びんのなか

想い出話や感想文など。ネタバレだらけです。

オズと不思議な地下の国

 オズシリーズ4作目。なんですが、翻訳された順では9作目となっています。というのも、当初は諸事情でこれと次の作品は翻訳されてなかったようです。私も昔読んだときは何も考えず出版順に読んだのですが、「オズのオズマ姫」のあとがきに「4冊目と5冊目は割愛します」みたいなことが書いてあり、今回初めてその事実を知りました。色々理由はあったみたいですが、その一つにストーリーがやや冗長であることがあったようです。読後、他作品に比べて単調な気はしましたが、今読み直すととても重要な作品だったと思いました。なぜかというと、「オズの虹の国」で感じた疑問の答えがいちおう描かれていたから(納得できるかどうかは別として)。

 ーあらすじー 

 ドロシーは駅で子猫のユリカ、迎えに来ていた少年ゼブとともに地震のはずみで(?)馬車(馬のジムも)ごとおとぎの国へ飛ばされてしまいます。そこは地下の世界で、ドロシー達は色々な国を旅しながら地上を目指します。

 以下、地下の国での出来事。ほぼトラブルに遭遇→逃げて次のエリアの展開。

1.野菜の国(野菜人間(マンガブー人)が住んでいる国)でオズと再会。マンガブー人に襲われて逃げる。

2.姿が見えない者たちが住む国(ボウの谷)へ。見えないクマに襲われる。

3.リボンを集めている自称発明家の老人に会う。

4.ガーゴイルに遭遇し捕まるが脱走。

5.コドラ(子どものドラゴン)に遭遇、逃げる。

6.行き止まりになってしまい、ようやくここでオズマに助けを求めることになる。

 そして、全員エメラルドの都に着き、盛大にもてなされます。お馴染みの面々もドロシーに会うために集まります。ユリカがオズマを怒らせて裁判になって危うく死刑になりかけるといったハプニングはありましたが、みんな楽しい時間を過ごします。

 その後、そろそろ家に帰りたくなったドロシー達は元の世界に帰るのでした。

 

ー登場人物ー

ドロシー:主人公。どういうわけかしょっちゅう災害に巻き込まれてはおとぎの国に飛ばされる。

ユリカ:子ねこ。ちょっと性悪なところがある。といっても別にみんなの足を引っ張ったりするわけではなく、ただ自分の欲望を忠実に口にしているだけ。おとぎの国では喋ることができる。

ゼブ:ドロシーの親戚の男の子。ドロシーと違っておとぎの国にあまり馴染めない。要は普通の子。

ジム:ゼブの馬車馬。骨と皮の老馬。プライドは高い。

オズオマハ出身のペテン師。サーカスに所属していた。手品用の9匹のちっちゃなコブタを連れている。

9匹のコブタ:オズの手品用。喋る。ハツカネズミくらいの大きさ。ユリカの食欲をそそる。1匹はオズマにプレゼントされるが…。

オズマ:オズの国の最高支配者。ドロシーの親友。ドロシーの魔法のベルトを使ってドロシー達を助けた。

木挽き台の馬:疲れ知らずの馬(もどき)。本物の馬であるジムと競争して勝ち、彼のプライドをズタズタにする。

その他の登場人物:かかし、ブリキの木こり、臆病ライオン、腹ぺこタイガー、ビリーナ、ムシノスケ、チクタク

 

ーメモー

☆オズの名前について

 本名が寿限無並みに長ったらしい名前であったため、初めの頭文字2つを取ってOZと名乗った。オズの国に来たからオズと名乗ったわけではなかったらしい。ちなみに、オズの支配者の名は必ず<オズ>または<オズマ(女性の場合)>となる。

 …オズマの父は「パストリア」だったのでは?

☆オズが「オズ」にやって来た時

 「オズ」は東西南北4つの国に分かれていて、それぞれの国を魔女が治めていた。オズはその中心に<エメラルドの都>をつくり、自分が支配者となった。

☆「オズ」の国について

<『オズの不思議の地下の国』によると>

 オズがやって来る以前、もともとオズの国は1人の支配者によって治められていた。しかし、4人の魔女が結託してそれぞれの地域を支配するため、当時のオズの王(オズマの祖父)を追い出した(モンビが拉致監禁した)。

 その後、4人の魔女のうち北と南は<よい魔女>が<悪い魔女>を退治した。この頃にオズがオズの国にやって来た。

 北の魔女に退治されたモンビはそれでもオズマの祖父を幽閉したままだった。その後オズマの父も閉じ込められ、オズマが生まれた。オズマは王女であることがバレないように男の子(チップ)に変身させられていた。←祖父、父はどうなった?父はいつ捕まったのか。それからオズマの母は??

<『オズの虹の国』との矛盾点>

・グリンダによると、オズがパストリア(オズマの父)から王座を奪った。また、オズがモンビに頼んでオズマの存在を隠してもらった。→オズの祖父がオズの前王。そもそも<オズの国>にオズがやって来た時すでに前王(たぶんオズマの祖父)はいなかったのなら、オズが王座を奪ったわけではないし、オズマの存在も知らなかったことになる(実際オズマの存在を知らなかった)。そして、オズがモンビを訪ねる理由もない。

・モンビは北の魔女が禁じていたため<魔女>ではなかった。←<北の魔女>に征伐されて<魔女>から格下げになったのか?

 いちおうまとめると、

<オズ>という1人の王が支配する国があった]→[4人の魔女が王を追い出し、オズを4つの地域(国)に分けてそれぞれが支配するようになった]→[北と南は<よい魔女>によって<悪い魔女>が退治された]→[オズが<オズの国>へ来た]→[オズが4つの国の中心に<エメラルドの都>をつくり、<オズの国>として統治した]→[ドロシーがオズにやって来て悪い魔女を退治した(どの国にも悪い魔女がいなくなった)]→[オズがかかしに王座を譲り故郷に帰る]→[ジンジャーによるクーデターによってかかしが王座を奪われる]→[グリンダの助力によりオズマが王座を奪還する

といった感じだと思います。

☆ドロシーとオズマの約束の時間

<オズのオズマ姫>では毎土曜の朝

<オズと不思議な地下の国>では毎日4時

 確かに土曜の朝だと下手したら1週間くらい待たなければならないのでストーリー上無理があるかも。とはいえ、毎日4時だった場合、オズマがもっと早くドロシーを助けることができたような気もする。ドロシーが望まない限りは絶対にオズマは魔法のベルトが使えないのか?(ドロシーが合図を送ればオズマがベルトを使ってくれるという約束)

☆トトだけ喋れない?

  ビリーナ、ユリカだけでなくジムやコブタまで喋れたのに…

☆ジャックは大丈夫?

 チクタクや木挽き台の馬は登場しましたが、ジャックは登場しませんでした。頭が熟れすぎたのでしょうか…。

 …たぶん他にもあるかもしれませんが、読んでいてぱっと気が付いたのはこのあたり。

 

ー感想ー

 深く考えてはいけないとは思いつつ、色々気になる部分が多かったです。不思議なキャラクターは相変わらず多かったですが、一緒に旅する仲間がアメリカ出身者ばかりでおとぎの国のキャラクターがいなかったせいか、あっさりしていた気がします。地下の国での冒険のあたりは物語が単調に進んで行くこともあって、少し物足りなさを感じました。いつもは愉快な仲間たちのずれた会話の中に強い信頼関係が感じられたのに、今回はそういった場面はあまり見られませんでした。

 今作のテーマはきっと「オズの<オズの国>への帰還」だと思います。そして、ゼブ、ユリカ、ジムは今回限りのゲストキャラみたいな扱いのようです。ゼブはおとぎの国へ来て楽しむよりはむしろ戸惑いの方が大きかったし、ユリカはその自由奔放な性格のせいでみんなに嫌われてしまいました。ジムもおとぎの国での現実が厳しすぎてつらい思いをします。こうして、オズとドロシー以外はおとぎの国に馴染むことはできませんでした。そうやって考えると、ドロシー(とオズ)の適応力がすごいといえるのかもしれません。

 見どころとしては、物語終盤の裁判でしょうか。オズマがもらったコブタがいなくなったことで、ユリカが食べたのではないかと疑われてしまいます。ユリカのふてぶてしい態度がオズマを怒らせてしまい、裁判となるのです。ここで、検察にムシノスケ、弁護人にブリキの木こりが選ばれ、陪審員にはおなじみのメンバーから9人が選ばれます。一旦ユリカは死刑を宣告されますが、オズと木こりがイカサマで無実にしたところ、反発したユリカ自身の口から真相が語られるのでした。

 ユリカが無罪となってもオズの面々はユリカを避けます(しかも部屋から出ないように言われる)。それはユリカがコブタを食べるチャンスがなかったから結果的に食べなかったに過ぎないと考えたからです。これって罪を犯すかもしれないと思われた(犯罪を犯す要素を持った)人は、たとえ現実に罪を犯していなくても隔離されるということですよね…。正直なところ、そうしてくれと思わないでもない気もしますが。実際には人道的に問題がありそうです。猫は小動物を食べることは当たり前で、それは本当に罪なのでしょうか。腹ぺこタイガーが良心が本能に勝っていることを考えると、おとぎの国でのみ成立する「罪」なのかも。弁護人はイカサマに加担するし。他の作品でもそうでしたが、オズの人々が必ずしも「正義」としては描かれていないようです。

 ユリカもジムはもちろん、ゼブもおとぎの国より現実の世界で生きる方が楽だと考えます。本来の自分として生きていくことができるので当たり前です。むしろどちらの世界でもやっていけるドロシーやオズが特殊だと思います。

 今回は少し番外編的な印象のあるお話でした。当初翻訳を割愛された理由もわからないでもない感じです。オズが<オズの国>に戻ってきたこと以外に他作品とつながりはなさそうです。ゼブ、ユリカ、ジムなどは今回限りのようですし。あと、ドロシーとビリーナの再会シーンは面白かったです。ビリーナ、元気そうで何よりでした。