖がある。今回はオズの国の案内役。

オズマ:オズの国の最高支配者。心優しい美少女。絶対的権力によりオズに平和と安定をもたらしている。

ドロシー:オズマの親友で王女。カンサス出身。質素で着飾ったりすることを好まない、素朴な少女。冒険慣れしている。

トト:ドロシーのペット。今回は特にトラブルの原因とはならず。

かかし:スクラップスに一目惚れ。彼女の前ではいいかっこしようと頑張っている。あまり知恵の部分では活躍しなかった気がする。ジンジャー(@オズの虹の国)にメンテナンスしてもらっているらしい。

魔法使い:今回一番活躍した人。グリンダの弟子だと思っていたら助手になっていた。

ブリキの木こり:慈愛の精神の持ち主。生きとし生けるもの総てに愛情を注ぐ。理想が高く、例外を許さない。

ジャック:頭のカボチャは自給自足。一泊させてくれた。

ナンキーおじさん:オジョの大切な人。ものすごく無口。

ピプト博士:<ねじくれ魔術師>。体中曲がっている。性格がねじくれているわけではない。モンビばあさんに<いのちの粉>を渡した。魔法使いによって魔力を剥奪されたが、体のねじくれをまっすぐにしてもらった。

マーゴロット:ピプト博士の妻。気のいいおばちゃん。従順な召使を欲しがっている。

 

ーその他ー

☆ユリカについて

 「オズのエメラルドの都」で一切触れられていなかったので、てっきり措いて行かれたものだとばかり思っていたら、オズへ来ていたらしい。白い子ネコだったはずだが、ピンクの子ネコになっていた(「オズと不思議な地下の国」で、ユリカがピンクに見えるような描写はあった)。宮殿の人気者だとか。ちなみに、今作での出番は全くない。

☆いのちの粉

 振りかけると命が宿る魔法の粉。これによって、ジャックや木挽き台の馬、空飛ぶガンプが生まれた。

 「オズへつづく道」でいのちの粉を作った魔術師は死んだことになっていた。そして、ダイナという親戚のおばあさんが遺品を引き取った際に手に入れ、うっかり敷物のクマに全部振りかけてしまったので、この世にいのちの粉はもう存在しないはずだが…。

☆カタマラ水

 振りかけると大理石になる。「オズの虹の国」でチップ少年が大理石にされかけたのと同じ魔法かどうかは不明(こちらの場合、モンビが調合して飲ませようとしていた)。

☆不思議な住人達

・チス:大きなヤマアラシ(のような生き物)。針を発射して通行人にケガを負わせる。針は回収しなければならない。

トッテンホット:夜行性のいたずら小鬼。

・ユープ:人間を食べたがっている巨人。

・トビハネ族:一本足で飛び跳ねながら移動する。

・イッカク族:額に角を持つ。くだらない冗談を言うのが大好きで、それが元でトビハネ族と戦争状態になっていた。

☆魔法について

 オズの国では、グリンダとその助手の魔法使い以外が魔法を使うことを一切禁止されている。

 <北のよい魔女>はどうなったのか。彼女自身、ギリキンの国で<魔女>が住むことを禁止していたはずだが。

☆カドリングの国

 あまり開けていなくて危険な地域らしい。カドリングの国って、グリンダがいる国なのに…?

 

ー感想ー

 主人公がメインキャラではなく、普通のマンチキンの少年だったことが新鮮でした。魔法を解く材料集めの旅を通して、オジョの成長が描かれています。彼は世間知らずで、自分の利益を最優先することに疑問を持ちません。法を犯すこと、命あるものの体の一部を奪うことを正当化しようとします。大切なおじさんを何とかして救いたいオジョの気持ちはよくわかります。だからといって例外を認めてしまうことは、やはり許されないことだと思います。今回、オズマとブリキの木こりはそういった意味でとても大切な役割を果たしていました。

 オズマはオジョに自分の罪の重さを気付かせます。また、法律は為政者の気まぐれで作られたものではなく、どんなに馬鹿馬鹿しく思えるものでもちゃんと意味があると伝えます。一方ブリキの木こりは優しい心の持ち主ですが、その優しさは平等です。どんなに小さな命にも分け隔てなく愛情を注ぎ、オジョの都合で犠牲にはできないと突っぱねます。彼らの友人達も同様の考えです。困っている者の立場からすると、彼らの公平さは理不尽で意地の悪いものに感じてしまうかもしれません。それでもこうした彼らの甘やかさない優しさは素敵だなと思いました。…まあ、オズマも木こりもかなり極端に描かれてはいますが。木こりなんか、こんな人がそばにいたら息苦しくて仕方がないです。それでも今回のオズマと木こりが今までで一番好き。

 初登場となったトンデモ娘のスクラップスはかなり頭が良いです。ただし、常識や倫理観は欠如しているので、自分の本能のままに行動します。なので、オジョを助けたいと思えばオズマや木こりにも平気で反論します。彼女の自由さは、本来のオズのキャラクターそのもののような気がしました。オズは平和でとても安定した国となりましたが、それはオズマの独裁による秩序と調和によるものです。善人だらけでやや「うそくさい」世界における彼女の存在は、いい具合でアクセントとなっていました。

 他作品との矛盾点やツッコミどころも多かったですが、作品単体としては色々な要素が盛りだくさんで、今までのオズシリーズの中でもかなり面白かったと思います。物語のテーマがしっかりとしていてわかりやすく、エピソードそれぞれも考えさせられる内容となっていました。また、キャラクターも個性豊かで楽しかったです。冒険慣れしているドロシーもきっちり活躍してくれたのも嬉しい。最後、魔法の力ですべてが丸く収まったのもオズらしいと思いました。