びんのなか

想い出話や感想文など。ネタバレだらけです。

オズのグリンダ

  オズシリーズ14作目。こちらで最終作となります。あとがきによると、作者のボームは死の直前までかかってこの作品を書き上げたとのことでした。そんなわけで、完結ではないようです。

オズのグリンダ オズの魔法使いシリーズ

オズのグリンダ オズの魔法使いシリーズ

 

 

 

ーあらすじー

 グリンダを訪れたドロシーとオズマは、<魔法の本>でスキーザーとフラットヘッドが争っていることを知ります。オズの支配者として争いを止めるため、オズマはドロシーと2人だけでこっそり未知の国へと旅立ちます。

 フラットヘッドたちの最高執行官サイ-シツから話を聞いたうえでオズマは、争いを止めるよう忠告します。しかし、耳を貸さないサイ-シツはオズマとドロシーを捕えようとします。一瞬の隙をついて逃げ出した2人はスキーザーの国へ向かいます。

 スキーザーたちの女王クーイーオーと面会したオズマは、自分たちが両者の争いを仲裁するために来たことを伝えます。クーイーオーもサイ-シツと同様にオズマの話を聞き入れず、オズマとドロシーは捕らえられてしまいます。そして、2人は世話をしてくれることになったレディ・オーレックスから、争いの本当の原因を聞いたのでした。

 フラットヘッドたちの攻撃に備えて、スキーザーたちの住むドームは島ごと湖中に沈められました。クーイーオーは潜水艇で攻撃に出ます。ところがサイ-シツと対峙したクーイーオーは、ダイヤモンド・スワンに変身させられてしまいます。このため、クーイーオーは魔法を使うことができなくなり、彼女の魔法で沈められた島は浮上することができず、湖中に閉じ込められたのです。

 2人の危機を知ったグリンダは緊急でオズの重要人物たちを招集し、対策会議を開きます。話し合いの結果、グリンダたちはスキーザーの魔法の島へ行くことにしました。

 潜水艇に取り残されていたスキーザーの若者エルヴィックは、クーイーオーの魔法で3匹の魚となっていた<魔法の達人>に導かれ、ユークーフーの<赤毛のリーラ>を訪れます。そしてリーラの魔法で<魔法の達人>たちは元の姿に戻ったのです。

 <魔法の達人>たちの協力もありグリンダたちは、魔法の島を浮上させてオズマとドロシー(とスキーザーたち)を救出することに成功します。そして、スキーザーとフラットヘッドの争いも終わり、平和がもたらされたのでした。

 

ー登場人物ー

*主要なキャラクターだけです。多すぎた…。オズの救出隊メンバーは<その他>の項に記載しています。

ドロシー:主人公。活発で好奇心旺盛な女の子。オズマとは大親友。

オズマ:オズの支配者。絶対的存在ではあるはずだが、オズマの存在自体を知らない者たちも多い。とても強い魔力を持った妖精。非常に高い理想をもっていて妥協を許さない。

グリンダ:オズでもっとも力のある魔女。沈着冷静で、オズマの忠実で有能な部下。

魔法使い:グリンダの弟子。優秀な魔法使い。

サイ-シツ:フラットヘッドの支配者。自己中心的な性格で、権力を振りかざしている。脳ミソ缶を3つ取り込んでいるため、他のフラットヘッドより頭が良い。

ローラ:サイ-シツの妻で魔女。脳ミソ缶を4つも持っていたため、強い力を持つ魔女であったが、クーイーオーによって黄金のブタに変えられてしまった。

クーイーオー:スキーザーの女王。傲慢で冷酷。非常に研究熱心で優秀な発明家の魔女。ダイヤモンド・スワンの姿が気に入ったため、何事に対する興味も失った。

レディ・オーレックス:聡明なスキーザーの女性。クーイーオーのお気に入りだったため、多くの情報を持っている。救出された後は新たなスキーザーの女王となった。

エルヴィック:スキーザーの若者。クーイーオーとともに潜水艇に乗っていた兵士のリーダー。誠実で機転が利く。

スクラップス:つぎはぎ娘。陽気で落ち着きがなく、自由な言動で周囲を困惑させることもあるが、非常に頭が良い。今回も彼女の知恵が役立った。

赤毛のリーラ:ユークーフー(魔法使いの一種らしい)で変身の名人。滅多に本当の姿に戻ることはない。他人に干渉されることもすることも嫌う。ひねくれているが、悪人ではない。

魔法の達人:フラットヘッドを治めていた3人の美しい少女たち(フラットヘッドではない)。魔法を使ってフラットヘッドだけでなくスキーザーにも、さまざまな恩恵を与えていた。クーイーオーの策略で魚の姿へと変えられてしまった。(これが原因で、スキーザー、フラットヘッドそれぞれを傲慢な独裁者が治めるようになった。)

 

ーその他ー

☆銀の王笏

 オズマが魔法を使うための王笏。攻撃や防御もできる武器でもある。

☆魔法の指輪

 ドロシーがグリンダから渡された指輪。危険な状態にあることをグリンダに知らせることができる。

☆魔法のベルト

 身につけたものをあらゆる危難から守ってくれる。他にも色々できるが、今回は特にベルトの魔法が役に立つことはなかった。

☆オズマ

 妖精の女王ラーラインがオズをおとぎの国へと変えた時、オズを治める妖精を1人措いて行った。それがオズマ。(シリーズ序盤のオズマの父、祖父の話は…??)

☆グリンダのチャリオット

 空飛ぶチャリオット。白鳥が引いていたはずだが、今回はなぜかコウノトリだった。

☆フラットヘッド

 魔法の山に住んでいる。頭が真っ平らで脳ミソの収容スペースがないので、脳ミソの缶詰をポケットに入れている。脳ミソの缶詰はラーライン(妖精の女王)がオズをお伽の国としたついでにくれたらしい。

☆スキーザー

 魔法の島の建てられたガラスのドーム内の都市に住んでいる。ドームや内部の大理石の建物は<魔法の達人>たちによって作られた。身体的な特徴は特にないと思われる。

 

☆オズマの相談役

 かかし、ブリキの木樵り、スクラップス、モジャボロ、チクタク、カボチャ頭のジャック、キャプテン・ビル、ヒキノバシ・ウォグル・ムシノスケ、ヘンリーおじさん、オズの魔法使い

*相談役以外の救出隊同行者

 ベッツィ、トロット、ボタン・ブライト、オジョ、ガラスのネコ、臆病ライオン

 

ー感想ー

 前作「オズの魔法くらべ」のほのぼのとした雰囲気と違って、ややシリアスな内容となっていました。今回もほぼオズに住む主要人物はほとんど登場していました。

 オズの片隅にある国に平和をもたらすお話です。争っているスキーザーとフラットヘッド両国とも支配者だけが強い力を持っていました(国民は虐げられている)。特にスキーザーの場合、クーイーオーがいなければ魔法で動いていた仕掛けのすべてが使えず、島が沈んだままとなってしまいます。一部(というか1人)が大切な情報などを独占していると、その人の身に何かあった場合、後どうしたらいいんだって話の典型例のようでした。

 この物語のテーマの一つとして、「魔法が万能ではない」ということがあると思います。魔法がすべて「無」から生み出されるわけではなく、仕掛けや道具が必要となっていて、方法がわからなければ使うことも解除することもできません。そういったことが今作では特に強調されていたように感じられました。

 スキーザーの国の文明は近代的で(動力源が魔法であったとしても)機械が多用されています。そういったことを発明したクーイーオーはかなり進歩的な人物で、伝統的な魔女のイメージのグリンダとは対照的でした。グリンダの有能さは、魔法というよりむしろ、冷静な判断力や統率力といった形で表れていました。

 また、ドロシーとオズマの2人が一緒に行動するのは「オズのオズマ姫」以来ではないでしょうか。そもそもオズマがエメラルドの都の宮殿から離れることがあまりないので、当たり前なのですが。オズ全土の支配者としてその責務を全うしようとしているオズマと、あくまでも普通の少女ドロシーの違いがはっきりと描かれていて、オズマに比べてドロシーは(考え方が)かなり幼く思えました。

 全体としてはきれいにまとまっていて、中だるみすることなく楽しめました。3人の<魔法の達人>たちのエピソードは、どれもおとぎ話らしくて好きです。潜水艇などの近代的な要素と伝統的なおとぎ話の要素がほどよく混ざっていたと思います。ただ、オズの住人たちの不思議で面白い会話はあまりなかったので、そこが少し残念でした。