びんのなか

想い出話や感想文など。読書メモが多め。ネタバレだらけです。

十二国記(10)黄昏の岸 暁の天

 エピソード8。やっとここまで来た…。

 シリーズの集大成(だと思う)。例のごとく大事なところを悉く忘れていたことがわかりました。これでもう一度「白銀の墟 玄の月」を読んだらもっと楽しめるはず。先にちゃんと読んでおけばよかった。「魔性の子」とは表裏となっていて、ものすごく内容の濃い作品です。登場人物も多く、情報量もすごかったです。これ、今書かれていたら1冊では終わらなかったんじゃ…と思わなくもない。

 本当に今更ですが、個人的解釈で書いてますので悪しからず。

 長すぎるので途中で切りました。

 ■□あらすじ■□

 陽子が景王として登極してから2年の歳月が経った頃、金波宮に満身創痍の李斎が乗り込む。彼女は景王に戴を助けてほしいと願いに来たのだった。

 李斎によると、泰王驍宗は禁軍将軍の阿選に謀られて行方不明となっていた。そして泰麒もまた、阿選に襲撃された瞬間に鳴蝕を起こし行方不明となった。陽子は事の経緯を聞き、戴のために何かできないかと考える。陽子の報せを受けて六太とともに慶を訪ねて来た尚隆は、手を出さぬよう忠告する。しかし、戴を救うことを選んだ陽子は尚隆を強引に説得して、他国との協力も取り付ける。六太と陽子はこれが天の条理に反していないことを蓬山の碧霞玄君(玉葉)に確認を取るのだった。

 鳴蝕を起こした泰麒は蓬莱の生家に戻っていた。一切の記憶を失った彼はただの人として生きていた。彼の守護者たちは異なる世界の理がわからず、ただ本能のままに主を守り暴走していく。

 蓬莱の捜索を続ける麒麟たちは、ようやく泰麒(というか傲濫)の気配を見つけ、泰麒を探し当てる。しかし、泰麒は麒麟としての能力を失っていた。そんな彼を救うべく、六太、陽子、李斎は再び玉葉を訪れる。玉葉の助言を得て、延王は泰麒を迎えに行く。そして泰麒は蓬山へと帰還した。

 泰麒の容態は非常に悪く、玉葉西王母に助力を請う。李斎の懇願により西王母は泰麒の病を祓うことを聞き容れる。

 その後慶へ戻り、目を覚ました泰麒は陽子と言葉を交わす。その時陽子に不満を持っていた官吏が謀反を起こし、慶がまだまだ不安定な国であることが露呈する。これ以上迷惑を掛けられないと考えた泰麒は戴へ戻ることを決意する。旅立つ泰麒と李斎を陽子はひっそりと見送った。

 

■□登場人物■□

■■ 戴

▪ 李斎

 今作の主人公(だと思う)。瑞州師中軍将軍。逃亡の際右腕を失う。戴というよりは泰麒を助けたい一心で慶に乗り込んだ。情の深い人物で、冷静さを欠く面もある。

▪ 驍宗(ぎょうそう・泰王)

 行方不明となっている戴の王。人望が厚く軍人としても非常に優秀で、あらゆる面で隙がない。恐ろしい早さで朝廷を整えていった。彼の迷いのない苛烈さに不安を覚える者もいる。

▪ 泰麒

 字は蒿里。本名は高里。無邪気で優しい幼い麒麟だった。大人たちが自分の目を覆っていることを知っていた。阿選の襲撃から逃れるため鳴蝕を起こし蓬莱へ戻ってしまう。記憶を失い人として7年間過ごすが、その間に周囲に数々の悲劇をもたらす。

▪ 阿選

 禁軍右軍将軍。前王の時代から驍宗と双璧と呼ばれており、驍宗も一目置く存在だった。泰麒も懐いていたので人柄も問題なかったはずだが―。

 偽王として玉座に座った後は、刃向かうものすべてを破壊し続けている。

▪ 花影

 秋官長・大司寇。優しく聡明で非常に慎重な性格。李斎より10くらい年上で40代半ばくらいの女性(…ということは李斎は30代半ばくらい?)。李斎と親しい。

▪ 芭墨(ばぼく)

 夏官長・大司馬。年配?驍宗の麾下。

▪ 巌趙(がんちょう)

 禁軍左軍将軍。巨漢でおおらか。驍宗の麾下。

▪ 英章

 禁軍中軍将軍。驍宗の麾下の中で最も若い。知将で陰湿(?)な策を用いるタイプ。

▪ 霜元

 瑞州師左軍将軍。驍宗の麾下(?)。

▪ 臥信

 瑞州師右軍将軍。驍宗の麾下。奇計奇策の将。明朗。

▪ 琅燦(ろうさん)

 冬官長・大司空。驍宗の麾下。18~19歳くらいの女性。恐ろしく博識で、どの工匠とも話が通じる。六官の長としてはそぐわないような服装をしている。周囲が隠しているにも拘わらず泰麒に驍宗の身が危険であると敢えて伝えた。

▪ 正頼(せいらい)

 瑞州令尹(文官)で逸材中の逸材。泰麒の傅相で人当たりの良い好人物。

▪ 皆白(かいはく)

 天官長・太宰。驍宗の麾下。

▪ 張運(ちょううん)

 春官長。驍宗の麾下ではない。驍宗に対して批判的だった。

▪ 宣角(せんかく)

 地官長。驍宗の麾下ではない。温厚な若い文官。

▪ 詠仲(えいちゅう)

  冢宰。驍宗の麾下ではない。驍宗に対して不安を覚えていた。

▪ 潭翠(たんすい)

 泰麒付の大僕。表情に乏しい。

■■ 慶

▪ 陽子(景王)

 登極して2年くらい。まだまだ信頼できる官吏が少なく苦労している。周りに対して非常に気安く接するため、王としての威厳はあまりない。真面目で誠実な性格。延王すら動かす強い意志を持っている。

▪ 景麒

 字はない。愛想はなく、わかりにくい優しさを持った不器用な性格。なんだかんだ言って陽子とはうまくいっている模様。

▪ 浩瀚(こうかん)

 冢宰。かなりの切れ者で、口も回る。

▪ 遠甫(えんほ)

 太師。陽子の師。

▪ 桓魋(かんたい)

 禁軍左軍将軍。半獣。たまに陽子のストレス発散の相手もしているらしい。

▪ 虎嘯(こしょう)

 大僕(陽子付の護衛)。遠甫、桂桂、祥瓊、鈴と一緒に住んでいる。弟は少学に通っている。大雑把で気さく。

▪ 祥瓊(しょうけい)

 女史で陽子の友人。元公主だからかセンスが良い。

▪ 鈴(すず)

 女御で陽子の友人。

▪ 桂桂(けいけい)

 11歳で仙籍には入っていない。陽子が引き取り、虎嘯が面倒を見ている。素直で賢い。

▪ 杜真(としん)

 禁軍兵卒。実直な若者。

▪ 凱之(がいし)

 禁軍伍長。杜真の上官。権力を振りかざしたりしない気さくな人物。

▫ 閽人(こんじん)

 役職名で名前は不明。天官に属する。門のそばに控えて通行する者を記録し、身許を検め取次を行う。権力を振りかざすタイプの人物で、本作の最初と最後に登場するだけだったが、強い印象を与えてくれた。

▫ 内宰

 天官の中で、宮中内宮を掌る長。陽子に強い不満を持つ。

■■ 協力者

▪ 尚隆

 延王。長い治世を誇る名君で、他国とも広くつながりを持つ。かなり行動的。

▪ 六太

 延麒。泰麒のことを気に掛けている。

▪ 呉藍滌(ごらんじょう)

 氾王。20代後半の男性。趣味は良く女性の格好をしていて、美に対するこだわりが非常に強い。かなりマイペースで尚隆の天敵らしい。

▪ 梨雪(りせつ)

 氾麟。15~16歳くらい。華やかで愛らしい美少女。主と同様、マイペース。

▪ 廉麟

 18歳くらい。明朗な雰囲気。

■■ その他

▪ 碧霞玄君(玉葉

 蓬山の主。天と人とを唯一の接点で、天の意向を問う窓口となっている。美しい容姿。

▪ 西王母

 伝説的な存在の女神であるが、その容姿は凡庸。冷酷とさえ感じるほど情を持たない(プライドは高そう)。

 

■□メモ1■□

■■ 各国の動き
▪ 慶、雁、範、漣・・・蓬莱(日本)
▪ 奏、恭、才・・・崑崙(中国)
▪ 柳、舜・・・協力を得られず
▪ 芳、巧・・・王不在のため不可
 どう考えても中国の方が捜索範囲が広いと思われるが…。泰麒の出身が日本であるためこちらのほうが可能性が高いと考えられたのか。
 それ以前に崑崙捜索のメンバーは蝕を起こさずどうやってあちらの世界に渡ったのか。蓬莱の場合は漣の呉剛環蛇を使用したが…?それとも十二国側から調べる方法があったのか。

▪ 慶と奏

 今回の件で延王の橋渡しでつながりを持った(延王が景麒を連れて泰麒が見つかった報せを伝えるため奏へ行った)。

■■ 各国の宝重(今作で登場したものだけ)

▪ 慶

 碧双珠・・・治癒効果のある玉

▪ 範

 鴻溶鏡(こうようきょう)・・・映ったものを裂き、理論上無限に数を増やすことができる(能力はその分弱まっていく)。ただし遁甲できる生き物にしか使えない。

 蠱蛻衫(こせいさん)・・・薄い紗のような衣で、身につけた者は相手にとって好ましいように見える。

▪ 漣

 呉剛環蛇(ごごうかんだ)・・・蝕を起こさずにこちらとあちらに穴を通すことができる。人は通れず、一度に大勢も通れない。

▪ 戴

 秘蔵の宝重という記述のみで詳細不明。危機的状況で役に立つ何か…?

■■ 範について

▪ 治世300年。奏、雁に次ぐ大王朝。

▪ 工匠の国。美術品、工芸品に留まらず、細工するものなら素材から機器や道具に至るまで幅広い。特に道具の精度が高い。

▪ 街、建物、港を作るのに道具を必要とする雁とのつながりも深い。

■■ 使令

▪ 景麒

 班渠、冗祐

▪ 延麒

 悧角

▪ 泰麒

 汕子(女怪)、傲濫(饕餮

▪ 廉麟

 什鈷(じゅうこ/小型の犬に似ているが尻尾がなく、碧く丸い一つ目。老人の眉のような毛並みが瞳に掛かっている)←「魔性の子」に登場。こちらを<ハンシ>という名前だと思っていた;

 半嗣(はんし/不定形の影のような妖魔)

■■ 覿面の罪

 軍兵を率いて他国に入る罪。王も麒麟も数日以内に斃れる。

→ 遵帝の故事

 才の国氏が「斎」であった頃、遵帝という徳の高い王がいた。隣国の範で王が道を失い民が苦しんでいるのを憐み、王師を派遣した。ところが王師が国境を越えて数日後に王と麒麟は倒れてしまった。その後次王が登極すると御璽が「斎」から「采」へ変わっていた。これによりたとえ民の保護が目的であっても軍兵を他国へ向かわせる行為が大罪であることを知らしめた。

→ 陽子が延王に王師を貸してもらい偽王を討つ、というのは罪にならない。景王(陽子)が雁におり、王師を率いるのはあくまでも陽子であるから。体裁さえ整っていれば実情は問われないらしい。

→ 戴へ慶の王師を派遣して阿選を討つ、というのは完全にアウト。少なくとも驍宗が慶にいなければ慶の王師を戴へ向かわせることは大罪となる。

■■ 天の理

 この世界の法律みたいなもので極めて機械的な融通の利かない決まり事。上記の覿面の罪の例にあるように、実情はともかく体裁さえ整っていれば罰は発動しない。この理に背かない範囲であれば人道的に問題があろうと罪にはならず、逆に理に引っかかってしまうとどんな理由があろうと罪となってしまう。六太たちは解釈が不明瞭である時その是非を玉葉に確認している。