びんのなか

想い出話や感想文など。ネタバレだらけです。

オズの消えたプリンセス

 オズシリーズ12作目。今回は久し振りに“オズ”です。ドロシーが大活躍でした。

 

オズの消えたプリンセス (ハヤカワ文庫NV)

オズの消えたプリンセス (ハヤカワ文庫NV)

 

 

 

ーあらすじー

 ある日オズマが忽然と姿を消します。そして、オズマの部屋からは<魔法の絵>も。それどころか、グリンダの<魔法の本>やその他の魔法の道具や薬、魔法使いの魔法の道具一式が入ったかばんも、何もかもが無くなっていたのです。

 そんな一大事にとあって、さっそくオズマ捜索隊が組まれ、それぞれ各方面へと出発します。ドロシーは、ベッツィ、トロット、魔法使い、ボタン・ブライト、スクラップス、臆病ライオン、ハンク、木挽き台の馬、ウージイとウィンキーへ探しに行くことにしました。途中でこっそりついて来たトトも合流します。

 その頃、ウィンキーの国のはずれに住むクッキー職人のケーキの大切な洗い桶もなくなっていました。ケーキは国で一番の知恵者(と思われている)カエルマンとともに洗い桶探しの旅に出ます。

 ドロシー達はウィンキーの未開の土地を進みながらオズマの行方を探します。なかなか手掛かりが見つからない中、ハークの都でドロシー達は有力な情報を得ます。以前ハークには靴職人のウグという魔術師がいたそうなのです。この人物がオズマや魔法の道具の数々を盗んだに違いないと考えた一行は、ウグのもとへと向かうことにしました。

 一方、カエルマンとケーキはクマ・センターの王ラベンダー・グマとピンクのコグマのおかげで、探している洗い桶は靴職人ウグが持ち去ったことが分かります。ケーキの必死の頼みで、ウグのもとへ行くのにクマ王とピンクのコグマが同行してくれることになりました。

 そして、ウグの城へ向かうドロシー達とカエルマン達がとうとう鉢合わせました。お互いの事情を話し合った上で、両者は協力することにしたのです。

 妨害に遭いながらも何とかウグのもとに乗り込んだ一行でしたが、またもやウグの魔法で危機に陥ります。ドロシーが魔法のベルトを使ってこの危機から脱すると、さらにドロシーは魔法のベルトの力でウグをハトに変えます。ところが、ハトに変身したウグは、ケーキの洗い桶を使って逃げてしまいます。

 ピンクのコグマのおかげでオズマも見つかり、奪われた魔法とウグの魔法の道具のすべてを持って、一行はようやくエメラルドの都への帰還を果たします。洗い桶は、かかしと木樵りが偶然手に入れて持ち帰ってきました。ウグはというと、心を入れ替えてハトのままで生きていく決意をしたのでした。

 

ー登場人物ー

ドロシー:主人公。カンサス出身。オズマの親友でオズの王女。数々の冒険を経験しているだけあって、ちょっとやそっとのことでは動じないしっかり者。

ベッツィオクラホマ出身。ドロシーより1つ年上。

トロット:カリフォルニア出身。ドロシーより1つ年下。

オズマ:みんなに慕われるオズの支配者。たいへん美しい妖精の少女。

グリンダ:オズマに仕える<よい魔女>。膨大な魔法の知識を持つ。

魔法使いオマハ出身。グリンダとともにオズの国で魔法を使うことが許されている。

ボタン・ブライトフィラデルフィア出身。しょっちゅう迷子になっている。

スクラップス:自由奔放なつぎはぎ娘(パッチワークの人形)。実は頭が良い。

トト:ドロシーの愛犬。今回は普通に喋っている。自己主張が強い。

臆病ライオン:自分で臆病だと思い込んでいるライオン。穏やかで優しく思慮深いが、トトに対しては結構ドライ。

木挽き台の馬:オズマの愛馬(?)。シリーズ通して大活躍。冷静。

ハンク:ベッツィの親友のロバ。気が短くて愚かなところがある。

ウージイ:四角い箱の集合体のような不思議な生き物。スクラップスと仲がいい。

カエルマン:高慢で野心家のカエル。<真実の池>に入ってしまい、本当のことしか言えなくなった。

ケーキ:イップ人のクッキー職人。代々受け継がれている洗い桶がなければ美味しいクッキーが焼けないらしい。洗い桶が最優先事項。清々しいくらい自分のことしか考えていない(でも憎めない)。カエルマンとはいいコンビ。

ラベンダー・グマ(クマ王):クマ・センターを治めている。王笏で見たいものの幻を映すことができる。

ピンクのコグマ:ネジを巻くと喋る。過去に起きた事実なら何でも教えてくれる。

ウグ:元々ハークの都に住んでいた靴職人。魔術師だった曾祖父の資料を研究して魔術の腕を上げた。

かかしとブリキの木樵り:親友同士。お互い生身でないこともあって、とても気が合う。

 

ーその他ー

☆オズの国の住人と外の世界の住人

 オズの住人は原則不老不死。病気にもかからない。実際、オジョが「ぼくをやっつけてしまうことはできないよ」と言っている。一方、魔法使いによると「わしらは自分たちで気をつけなくては」と言っているので、外から来た者は年は取らないが死なないわけではないらしい。

☆魔法のベルト

 ノーム王から取り上げたもの。使い方さえわかれば色々できるらしい。ドロシーが知っていることは、身に着けている者の身を守ってくれること、1日に1つ願いをかなえてくれること、変身させること(たぶん無制限)。

☆トロットの指輪

 海で困ったことがあれば人魚を呼んで助けてもらえる。

☆ケーキの洗い桶

 宝石をちりばめた黄金の洗い桶。呪文を唱えると大きくなってオズの好きなところへ移動することができる。

☆オズマ捜索隊

*グリンダが指名。何とも微妙なグループ分け。キャプテン・ビルは留守番。

マンチキン

 オジョ、ナンキーおじさん、ピプト博士

 → 馴染みの国だから(確かに。危険には向かない)

■カドリング

 かかし、ブリキの木樵り

 → 勇敢で疲れ知らずだから(ウィンキーではないのか)

■ギリキン

 モジャボロ、モジャボロの弟、チクタク、カボチャ頭のジャック

 → 危険がいっぱいだから(…??モジャボロ兄弟は外の世界出身だけど大丈夫?)

■ウィンキー

 ドロシー、あとはおまかせ(あらすじ参照)

 → (カドリングの方が危ないからというグリンダの配慮だろうか)

☆色々な国

■イップの国

 ウィンキーのはずれにある台地にある国。イバラの茂みで囲まれている。

■アザミ族の住む都

 幻の石壁に囲まれた都。身体の中が純金で内張りされていてアザミを食べる一族が住む。長はココ=ローラム。機械仕掛けのドラゴン型チャリオットが自慢。

■ハークの都

 巨人たちを従える痩せっぽちのハーク人が住む。ハーク人はゾソーゾという薬を飲んで大変な力持ちになっている。

■クマ・センター

  ぬいぐるみ(たぶん)のクマたちが住んでいる。

 

-感想ー

 「オズのエメラルドの都」以来、久し振りにエメラルドの都が物語の中心となっています。主人公もドロシーです。その他、ベッツィやトロット、魔法使い、ボタン・ブライト、スクラップスなどが登場して、かなり豪華な顔ぶれとなっています。今回は、冒険物語というよりはサスペンスに満ちた物語でした。国の中心で起きた大事件(オズマの行方不明と魔法道具の消失)と国のはずれで起きた小さな事件(クッキー職人の洗い桶紛失)という、一見何の関係もなさそうな2つの出来事。それぞれの視点で物語が進んで行って合流する展開は、わくわくしました。また、敵の正体が途中まで明かされなかったり、オズマの居場所のヒントが出されていたりと、先が気になる展開となっていました。

 久し振りにドロシーが活躍したのも嬉しかったのですが、それ以上に臆病ライオンがメインで登場してくれたのが嬉しかったです。「オズの魔法使い」のメインキャラクターの中で一番影が薄いライオン。かかしやブリキの木樵りの強い個性に押されていまいちぱっとしない印象でしたが、今回はしっかりとスポットライトが当たっていました。トトがライオンに相談(?)しても、返答が辛辣です。「悩むのは勝手だけど、ボクには関係のないことだ。巻き込まないでくれ」ーみたいな感じで。人生経験豊かな大人と子どもの会話みたい。トトは幼いイメージ。臆病ライオンだけでなく、トト、ハンク、ウージイ、木挽き台の馬といった人間以外のキャラクターの会話が多いのが楽しかったです。かかしとブリキの木樵りは本当に仲良しで、会話もほのぼのとしていました。

 興味深い会話と言えば、スクラップスがカエルマンに「洗い桶なら別のものを使えばいいじゃない」みたいなことを言った時の返答として、カエルマンは「なぜきみたちは別の支配者を立てないのか。いなくなった人の方がいいからだろう。それと同じで(ケーキは)自分の洗い桶がいいんだ」と言います。それ以前にドロシー達がハークの大皇帝から「あなたたちが賢明なら国のために新しい支配者を選ぶだろう」との忠告を受ける場面があったので、なおカエルマンの言葉が重く感じられました。ちなみに、トトもなぜか大切なうなり声を失います。こちらはまったく気に留められていませんでしたが。

 悪役として登場したウグは、ハークの大皇帝が言うように「厳密な意味での悪党ではない」です。野望自体が悪意から生まれたわけではなく、目的を達成する手段が悪事だということで。どっちにしろ、たいそう迷惑な悪党でした。ハトになって反省して、元の姿に戻ることを自ら拒否したところは、今までの悪役との大きな違いだと思います。

 それよりいつも思うことですが、オズ(というよりはエメラルドの都)の危機管理意識ってものすごく低いです。警備がザル。しかも、オズの支配者といっても、支配されていることすら知らない者たちの多いこと。原則性善説によって成り立っているオズの世界は、危険に対する防衛手段をほとんど講じていません。いろんな意味で大丈夫じゃない気がします…。

 読んだのが昔すぎて、ほとんど覚えていない中で、今回は珍しく「洗い桶」と「ハト」だけは記憶にありました。ドロシーがへウグを<平和のハト>ではなく<ハト>に変身させたところはものすごく印象的だったのでしょう。ここだけはちゃんと覚えてました。それにしても黄金で宝石が散りばめられた洗い桶って、めちゃくちゃ重そう…。調理器具でもないのに、なんでこれがあったらクッキーがうまく焼けるのか。