びんのなか

想い出話や感想文など。読書メモが多め。ネタバレだらけです。

オズのオズマ姫

 オズシリーズ3作目。ドロシー再登場。

オズのオズマ姫 (ハヤカワ文庫 NV 107)

オズのオズマ姫 (ハヤカワ文庫 NV 107)

 

 ーあらすじー

 ヘンリーおじさんとオーストラリアへ行くため船に乗っていたドロシーは、嵐の中海に投げ出されてしまいます。気が付くと、なにやら知らない土地にメンドリとともに辿り着いていたのです。メンドリは何故か言葉を話せるようになっていて、ドロシーにビリーナと呼ばれるようになりました。

 クルマ―(車輪人間)に追いかけられて逃げ出したドロシー達は、チクタクというロボットに出会い、彼らを追っ払ってもらいます。チクタクのおかげでこの土地が<エヴの国>であることがわかりました。また、この国を治めていた冷酷な王様がお妃様と子ども達を地下のノーム王に売り渡してしまったこと、そのノーム王はお妃様と子ども達を置物に変えてしまったこと、そして後悔した王様が自殺してしまったことを知ります。

 チクタクが加わった一行はエヴの国の城へ行き、王様の姪にあたるラングイディア姫に会います。ラングイディア姫は自分のコレクションの首とドロシーの首を取り換えるように言いますが、ドロシーはこれを拒否したために捕らえられてしまいました。その後エヴの国へやって来たオズマ一行に助けられたドロシーは、オズマとともにノーム王のもとへ向かいます。

 地底の国でドロシー達は、ヴ王家の人たちを解放するためにノーム王とのゲームに挑みます。狡猾なノームの前に敗北を喫しかけますが、ビリーナのおかげで全員(ブリキの木こり以外)助かります。そして、ノーム王の持つ<魔法のベルト>を奪い、ベルトはドロシーのものとなります。

 地上へ戻り、エヴの国でお妃様達と別れた一行はオズの国へ帰還しました(ブリキの木こりも見つかった)。ドロシーはオズマに<魔法のベルト>を預け、ドロシーが願えばいつでもオズに呼び出す約束をして、元の世界へと戻るのでした。

 

ー主な登場人物ー

 あらすじでは割愛してますが、今までのメインキャラのほとんどが登場してます;

 *は初登場です。

ドロシー:主人公。主人公らしく、さまざまなトラブルに巻き込まれる。そのためものすごく度胸が据わっており、ちょっとやそっとのことでは驚かない。どんな環境でも順応できるたくましい女の子。

オズマ:元(やんちゃないたずらっ子の)男の子だが、微塵もそんなことを感じさせない完璧なお姫さま。気品があり優しく、高いカリスマ性を持っている。ドロシーとは親友同士。

*ビリーナ:メンドリ。本当はビルという男性の名前がつけられていたが、ドロシーが女性形でビリーナとした。ものすごく気性が荒く、喧嘩っ早い。マイペースで、卵を産む時間は何があろうとしっかり確保する。常識的で頭もよい。オズの国に残る。

*チクタク:考える・喋る・動く、それぞれのネジをまかないと作動しない。1000年の保証付きだけあって、とても丈夫にできている。機械なので、心はないらしい。

かかし:相変わらずのんきで人当たりがいい。自分の知性には絶対的な自信を持っている。いつも問題があった時には解決策を考えてくれる。

ブリキの木こり:なんかわからないうちに軍隊を率いるようになっていた。プライドの高いロマンチスト(ややナルシスト気味)。高い戦闘能力を持っているうえに、器用でなんでも作れる。

臆病ライオン:久し振りに登場。他のメンバーの強烈な個性に押され気味。一番穏やかで優しい性格だと思う。

*腹ペコタイガー:臆病ライオンの友達。いつもお腹をすかせていて赤んぼうを食べたがっているが、良心があるので食べないらしい。最後に食欲がなくなったと言っていたが…?

木挽き台の馬:オズマの愛馬(?)。あるがままの自分を受け止めて生きている。結構賢い。

グリンダ:最後に少しだけ登場。<魔法のベルト>の使い方を教えてくれる。

ノーム王:サンタクロースのような気のいい小太りのおじいさん風の外見だが、冷酷で狡猾。魔法のベルトを持っていた。卵が毒。

執事長:ノーム王の側近。冷静にノーム王に助言する。

ラングイディア姫:ファッション感覚で首を挿げ替える(!!)。30の首を持っていて、自分の美しい顔を見つめるのが大好きであるため、鏡だらけの部屋に住んでいる。政治には全く興味がなく、むしろめんどくさいと考えているので、エヴの王妃たちが戻って来ることに賛成する(自分のことにしか興味がないため協力はしない)。

兵士たち:色々な階級がある。みんなプライドは高いがあまり役に立たない。

 

ーその他ー

☆カンサスでのドロシーの生活環境

 ヘンリーおじさんの体が悪くなってきたため、親戚のいるオーストラリアで療養することになった。エムおばさんはカンサスに残って農場を切り盛りしている。…てっきり3人で細々暮らしていたと思っていたら、雇人までいたらしい。

☆おとぎの国のルール

 <魔法のベルト>も<銀の靴>も、おとぎの国でしか効果はない(存在もできない)。なので、これらの魔法アイテムは元の世界へ帰ると消えてしまう。

☆おとぎの国の地理

 <オズの国>はてっきり砂漠に囲まれた独立した世界だと思っていたら、砂漠を隔てて<エヴの国>があるらしい(イラストでは<エヴ>は<オズ>の西側にあるが、作品を読む限り東側では?と思われる)

☆魔法のカーペット

 絶対に砂漠を越えることは不可能と思われていたが、グリンダに授けられた<魔法のカーペット>で道を作れば通ることが可能。

 

ー感想ー

 1作目の主人公ドロシーと2作目の主人公オズマが出会うお話。映画版オズでは、「オズのオズマ姫」をベースに「オズの虹の国」の要素を入れてる感じでした。ホラーっぽさの原因となったラングイディア姫とクルマーも、こちらでお馴染みの愉快な(?)キャラクターの一部でした。オズは面白キャラクターが多くて、彼らには独特のこだわりがあるので、会話が(ぶっ飛んだ内容で)楽しいです。相変わらずみんな個性的。

 今回で面白かったところ。1つ目は置物を当てるゲーム。これはちゃんとヒントがあるにもかかわらず、なかなか見つからないのが面白かったです。2つ目はビリーナ。今回一番好きなキャラクターでした。ものすごく気性が荒くて、初対面のオンドリに喧嘩を吹っかけて勝つあたりが最高です。そんな彼女ですが、言ってることは的を射ているのです。対ノーム王でも大活躍だったビリーナは今作の最大の功労者だと思います。

 オズは教訓めいてはないけど、考えさせらるところはあるかと。たとえば、ドロシーとビリーナの食に対する考え方で言い合いになる場面。ビリーナが虫などの生きているものを食べることに、ドロシーは嫌悪感を抱きます。しかし、ドロシーは虫を食べて生きているニワトリを食べている、とビリーナは返します。こういう立場の違いによる議論がちょこちょこ出てきます。

 また、オズマ(とドロシー)がノーム王に交渉する流れでは、ノーム王はエヴ王家の人々にひどいことをしている」→そもそもエヴ王が自分の長寿と引き換えにエヴ家の人々を売ったのだ」→ヴ王は自殺して長寿ではなかったから、長寿を与えたとは言えない(長寿を与えていない以上、エヴ王から売られた人々をそのまま受け取っているのはおかしい)」→一度引き渡されたものを受取側が壊してしまっても、引き渡したことに変わりはない(ノーム王は「長寿」を与えているので、結果的に長寿とならなくてもそれはノーム王の責任ではない)」→「・・・(ノーム王が正しい)。それでもノーム王のやっていることは人道的に許されない。代わりの贈り物をあげるからそれで我慢して」→嫌だと言ったら?」→力ずくで従わせます」→やれるものならやってごらん(圧倒的な力の差を見せつける)」→かかしの助言で懐柔策(ノーム王の機嫌を取り、置物当てゲームへ)

  ノーム王は、よくある法に触れないけど人道的にはアウト、そんな人のようです(そもそも人を買って置物にすること自体が問題)。まあ、屁理屈なんですが。ただオズマも武力行使で従わせようとする辺りが、ザ・支配者という気がしました。また、オズマが自分たちがノーム王(地底世界)の宝物を横取りしている、と認識しているあたりが妙に現実的だと思いました。このあたりがオズのメンバーが必ずしも「正義」とは言えないと思えるところです。そういえば、映画版ではドロシーが力で従わせるみたいなセリフを言うシーンがあって、その時「こんな幼い女の子の言うセリフか?」と思ったのですが、原作も似たようなものだったんですね。こういう考え方って、国民性の問題でしょうか…。

 こんなこと書いてますが、ドロシーもオズマも正義感が強くて優しい子です。魔法のベルトの取り合いとかなかったし、お互い張り合ったりしないし、本当にいい子だと思います。最後にドロシーが願えばいつでもオズの世界に来られるようになったのが良かったです。毎回偶然というのはいくら何でも無理があると思う。