びんのなか

想い出話や感想文など。読書メモが多め。ネタバレだらけです。

童話語り(1)ペロー童話

 童話が好きです。童話というか、民話とか神話とかそういったジャンルのものが好きです。日本昔話も好きでした。基本的に短編好き。

 ペロー童話集を買いました。家にあると思っていたらなかったので、たぶん図書館で借りたのでしょう。読んだ記憶はあるので。

 

 続くかどうかわからないけれど、とりあえず(1)としてみました。

 

完訳 ペロー童話集 (岩波文庫)

完訳 ペロー童話集 (岩波文庫)

 

 

 有名な童話集。 グリム童話と似たようなお話が多いです(たぶん元となっているものが同じ)。こちらには最後に(役に立つかどうかわからない)教訓が書かれていました。

 

 簡単なあらすじと感想を。倫理観めちゃくちゃすぎでした。あらすじがいいかげんなので、あまり参考にならないかも。面白いので本を読んでみてください。

 

 

<韻文による物語>

1.グリゼリディス

 完全無欠だが極度の女性不信の大公。そんな彼の理想にぴったりの女性と出会い、結婚する。が、子ども(王女)が生まれてから再び女性不信となり(妻に落ち度は全くない)、妻を虐め抜いた挙句、自分の娘を追い出し死んだことにする。娘は美しく成長して素敵な若者と恋に落ちるが、大公は嫌がらせで娘を娶ろうとする(妻はそれに伴い追い出される)。結局妻の無償の愛を確認した大公は妻と復縁し、娘と若者の結婚を祝福する。

 

 大公がモラハラ夫すぎ。女性不信というよりは病気です。嫌がらせで自分の娘との結婚を考えるのがすごい。妻の方は明治の女かというレベルの従順さ。娘と離れ離れになるときくらいは抵抗しろよと思いました。時代背景がわかりませんが、女性が強かったんですかね。まあ、ちゃんと丸く収まってよかったです。

 

 

2.ろばの皮

 強く優しい王様と美しく優しいお妃様の間にはとても愛らしい王女がいた。この国には排泄物の代わりに金貨を出すろばがいたので、とても裕福だった。ある時妃が病となり、王に「自分よりも優れた人以外とは結婚しない」と約束させて死んでいく。その後王は再婚を考えるが、妃よりも優れた者は見つからず、唯一条件を満たすのは自分の娘である王女だけだった。王女を妻として迎えようとするが、当然王女は拒否。名付け親の仙女の入れ知恵で、空色・月色・太陽の色のドレスを求めるが、王はあっさりと要求を叶えてしまう。困った仙女は例のろばの皮を求めるよう助言。しかしこれも与えられたため、王女はろばの皮をかぶって脱走。汚らしい女<ろばの皮>としての生活を始める。美しい姿に戻っていた<ろばの皮>を見た王子は彼女に恋し、王女は(小細工をして)王子と結婚する。その頃には父王は正気になっていて娘の結婚を祝福した。

 

 王女の小細工はわざとかどうか意見の分かれるところらしいです。ぜったいわざとです。名付け親の仙女がぽんこつすぎでした。もうちょっとまともな策はなかったのか。指輪が合う女性を探し出す件はシンデレラっぽいと思いました。グリゼリディスといい、父親が娘に求婚って昔は普通にあったことなんですかね…。娘からしたら、そりゃ絶対嫌だろうよ。

 

 グリム童話に「千まい皮」というお話があります。ろばの皮が千匹の獣の皮であったり、その他微妙な違いはありますが、大筋は同じ。こちらには名付け親の仙女は出てきません。

 

3.愚かな願いごと

 平凡な男が3つだけどんな願い事でも叶えてもらえることになったが、結局無駄遣いで終わったという話。

 

 どこかで聞いたことがあるような物語。世界共通でこういった話はありそう。

 

<過ぎし昔の物語ならびに教訓>

4.眠れる森の美女

 ある国で待望の王女が誕生し祝いの宴が催され、仙女たちが招待される。仙女たちはそれぞれ王女が素晴らしい女性になるよう魔法をプレゼントしていく。しかし王女の誕生祝いの宴に呼ばれなかった仙女によって「王女はつむに刺されて死ぬ」という呪いをかけられる。しかし最後に残っていた仙女によって、死ぬのではなく100年間眠るだけになるように呪いを緩和してもらう。王女は美しく成長するが、結局つむに指をさしてしまい眠りにつき、城全体は茨に覆われそこにいる人々も眠ってしまう。100年後通りがかった王子によって王女は目を覚ます。

 実は王子の母親が人食い鬼であったため、王子は王女とは親に内緒で逢引きしていて2年の間に2人の子どもが生まれていた。父王が死んでしまったことで王子が王となり、そのタイミングで王女を妃として迎えた。ある時王が留守にしている間に人食いの母親が孫や義娘を食べようとするが、料理人の計らいで助けられる。しかし結局ばれてしまい、危うく料理人ともども妃と子どもたちは食べられそうになるが、そこに王が帰って来る。逆上した母親は自分の用意した恐ろしい生き物の中に落ちて食べれらてしまった。

 

 後半の方はすっかり忘れていました。仙女たちの贈り物に「賢さ」がなかったのは、迂闊です。王女が目を覚ました時に両親だけいなかったんですかね…。100年後の王女のファッションが古くなっていたり、最後の人食い母親の死を王子が悲しむあたりは、現実的だと思いました。

 

 グリム童話だと「いばらひめ」ですね。こちらでは王子と出会って結婚して終わりです。そこまでの話は、王と妃が一緒に眠ってたり、仙女(こちらではうらない女)の数が違っていたりはしますが、だいたい同じような展開でした。

 

 

5.赤ずきんちゃん

 赤ずきんちゃん」と呼ばれるとてもきれいな女の子が母親の言いつけで、おばあさんの家に見舞いへ行くことになる。途中で出会った「狼おじさん」は、赤ずきんちゃんの行き先を聞き出し、先回りしておばあさんを食べてしまう。そして、後からやって来た赤ずきんちゃんも食べられてしまった。

 

 救いようのないお話。あまり子ども向けの話ではない。教訓からも、「食べられた」がそういう意味であることは明白。狼が一緒に寝ようとベッドに誘ってるし(言い方;)

 

 グリム版では、もう少し救いのある(?)終わり方をしています。赤ずきんたちが食べられた後ベッドで眠っている狼を猟師が発見し、ハサミでお腹を切り開く。そして赤ずきんとおばあさんは助け出され、狼のお腹には石を詰められる。狼は石の重さで倒れて死んでしまった。なんとなく、こちらの方が赤ずきんが幼いイメージです。あと、どうでもいいことですが、赤ずきんの見舞いの品が、ペロー版だと「ガレットとバター壺」で、グリム版が「ぶどう酒とおかし」。子どもの頃、このぶどう酒とおかしがものすごく美味しそうだと思っていました。

 

6.青ひげ

 ものすごくお金持ちだが、青ひげを生やした見た目が恐ろし気な男がいた。彼は何度も結婚していたが、その妻たちがどうなったのか誰も知らなかった。

 青ひげは、隣人の美しい姉妹のどちらかと結婚したいと言い出し、妹が青ひげと結婚した。ある時青ひげが長期で出かけることになる。彼は妻に鍵を渡し、どの部屋も自由に入り使ってもよいが、小部屋にだけは入らないように命じる。妻は夫がいない間、友人を呼んだりして自由に楽しんでいたが、好奇心に勝てず小部屋を開けてしまう。そこで見たものは、夫のかつての妻たちの無残な姿だった。妻は恐ろしさで逃げ出すが、鍵が手から滑り落ちて血で汚してしまう。その汚れは決して消えることなく、帰宅した青ひげに約束を破ったことがばれる。殺されそうになった妻は姉に助けを求め、青ひげは姉の合図で助けに来た兄たちによって殺される。夫が死んで妻は財産をすべて手に入れた。そして、姉や兄たちに財産を使って裕福な生活を与え、自分も再婚して幸せな人生を送った。

 

 かなり印象的なお話。ほぼホラーです。殺人鬼と結婚した妻たちが気の毒なのか、裏切られ続けた青ひげが気の毒なのか…。まあ、妹はうまいことやったな、といったところでしょうか。再婚時あの小部屋がどうなったのかは気になります。さすがに死体は片付けたでしょうが…。

 

7.ねこ先生または長靴をはいた猫

 粉ひきが死んで、三男に残されたのは猫だけだった。絶望した主人に、猫は自分に長靴を誂えてくれと頼む。猫は長靴をはいて、王様に「侯爵からだ」と言って、狩りの獲物を献上していく。ある時王様が王女と出掛けることを知り、主人に裸で水浴びするように言う。そして猫は王様に侯爵が水浴びをしている間に服を盗られたと言って、王様に主人の服を用立ててもらう。美男子だったこともあり王女は“侯爵”をすぐに好きになり、王様は侯爵に同行するように言う。そして、猫は先回りして一帯の土地は侯爵のものであるように根回した挙句、本来の領主である人食い鬼を騙してネズミに変身させて食べてしまう。人食い鬼がいなくなった城に着いた王様は、その立派な城を侯爵のものであると信じ、侯爵を婿として迎えた。

 

 猫の主人は長靴を作った以外何もしていません。猫の賢さが際立っていますが、彼の言うことを素直に聞き王様相手でも動じない「粉ひきの三男」もすごい。あと、容姿。大事ですね。ちゃんと美男子だったということで、王女に好かれる説得力にもなっています。

 

 グリム童話集も同じ内容(というか、同じなので削除されたらしい。私の持っているのには「面白いから」という理由で収録されていた)。

 

8.仙女たち

 母親と2人の娘がいた。姉は母親とそっくりの容姿で、性格も同様に高慢で嫌われ者だった。一方の妹は美しく性格は父親譲りで優しく礼儀正しかった。母は自分と似ている姉をかわいがり、まったく似ていない妹を毛嫌いして虐め抜いていた。

 ある時妹が遠くの泉まで水を汲みに行くと、仙女が水をくれと頼んできた。妹は仙女に親切にしたので、仙女は彼女が話す度に花や宝石が口から出てくるという贈り物をした。妹が貰った贈り物を見て、母親は姉にも贈り物を貰うようにと泉へ向かわせる。しかし、仙女は妹に会った時とは別の姿で現れ、姉は仙女に不作法な態度を取る。このため仙女は姉への贈り物として、話す度に口から蛇や蛙が出てくるようにした。この悲劇に怒った母親は妹を家から追い出す。途方に暮れて泣いていた妹は、通りすがりの王子と出会い結婚する。結局姉も母親から追い出されて、行く当てなく死んでしまった。

 

 どこかで聞いたことがあるようなお話。しかし、話す度に口から何かが出てきたら、色々大変そう。最初は良くてもそのうち気が狂いそうだと思う。

 

9.サンドリヨン または 小さなガラスの靴

 ある貴族がとんでもなく性悪な女性と再婚した。女性には2人の娘がいたが、彼女たちも母親と同じく性悪だった。貴族には前妻との間に1人の娘がいたが、彼女は美しくて優しい性格の持ち主だった。継母と義姉たちは娘をひどく嫌い、使用人としてみすぼらしい生活を強いる。娘は炉の灰をいつも浴びていたのでサンドリヨン(灰っ子)と呼ばれてた。

 ある時王子が舞踏会を開き、姉たちは着飾って出掛ける。舞踏会に行くことが出来なかったサンドリヨンは悲しみに打ちひしがれていた。そこに名付け親の仙女が現れ、カボチャやトカゲやハツカネズミに魔法をかけて馬車やら従者やらを作り出し、サンドリヨンにも魔法をかけて美しいドレスを着せてガラスの靴を与える。仙女は魔法は真夜中までしか効果がないと忠告する。

 舞踏会で王子は美しいサンドリヨンに夢中になり、2人は楽しい時間を過ごす。サンドリヨンは1日目は無事に帰るが、2日目は時間を忘れてしまったために真夜中の合図を聞いて慌てて城を去る。この時にガラスの靴の片方が脱げたため、これを手掛かりして靴が合う姫を探すように命じる。そしてとうとう役人がサンドリヨンの家に来て、姉2人も靴を履いてみるが履くことはできなかった。サンドリヨンは自分も試してみたいと言って、見事に靴を履いて見せ、持っていたもう片方の靴を見せつける。そして無事に王子と結婚したサンドリヨンは、改心した姉たちを宮廷に住まわせ大貴族と結婚させた。

 

 ディズニーのシンデレラ(はるか昔に見た切りなのであまり覚えていませんが)の原作。サンドリヨンはかなりの策略家。あと父親がひどすぎる。

 

 あらためて読むとグリム童話版とはだいぶ違いますね。大きな違いとしては、名付け親の仙女が出てこない(魔法でドレスなどを与えてくれるのは、父のみやげの枝から育った木)、困った時は2羽の白い小鳩が助けてくれる、魔法の時間制限はない(姉が戻って来るまでに家に帰る)、落としたのは金の靴、などがありますが、一番の違いは姉たちが改心せずに罰を受けたことでしょう。姉たちは自分の足の一部を切り取ってまで無理矢理靴を履きますが、白い小鳩の妨害でばれてしまいます。そして結婚式で姉たちは小鳩によって目をつつきとられてしまい、一生目が見えなくなったのです。…きっと小鳩は死んだ母親の魂が宿っていたのでしょう。継母と父親も大概ひどかったのに罰を受けないのはあまりにも不公平だと思います。

 

10.まき毛のリケ

 ある国に生まれた王子はとにかく醜い容姿だったので、王妃はたいそう悲しんだ。誕生に居合わせた仙女は「この王子は非常な才智の持ち主で、愛する人にも同様の才智を授けることができる」と言うのだった。王子はまき毛のリケと呼ばれた。

 別の国で2人の王女が生まれる。姉は美しいがおそろしく愚かで、妹は醜かったが才智に長けていた。王妃が悲しんだので、先の仙女は姉に対して「気に入った相手を美しく変えることができる」力を授ける。

 ある日自分の馬鹿さ加減にに絶望していた姉王女はリケと出会う。リケは彼女を気に入り、知恵を授ける。知恵を授かった姉王女はリケを美しく変えて結婚した(容姿が変わった、というよりは姉の目には美しく映っているだけ?)。

 

 仙女がひどすぎると思います。そもそも馬鹿になったのは、仙女がいらんこと魔法をかけたからなのです。そして、何もしてもらえなかった妹は可哀相。

 

11.親指小僧

 とある樵(きこり)夫婦には7人の子どもがいて、末っ子は体が弱くて小さかったので親指小僧と呼ばれていた。

 ある時夫婦は生活苦のため子どもを捨てる計画を立てる。計画を知った親指小僧はたいへん頭が良かったので、置き去りにされるまでの道に白い小石を目印にして兄弟とともに家に戻る。夫婦が再び子どもを捨てる計画を立てていることを知った親指小僧だったが、今度は白い石を拾うことが出来なかったので、パンくずを目印にする。パンくずの目印は鳥が食べてしまい、兄弟たちは道に迷って人食い鬼の家に辿り着く。危うく人食い鬼に食べられかけるが、親指小僧の機転で人食い鬼の娘たちを身代わりにして逃げ出す。翌朝自分の娘を殺した事実に気付き怒り狂った人食い鬼は、魔法の靴を履いて兄弟たちを追いかけるが、途中で疲れて眠ってしまう。その間に親指小僧は他の兄弟を逃がし、靴を奪ってから人食い鬼の家へ行き財産を根こそぎ奪って家族の元へ帰った。

 

 白い石やパンくずのあたりは「ヘンゼルとグレーテル」を思い出します。親指小僧がひどすぎる…。一番の被害者は人食い鬼の妻だと思います。

 

 グリム童話にも「親指小僧」というタイトルのお話がありますが、こちらはまったく違うお話です。むしろ別のタイトルで似たような話があったような気がする。