びんのなか

想い出話や感想文など。読書メモが多め。ネタバレだらけです。

十二国記(13)白銀の墟 玄の月(二)

  「白銀の墟 玄の月<第二巻>」の読書メモ。一・二巻が同時発売されたことからも、ここも一・二巻纏めればよかった…と思わなくもないです。内容的に纏めた方がわかりやすかった気がします。今更ですが。

 泰麒と李斎が別行動となったため、2ルートが交互に描かれる構成となっています。泰麒ルートはホラー寄り。登場人物が更に増えました。書き出しとかないと誰が誰やら分からなくなりそう。そして書き出してみたら、めちゃくちゃ多かったです。抜けているかもしれませんが、主要人物はたぶん大丈夫だと思います;好きなキャラクターもたくさん登場する分、あまり感情移入すると最後が辛くなる…。

 

 

 

青文字は既出です(名前だけも含む)。

【泰麒ルート】 

■□登場人物■□

■ 泰麒

 白圭宮に帰還した。阿選を新王だと言うが…?阿選に帰還を許され、瑞州候の地位を一応取り戻す。

■ 項梁

 英章の元部下。泰麒の大僕(護衛)として側にいる。

■ 耶利

 主に命じられて泰麒の護衛となる。主に対して絶対的な忠誠を誓っている。昇仙はしていない。

 

■ 阿選

 引き篭もって滅多に出てこない。

■ 琅燦

 阿選側に寝返った(?)わりには阿選に対する態度がぞんざい。冬官長大司空の座を退き、現在は太師となっているが、実質的な冬官の指揮を執っている。

■ 張運

 冢宰。事実上朝廷の最高権力者。権力を握ることにしか興味がない。阿選が引篭ってからは粛清は彼によって行われている。阿選に対して微塵も敬意を持っていない。琅燦とは折り合いが悪い。

■ 士遜(しそん)

 瑞州師宰。張運の手下。泰麒の要求をのらりくらりと躱していたが、とうとう泰麒に罷免された。

■ 立昌

 天官長太宰。

■ 哥錫(かしゃく)

 地官長。

■ 懸珠(けんしゅ)

 春官長大宗伯。女性。

■ 叔容(しゅくよう)

 夏官長大司馬。阿選麾下。

■ 橋松(きょうしょう)

 秋官長大司寇。

■ 案作(あんさく)

 冢宰補。上司の張運より冷静であると思われる。

 

■ 平仲

 天官寺人。いつの間にか姿を見せないと思っていたら「保衡(ほこう・以前平仲が就いていた職の上司にあたる)」に異動となっていた。

■ 浹和

 女御。張運の間者。…といってもほとんどの人間にばれている。

 

■ 恵棟(けいとう)

 阿選麾下。阿選登極後、淑容に小司馬に推挙されていたが、辞令が下りず無位無冠で過ごしていた。誠実な人柄で泰麒に瑞州州宰に指名される。

■ 友尚(ゆうしょう)

 阿選麾下。禁軍右軍将軍。恵棟とは軍に入ってからの朋友。

 

■ 文遠(ぶんえん)

 黄医(麒麟専門の医者)。泰麒にとっても馴染みのある人物。

■ 徳裕(とくゆう)

 文遠の部下の医官。泰麒の側で体調管理をはじめとする世話を任される。

■ 潤達(じゅんたつ)

 文遠が徳裕を助けるために寄越した医者。

 

■ 駹淑(ぼうしゅく)

 瑞州師に突然配置転換され、宰輔の警護を命じられる。

■ 午月

 駹淑同様、瑞州師となる。駹淑の先輩。

■ 伏勝(ふくしょう)

 瑞州司氏。阿選軍の元旅帥。気さく。

■ 品堅(ひんけん)

 阿選麾下。生え抜きの麾下ではなく、驕王の頃は別の将軍に付いていた。誠実な人柄。

■ 帰泉

 阿選麾下で品堅の部下。阿選を崇拝している。素直な性格。

■ 杉登(さんとう)

 驍宗、正確には巌趙の麾下。現在は品堅の下に就いている。

■ 嘉磬(かけい)

 皆白(前・天官長。鳴蝕の際に行方不明となる)の最側近。現在は官位を剥奪されている。

 

■□物語の流れ■□

1.泰麒が阿選と対峙。琅燦の口添えもあり、泰麒の帰還が認められる。

2.瑞州候として何もさせてもらえない泰麒が、張運を論破して士遜を罷免し恵棟を州宰に任命。

3.泰麒の身の回りが徐々に整い出す。その一方で、泰麒の側にいる者の一部の様子がおかしくなるなど、何やら不穏な空気が漂う。

 

■□メモ■□

■ 泰麒に近しい者たちの行方

▪ 潭翠

 芭墨が出奔した際に同行し、行方不明に。

▪ 正頼

 捕らえられて拷問を受けている

▪ 巌趙

 軟禁状態?

■ 王宮に蔓延る抜け殻人間たち

 与えられた役目以外何もしない魂魄を抜かれたような人間たちで、「傀儡」や「幽鬼のような」と表現されている。

 普通だった者が口数が減って元気がなくなっていき、反応も鈍くなり、そのうち反応せず無表情になる。徐々に変化していく者もいるが、いきなり変化する者もいる。劇的な変化は阿選に批判的な者に多いらしい。

■ 鳩(?)の鳴き声

 王宮に巣を作っているのか、鳴き声が聞こえてくる。

■ 耶利の主

 泰麒の護衛として耶利を紛れ込ませることができる、ということからそこそこの身分にいると思われる。巌趙を動かすことはできないらしい。

 ■ 琅燦について

 驍宗の身内とも呼べる人物…だったらしい。が、今のところ驍宗と関わるシーンが一切ないため、二人の関係性については不明。今でも「驍宗様」と呼んでいる。

 泰麒の発言を後押しするかのように、阿選や張運に対してよくわからない理論(詭弁的な)を展開している。

  

【李斎ルート】

■□登場人物■□

■ 李斎

 驍宗の捜索を担当。やや感情的になりやすく、冷静さを欠くことがある。

■ 去思

 道士。少し武芸の腕が上がった。

■ 酆都

 神農。視野が広い。

■ 喜溢

 浮丘院(琳宇の道観)に所属する老人。李斎たちに親身になって協力してくれる。

■ 建中

 差配。寡黙だが信頼のおける人物。

■ 朽桟(きゅうさん)

 函養山を取仕切る土匪の首領。非常に頭が良く、義理人情に厚い。自分たちの立場を冷静に分析している。

■ 習行(しゅうこう)

 神農。年嵩の痩せた男。

■ 余沢(よたく)

 習行の弟子。中背の若者。李斎たちに同行する。

■ 静之(せいし)

 瑞州師右軍の旅帥。臥信の麾下。轍囲での戦いの唯一の生き残り。怪我を負って身動きが取れないところを習行に助けられた。

 

■ 赤比(せきひ)

 朽桟の右腕。

■ 杵臼(しょきゅう)

 朽桟に近い部下。

■ 仲活(ちゅうかつ)

 片足の曲がった老人。朽桟の下にいる土匪。李斎たちに函養山を案内した。

 

■ 白幟の母子

 李斎たちが朽桟に捕まることになった原因。危険を顧みず強い信念の下、函養山を目指している。

■ 梳道(そどう)

 石林観系の道観の道士。若いが位は高そう。

■ 赴葆葉(ふほよう)

 白琅の豪商の主人。五十がらみの色白の女性。いちおう引退したらしいが、実権は彼女が握っている。牙門観と呼ばれる贅を尽くした要塞のような(?)別荘に住んでいる。本心を見せない曲者。何か隠している。

■ 茂休(ぼうきゅう)

 老安(函養山近くの小さな里)の里宰輔。

■ 男女の兵士

 元・文州師。名前は女性の方は菁華(せいか)、男性の方は不明。

■ 回生

 老安で怪我を負った武将の世話をしていた少年。12~13歳くらい。

 

■□物語の流れ■□

1.函養山に行くため李斎たちは白幟(はくし・一般人の巡礼者)を装うが、土匪とのトラブルに遭い朽桟たちに捕まる。朽桟の協力を得て函養山を捜索するが、手掛かりなし。

2.銀川という里の近くで出会った静之、余沢が合流。函養山付近の鉱山町を捜索するが、手掛かりなし。

3.鑑札のない石を買い取るという店(=非合法)の噂を聞き、裏で糸を引いていると思われる赴葆葉に会いに行く(驍宗が消息を絶った時期に函養山に出入りしていた荒民を探すため)。

4.習行より老安の情報を得る。静之と習行が老安へ向かう。一方の李斎は喜溢より阿選が王に選ばれたと聞かされる。真偽を確かめるため鴻基の情報に詳しい石林観系の道観を訪ねるが、梳道は噂に過ぎないと応える。

5.老安で匿われていた武人は既に死んでいた。死んだ武人は最後まで名乗らなかったが、白い髪と紅い眼だったー。

 

■□メモ■□

■ 赭甲(しゃこう)

 赤黒い鎧を身に着けた者たち。残忍で腕が立つ。

→ 李斎の記憶の中にそのような集団はいなかったがー?

■ 瑞雲観系と石林観系の確執

 もともと考え方が違う宗派同士で関係はよくなかったが、瑞雲観誅伐が決定的な溝を作った。←瑞雲観の阿選詰問を沐雨(石林観の首座)が止めたことで、石林観は阿選と通じていたのではないかと瑞雲観系の者が疑った。沐雨自体信仰心の厚い立派な人物であることからも、実際はあり得ない話らしい。

■ 手掛かり?

▪ 驍宗が消えて2ヶ月後くらいに十数人の軍人とみられる一行(甲冑は着ておらず、騎獣もなし)が目撃されている。中に一人怪我人がいた。

▪ 一目を憚るようにして大きな荷を載せた車を曳く者たちが目撃されている。

■ 名もなき者たちの話

▪ 第一巻で寝たきりの男の世話をしていたのは回生。男は死んでしまった。

▪ 第一巻で供物を川に流していた一家の姉が死亡。

▪ 梳道と別れる際に去思が見かけた女の顔は、どこかで見たことがあるようだった。

 

 

■□雑感■□

 振り返ってみてあらためて思いましたが、あまり内容的には進んでいませんね。情報的も少なめでした。

 特に李斎ルート。手掛かりを得たと思って向かっても空振り…みたいなことの繰り返しで。全体的に土匪や道観などの背景にかなり力が注がれていることも、話が進んだ気がしないように感じる要因かもしれません。仲間は増えましたが。絶望的な終わり方をしていたラストが一番よかった(?)です。

 一方の泰麒ルートも、泰麒が思うようにはなかなか事が進みません。それでも彼の周りに少しずつ人が集まって来ました。このあたりは先に希望が持てる展開で楽しいのですが、それ以上にホラー小説的な不安を感じました。幽鬼のような者たちがうろつく王宮、それだけでも気味が悪いのに、その病(?)が徐々に身近な者たちにも迫ってきていているようで、嫌な予感しかしません。