これでもかというくらいしつこいですが、オズです。
ずっと読んでくださっている方がいるのかどうかわかりませんが、もしいらっしゃったら本当にありがとうございました。
オズシリーズの面白さがちゃんと伝わっているとは思えませんが、もし当ブログの感想を読んで、「オズシリーズ読んでみようかな」と思った方がいらっしゃれば嬉しいです。
オズシリーズは(以前も書きましたが)1900年から1920年にわたって書かれたそうです。日本では明治から大正にかけての時代です。この時代世界や日本で何があったかは歴史に疎い私にはピンときませんが、世界が近代に向かって加速していく時代だったのかなと思います。
作者のボームはその時代の社会に対して少なからず否定的に感じていたのではないでしょうか。オズの国に理想が詰め込まれていくーそんな気がしました。
第1作目の「オズの魔法使い」はきれいな形のファンタジーだったと思います。文明社会の影響をほとんど感じることがなく、死もあれば「悪」が人の心に存在する無理のない世界でした。「オズと不思議な地下の国」くらいまではまあそんな感じの世界だと思います。生き物としての本能がある程度肯定されていたし。
ですが「オズのエメラルドの都」あたりから、オズが理想郷のようになっていきました。たぶん一番はっきりとした形の理想郷だったのが「オズのエメラルドの都」。ただその世界には少しずつ矛盾を感じるようになっていきました。
その後、オズの国のあり方や魔法、オズマの権力について徐々に変化していきます。完全と思われたオズの国には多くの綻びが存在し、魔法は万能ではなく、オズマも形の上では絶対的な権力者ですが、実際にはそこまで強い力を有しているとはいえないのでした。
設定も作品ごとに変わっていき、理想の国から自然な形のおとぎの国に変わったように思いました。オズのメンバーたちが幸せなのは普遍ですが。ハッピーエンドという共通点があるものの、作品それぞれ特色があって単独でも十分楽しめます。
残念なのは、「オズのライオン」がなかったこと。かかし、木樵り、チクタク、グリンダはあったのに、なぜ?と思わずにはいられません。もし作者がもっと元気だったら先の作品で書かれることはあったのでしょうか…。途中、ものすごく影が薄くなって扱いがぞんざいな気はしていたものの、最後の2作ではメインで登場していたので安心はしていたのですが。
そういえば「オズの国の歩き方」というスマホ向けのゲームアプリがあるのですが、そこでもライオンが一番影が薄かった…。こちらのライオンは原作と性格は全然違うのものの、それでもメインの登場キャラの中ではまともな方でした。気の毒。こちらのオズも大好きです。
■ 印象に残った作品など
□ 全体的に好き
・ オズの魔法使い ・オズのつぎはぎ娘 ・オズの消えたプリンセス
□ 一部のエピソードが好き
・ オズのオズマ姫 ・オズのブリキの木樵り ・オズのグリンダ
□ オズとしては微妙だけど物語としては面白かった
・ オズのかかし ・オズのリンキティンク
まさかオズについてこんなに書くことがあるとは思いませんでした。あと少しだけ書いていますが、内容的に微妙なので折りたたみます。
夢のないことを書いたり、勝手な妄想などを書いているので、苦手な方はスルーしてやってください。
オズの国は住人すべてが不老不死。身体が分離しようが細切れになろうが破片すべてが生きている、そんな世界です。こんな書き方をすると、おとぎの国というより、ホラー小説の世界のようですが、本当です。もっとも、外から来た人間たちにこれが当てはまるかどうかは不明らしいです(首を切られたドロシーが首だけ、首から下だけがそれぞれ生きているなんてやっぱりムリだと思う)。
いずれにせよ何もなければ年を取ることなく永遠に生きていけます。そんなオズの国にラーラインがかけた魔法は他にもあるのではないでしょうか。
一つは「精神状態の安定」。永遠に生きることは、ゴールのない道をただ歩き続けているようなものだと思います。たとえば永遠に成長しない赤ん坊を育て続けることって、絶望に近い気がします。毎日気持ちがリセットされないと生きていくのが苦痛になりそうです。ずっと幸せを感じ続けることができるということは、やはり気持ちのどこかに魔法がかけられていないと無理だと思います。
また「性欲の喪失」…というか、新たな生命の誕生の抑制。死がない以上、よほどのことがない限り住人たちの数は減りません。ということはもし子どもが生まれると人口は増える一方です。オズマも移民を何でもかんでも受け入れることはできないみたいなことを言っていましたし、人口を増やすことのリスクが分かっているからこそそれ以上の生命の誕生を望まないのでしょう。
ビリーナがヒヨコを孵しまくっていた話は結局どうなったのか。聡明なビリーナがこれ以上増やさないように自制を促したのか。そもそもヒヨコたちに父親って存在するのかも不明。最初は「オズのオズマ姫」で喧嘩に勝った相手かと思ったが…。でもニワトリはビリーナだけともあった気がするので、単純に考えるとオズの国ではメンドリだけでヒヨコを孵せるということだろう。いずれにせよ生殖行為自体オズの国には存在しないと思います。
オズの住人たちの食生活について。錠剤で済ませられるものの、いちおう食事を楽しむ方が当たり前のようです。ここで問題になって来るのは肉や魚などのたんぱく質をどうやって確保しているかということ。「死」が存在しないため、このあたりがよく分かりません。食べ物が生る木などもあるようですが、全部そうというわけでもなさそうです。肉食のけものも登場するし、ビリーナも虫を食べています。そして魚を捕って食べるという話もあるので、どういうこと?と思わないではありませんが、気にしてはいけないのでしょう。
「食べる」という行為自体が「生殖」を必要としているのだと、改めて考えさせられるオズ。食欲や性欲、必要としないのは、やはり生身の身体ではないかかしや木樵りたち。オズに相応しい住民は、彼らのような者たち…かもしれない。
万が一ドロシーたちが外の世界へ戻ってしまったら、浦島太郎みたいなことになりそうで怖いですね。それこそゼブが大人になったくらいにドロシーが少女のまま外の世界に来てしまったら、とか、ドロシーたちが現代に来てしまったら、とか想像すると面白いです。ドロシーたちは魔法の絵で外の世界の様子を知ることはできるので、意外と驚かないのかもしれません。元居た世界に未練がなさそうな人たちばかりだけど、魔法使いなどは文明の進化には興味がありそうな気がします。でも、オズマやグリンダがオズの国に悪い影響をもたらすものとして、見ることができないようにする可能性もあるかもしれません。
逆に現代人がオズへ行った場合、オズを不便と感じるのでしょうか。オズの魔法より便利なものが現代にはたくさんあるような気がします。また、場合によっては悪の種としてオズの国に災いをもたらすかもしれません。
あと、オズの国がラーラインの作ったおもちゃの国だったら、とか。箱庭や水槽のようなイメージ。そこに住んでいる者たちは、時計の針やゼンマイ仕掛けの人形のように繰り返し繰り返し同じ日々を送っている。偶にラーラインの気まぐれでトラブルを起こして、ドロシーたちがどんな反応をするかを見て楽しむ。ドロシーたち外から来た人間は、ラーラインの新しい人形…などと考えたらおとぎ話というよりホラーみたいです。(ラーラインはオズをおとぎの国にした後すっかり忘れてしまったとあるので、あくまでもifですが)。
全然関係ないですが、子どもの頃父がレンタルしたビデオに神様たちのチェスで下界の人々の運命を決めている、みたいなのがありました。たぶんギリシャ神話をモチーフにしたものだと思うのですが、一体なんの映画だったんだろう。
多くの矛盾を抱えるオズの国は、あらゆる可能性を秘めた素敵な世界です。シリーズを読み終わった後、自分なりの新しいオズの世界の物語を想像してみるのも楽しいと思います。私は楽しかったです。
本当に私の妄想だらけですみません。ここまで付き合ってくださった方、本当にありがとうございました。