びんのなか

想い出話や感想文など。読書メモが多め。ネタバレだらけです。

十二国記(12)白銀の墟 玄の月(一)

 やっと最新エピソードに辿り着きました。ものすごく長いので、できるだけ丁寧に読んでいきたいと思います。前に読んだ時は、それまでの内容を殆ど忘れていたこともあり、初めて知ったかのように感じたエピソードが多々ありましたが、あらためて読み直すと、めちゃくちゃ前作「黄昏の岸 暁の天」で語られていたことでした。本当に自分の記憶力のなさが恐ろしい。特に一巻は私のように時間の経過とともに内容を覚えていない読者のためか、ものすごく丁寧に前作で明らかになった戴での出来事が詳細に描かれておりました。

 

 とにかく登場人物が多い…。第一巻はまだそうでもないとか思っていましたが、結構多かったです。本当は四巻まで読んでからの方が効率がいいとは思う…;メモが長すぎた。

 

 

 

■□登場人物■□

■ 項梁(こうりょう)

 (元)禁軍中軍の師帥。暗器の使い手。痩せた長躯で人当たりの良さそうな顔立ちらしい。30代くらいか。驍宗が起つ日が来ることを信じて放浪していた。

■ 李斎(りさい)

 (元)瑞州師中軍将軍。隻腕となったが、ある程度戦えるようになっている。泰麒に対して過保護気味。騎獣は飛燕。

■ 泰麒(たいき)

 李斎とともに戴に帰還した。角を失っており、麒麟としての能力(王気を探す、転変する、使令を使うなど)が使えない。騶虞(とら)を延王から借りている。

■ 去思(きょし)

 瑞雲観の若き道士。20代半ばくらい(?)。驍宗の捜索への旅に志願し、李斎たちと行動をともにする。真面目で誠実。

■ 酆都(ほうと)

 神農(薬を売り歩く行商人の総称。幅広い情報網を持っている)。30代半ばくらい。物怖じしない性格。

 

■ 淵澄(えんちょう)

 瑞雲観の生き残りで、里の道士たちの纏め役(=監院)の老人。各地の道観を頼ることができるよう一筆認めてくれた。

■ 同仁(どうじん)

 淵澄たちを匿っている里の閭胥。

■ 喜溢(きいつ)

 浮丘院(ふきゅういん/琳宇にある道観)の都講(教師役の道士)。老人。李斎たちが浮丘院に迷惑を掛けることがないよう監視している(敵意があるわけではなく、可能な限り協力はしてくれる)。

■ 如翰(じょかん)

 浮丘院の監院。老人。

■ 建中(けんちゅう)

 あちこちの鉱山に抗夫を派遣している。無口。琳宇で李斎たちに活動の拠点となる住処を与えてくれた。

 

■ 平仲(へいちゅう)

 天官寺人(王や宰輔の側で私用を補佐する)。初老の男性。現王朝に不安を感じている。

■ 立昌(りつしょう)

 天官長太宰。

■ 浹和(しょうわ)

 泰麒の身の回りの世話をする女官。元典婦功(てんふこう/貴人の側で雑用をする女官)。泰麒が本物であることを証明した。立昌のスパイ(泰麒たちの監視役)。

■ 張運(ちょううん)

 元春官長で、現冢宰。王朝を好き放題に牛耳っている。泰麒の件も阿選には知らせていない。

■ 午月(ごげつ)

 小臣(王の身辺警護)。阿選の麾下。現禁軍左軍将軍の成行(せいこう)のもとで旅帥を務めていた。反逆者である阿選が正式な王となることに複雑な思いを抱く。

■ 駹淑(ぼうしゅく)

 小臣。午月の後輩。

■ 帰泉(きせん)

 阿選の麾下。驍宗が文州へ赴く際同行していた。驍宗より阿選の方が優れていると信じている。

■ 品堅(ひんけん)

 阿選の麾下(驕王の頃は別の将軍のもとにいた)。帰泉の上官で、驍宗が文州に赴く際同行した二師を率いていた。

 

■ 耶利(やり)

 私服で王宮内にいる(=官吏ではない?)少女。両腰に双刀を付けている(軽い身のこなしからも忍びっぽい)。驍宗側の主がいるらしい(今のところ正体不明)。それにしても個人の権限で王宮に身を置くってどういうことだろう…?軍人を独特な視点で見ている。

■ 巌趙(がんちょう)

 驍宗の騶虞・計都の世話をしている(巌趙以外寄せ付けない)。耶利の主とは耶利を通じて繋がっている様子。

 

■ 園糸(えんし)・栗(りつ)

 落ち着く先を求めて放浪していた母子。項梁がその旅に付き合っていた。項梁が李斎・泰麒と出会った縁で東架の里に身を置くことになった。

 

■ 英章(えいしょう)

 (元)禁軍中軍将軍。阿選の謀反発覚後、驍宗が起った時に戻る誓約の署名がされた地図を持って姿を消す。

■ 俐珪(りけい)

 (元)禁軍中軍師帥。師帥5人の中で最も若い。文州師将軍となった基寮(きりょう)の後任。

■ 剛平(ごうへい)

 (元)禁軍中軍師帥。

■ 杉登(さんとう)

 驍宗の麾下(本来は巌趙の麾下)の師帥。

 

 

■□物語の流れ■□

1.項梁が李斎と泰麒と合流(東架の里にいた瑞雲観の生き残りの協力を得る)。

2.去思を加え、行方不明の驍宗を捜すため文州へ向かう。

3.酆都が同行。

4.項梁が騎獣(狡・こう)を酆都の協力により手に入れる。

5.碩杖(せきじょう)で泰麒が項梁とともに李斎たちから離れ、白圭宮に向かう。

6.泰麒が「阿選が王である」と宣言する。

7.琳宇に到着した李斎(と去思、酆都)が情報収集を開始する。

 

 

■□メモ■□

■ 道観

 道士(道教の僧侶みたいなもの?)が居住する寺院のこと…らしい。宗教的なことに疎いので間違っていたらすみません。

 丹薬の製造を行っている。知識技術伝承の場という性質上、冬官と縁が深い。

■ 瑞雲観

 全国道観の中枢だった。阿選が新王として登極することに疑義を呈したことで、謀反と見なされ焼き払われた。

■ 轍囲

 驍宗が勝てなかった戦い(というか、戦うことを選ばずひたすら相手が受け容れることを待った)の土地。驍宗と轍囲には特別な絆が生まれたが、そのため阿選に焼き払われた。

■ 驍宗が行方不明となった直後からの流れ

▪ 霜元が状況を知らせるため鴻基に戻る。同時に(驍宗に同行していた)阿選軍は品堅に率いられて鴻基に戻る。

▪ 土匪討伐のため霜元の代わりに臥信が代わりに文州へ派遣される。

▪ 一旦文州の乱は平定されるが、承州で乱があるとの報せから李斎が承州に派遣される。霜元が軍の半数を率いて文州から承州に向かうよう指示を受ける(←一旦鴻基に戻った後、文州に戻ったのか?)

▪ 臥信に帰還命令が下る(ただし、軍の半数は文州に残す)。

▪ 李斎謀反の報せが入り、霜元・英章に李斎を討つ命令が下る(既に阿選謀反の報せが李斎より入っていた)

■ 驍宗の麾下たちのその後

▪ 英章・・・部下と誓約を交わし文州から散り散りになる。俐珪が師帥たちと英章を繋ぐ要であったが、俐珪との連絡が途絶えてしまう。彼の持つ情報が阿選に漏れてはいないと思われる。

▪ 霜元・・・率いた士卒とともに承州で姿を消す。

▪ 臥信・・・首都防衛のため鴻基に呼び戻されるが、一両日中に姿を消す。

▪ 巌趙・・・更迭されたが、鴻基に留まっている。計都の世話係が仕事なのかどうかは不明。部下は杉登を含め阿選軍に編入された。

■ 六官長たちのその後赤文字が新情報。それ以外は前作で言及されていた)

▪ 冢宰(詠仲)・・・鳴蝕の際の怪我が原因で死亡。

▪ 天官長(皆白)・・・行方不明。

▪ 地官長(宣角)・・・阿選により処刑される。

▪ 春官長(張運)・・・冢宰となって好き放題やっている。

▪ 夏官長(芭墨)・・・王宮を脱出するが、委州にて処刑される。

▪ 秋官長(花影)・・・王宮を脱出後、行方不明(李斎が慶に発つまではともに垂州を目指していた)。

▪ 冬官長(琅燦)・・・解任される。現時点ではどうしているのかは不明。

▪ 瑞州令尹(正頼)・・・鴻基にいる。混乱に乗じて国庫の中身を隠匿したため、阿選に捕らえられ厳しい詮議を受けているらしい。

* 項梁と平仲の持つ情報の違い

 項梁は宣角については何も触れていなかったため、処刑されたことは知らなかった可能性がある。一方、平仲は芭墨が行方不明であると言っていることから、処刑されたことは知らなかった様子。

■ 現在の朝廷

▪ 阿選は王宮の奥に閉じ籠りほとんど姿を現さない。

▪ 張運とその一派が取り仕切っている。

▪ 王宮全体がどうなっているのかははっきりとわからず、濃い霧に包まれている感じらしい。

▪ 虚ろな顔をした傀儡となった官吏が存在(所謂「病んだ」状態?)。

■ 驍宗の行方(1)

▪ 襲撃されて負傷したことは確実である。

→ 驍宗自身剣客としても優れている。相手が相当の手練れであったか複数人に襲われたのか?

▪ 襲われたのは函養山で間違いないだろう。

▪ 阿選に捕らえられたとは考えられない(捕えていればとっくに殺されているはず)。

▪ 生きていることは確実だが、自由に動ける状態にはない。

■ 驍宗の行方(2)

▪ 後から来る霜元と合流すると言って、護衛(25騎)を従えて列を離れる。しかし、霜元軍は誰も見ていない。驍宗と護衛25人は行方不明となる(計都だけ戻る)。

▪ 失踪前日の夜、霜元から内密に精鋭の兵卒15人を借りる。

▪ 驍宗は赤黒い鎧を着た顔色の悪い武将(阿選軍の者。嬉々として女子どもを狩るような残忍な人物)たちと一緒にいた。

▪ 驍宗と護衛(すべて赤黒い鎧を身に着けている)がどこかへ向かい、護衛の半数くらいだけが戻って来るが目撃される。戻ってきた護衛たちはニヤニヤと笑っていたらしい(←こいつらが驍宗を襲撃したのだろう)。

■ 驍宗と阿選

 独断・独善的な傾向が強い驍宗に比べて、阿選は部下とよく話し合い説明を厭わない。驍宗は他者に対して拒絶的、阿選は人を受け容れる包容力がある(泰麒も驍宗に対しては物怖じすることがあったが、阿選には懐いていた)。

* あくまでも帰泉(阿選の麾下)の主観(おそらくその通りだろうが)。驍宗に人徳がなかったかというとそういうわけではなく、驍宗の部下を覚える能力は驚異的(一度会えば雑兵でも覚えている)であったことからも、かなり慕われていたと思われる。どちらが人間的に優れていたかということでもないだろう。

 ■ 伏線的な何か(?)

▪ 山客から伝わったとされる古い戯れ歌。兵士が酒場で歌っていたらしい。歌詞の内容は陰惨。

▪ 文州と紅州の境目あたりの里で、少年が世話をしている者がいる。6年前満身創痍で里に運び込まれた。少年の父(結局死んだ)を妖魔から助けたということから、一旦はある程度回復したのではないかと思われるが、現在は風邪が原因で寝込んでいる。上記の戯れ歌をよく口ずさんでいる(彼の歌い方は戯れ歌にしては整いすぎているらしい)。

▪ 文州の東部の里に住む一家(父、兄、姉、妹)。毎月新月の夜に函養山に向かって流れる川に供物を流している。父曰く「大切な人が函養山で亡くなった」らしい。

 とある新月の夜、妹が供物を流しに行った折、上記戯れ歌を歌う蹲った人影があった。

 

 

■□雑感■□

 この時点では泰麒の思惑はまだはっきりしていません。前作のおさらい的要素が強く、泰麒が鴻基に戻ったくらいで、あまり話は進んでなかったです。

 色々ヒントが散りばめられているので、先が気になる巻でした。花影が生きていていたらいいなと、あらためて思いました。

 阿選の残虐さが描かれている一方で、元々の彼の人柄が良すぎることも気になります。

 一度は最後まで読んでいるのであらすじはわかっているのですが、今回はちゃんと前作の内容を踏まえた上で読んでいるため、新鮮な感覚で読むことが出来ました。この段階ではただひたすら先が気になる内容となっているので、純粋に面白かったです。