びんのなか

想い出話や感想文など。読書メモが多め。ネタバレだらけです。

12の月たち

 小学生の頃に図書館で見つけて、どうしても欲しくなったので母に頼んで買ってもらった絵本です。お話もそうですが、絵がとにかく好きでした。色合いは鮮やかですが優しく、老人のひげや焚火の炎、布の質感など、細かくて見入ってしまいます。登場人物たちの服装なども見ていて飽きません。あと、月に照らされたマツユキソウの白が、緑の中で映えて、本当にきれいです。

 

12の月たち―スラブみんわ (児童図書館・絵本の部屋)

12の月たち―スラブみんわ (児童図書館・絵本の部屋)

 

 

 以下、あらすじです。

 主人公の女の子は、継母に1月の猛吹雪の中「(3月に咲く)マツユキソウを摘んで来い」と理不尽な要求をされて家を追い出されてしまいます。途方に暮れながら森の中をさまよっていたところ、12人の男性が焚火を囲んでいるのに遭遇します。彼らは1か月を司っている12の月たちなのでした。女の子から事情を聞いてかわいそうに思った彼らは、3月へと時間を1時間だけ明け渡してくれます。無事にマツユキソウを摘んで帰りますが、継母と姉娘(こちらは継母の実子)は12の月たちの話を聞いて、喜ぶどころか女の子を罵ったのです。そんな風に自由に季節を変えることができるなら、マツユキソウではなくて、果物など、もっといいものをもらえばよかったのにと。そして、今度は姉娘が12の月たちに会いに行きます。けれども、礼儀も知らずに自分の要求だけを告げる姉娘は、12の月たちの逆鱗に触れ、そのまま雪の中に埋もれてしまいました。いつまでも帰ってこない姉娘を探しに行った継母も同じく雪に埋もれてしまいます。1人家に残った女の子は、その後結婚をして子どもを産み、幸せに暮らしました。女の子の家の庭はいつも豊かで、それはもしかしたら、12の月たちが遊びに来ているからかもしれないのでした。

 

  アマゾンで調べたら他の絵本もいくつかあったのですが、あらすじを見ると、12の月たちに出会うきっかけとなった花がマツユキソウではなくてスミレだったりして、もしかすると、本によってちょっと話が違ったりするのでしょうか?気になるので、そのうち他の本も読んでみたいです。ちなみに、私の持っている絵本の著者は、この話をもとに「森は生きている」という戯曲を出しています(日本でも上演されているらしい)。こちらは、わがままな女王様(14歳の女の子)や、教育係の博士などが登場して、少しだけ話の筋も違います。マツユキソウの月も絵本では3月ですが、戯曲の方では4月です。それから、女の子の性格がだいぶ違います。絵本ではどちらかというとおとなしい印象がしますが、「森は生きている」では継母や姉娘に結構言い返していて、そこそこ気が強い感じがしました。

 

森は生きている (岩波少年文庫)

森は生きている (岩波少年文庫)

 

 

 もとが民話なので仕方がないけれど、12の月たちについてもっと詳しい描写がほしかったです。「森は生きている」の場合、12・1・2月は老人、4月は少年。あとは、台詞から3・5・6・7月は若くて、11月は若くない気がします。…3~5月ー少年、6~8月ー青年、9~11月ー中年…といった感じですかね。こういう世界観の設定は、想像が膨らんで楽しいです。昔話や童話はシンプルな分、色々な可能性を秘めていると思います。