びんのなか

想い出話や感想文など。読書メモが多め。ネタバレだらけです。

オズのエメラルドの都

 オズシリーズ6作目。物語の転換期…となるのかも。長いので目次をつけてみました。

 

ーあらすじー

 いよいよ生活が困窮して明日にも家がなくなりそうになったドロシーは、オズマにヘンリーおじさんとエムおばさんとともにオズで暮らしたいと願います。オズマはこれを快く了承し、すぐさま2人をオズへと呼び寄せます。

 ドロシーはオズマの提案で、生活が一変して戸惑うおじさんとおばさんとともに旅行へ行くことになりました。旅行には魔法使い、モジャボロ、オンビー・アンビー、ビリーナ、トトが同行することになりました。馬車を引くのは木挽き台の馬です。こうしてドロシー達はオズのあちこち(カドリングの国~ウィンキーの国)を廻ります。

1.チョッキンペットの村

 ミス・チョッキンペットの作った切り紙人形たちが住んでいる村。人形だけでなく家などすべてが紙でできている。

2.コンガラパズルの国

 住人がジグソーパズルでできている。知らない人を見るとバラバラになりたくなる。他所の人がはめ合わせてくれるのを待っている。

3.道に迷ったので一旦森でキャンプ

以下、朝の散歩で道に迷って魔法使いたちとはぐれてしまったドロシー、トト、ビリーナのみ訪問。

4.キッチンランドの国

 様々な調理器具が住んでいる国。統率能力皆無の大包丁が王様。

5.バンの町

 すべてがパンや焼き菓子でできている町。もちろん住人もパンや焼き菓子。住人(および町)が食べ物でできているという性質上、それらを食物とするドロシー達とは全く相容れない。

6.ウサギの都

 ピンクの目をした森のウサギたちをオオカミなどの外敵から護るために作った都。ウサギたちに文明社会を与えた。文明社会を嫌悪し昔の野ウサギに戻りたいと言っては泣いてばかりの王様だったが、現在の居心地の良さに気付いて王であることを続ける決心をする。

7.ようやく魔法使いたちと合流。ダラダラ村(ダラダラと要点なく喋る人達が住む村)とトリコシ村(取越し苦労ばかりしている人達が住む村)に立ち寄る。

8.ブリキの木こりの城へ。

 と、このようにドロシー達があちこち廻っている一方で、実はノーム王が復讐を企てていたのです。老獪なノームのガフが司令官となり、バケクビ族・ガリゴリ族・妖魔まぼろし族を味方につけた敵勢は、砂漠の地下にトンネルを掘って刻一刻とエメラルドの都へと近づいてきていました。

 偶然魔法の絵によって気付いたオズマからの知らせを受けたブリキの木こりから、ドロシー達はその話を聞かされます。ブリキの木こりの他、かかしやジャックとも合流した一行は打開策を見出せずにエメラルドの都へと戻るのでした。

 オズマは戦うことを否定し、オズの運命を受け入れる覚悟をしていました。しかし、<禁断の泉>の存在を知ったかかしに名案が浮かび、不戦で敵たちを退けることに成功します。

 今回の危機でオズが危険と隣り合わせであることを認識したオズマは、グリンダに相談します。オズを外の世界から切り離すべきだと。そして、オズは外からは見えなくなったのでした。

 

ー登場人物ー 

*途中で力尽きたためかなり適当です;多すぎるよ…。

ドロシー:主人公。おじさん、おばさん想い。自分の道は自分で切り拓く。何があってもめげないし、相手が誰であろうと物怖じしない強い女の子。

ヘンリーおじさん:オズへ来て戸惑いつつも、わりと適応している。

エムおばさん:オズでは今まで信じていた常識が悉く覆されるため文句も多いが、それなりに楽しんでそう。いわゆる“普通の人”。

オズマ:オズの絶対的存在。ドロシーのかけがえのない親友。少女でありながら、非常に細やかな気配りができ、また支配者としての役割を自覚している。

魔法使い:以前は“オズ”と呼ばれていたが、ややこしくなってきたせいか最近では“魔法使い”となっている。グリンダに魔法を教えてもらい、本当の「魔法使い」となった。現在修行中だが、かなり有能らしい。

トト:ドロシーのペット。相変わらずトラブルメーカー。

ビリーナ:しっかり者の黄色いメンドリ。卵をかえしまくった結果、ニワトリ村の女王となったらしい。子々孫々みんなメンドリなら“ドロシー”、オンドリなら“ダニエル”と名付けられている。エムおばさんとは主婦同士の言い合いみたいになっている。分別があって、時にはドロシーの保護者のよう。

モジャボロ:ドロシーの友人。相変わらずモジャモジャ。優しい人柄。

オンビー・アンビー:オズマによって最高司令官に任命された。唯一の兵卒。といっても軍人としてはほぼ無意味。今まで割愛していたが、「オズのオズマ姫」から登場している(「虹の国」に登場していた近衛兵と同一人物かどうかは不明)。

木挽き台の馬:疲れ知らず。魔法使いにオガクズの脳みそをつめてもらって知性がアップ。

ブリキの木こり:ハエや蚊にいたるまで、生きているものすべてに対して慈愛の心を持っている。ウィンキーの国の皇帝。この人は生粋の軍人だと思う(元・木こりだけど)。

かかし:とても穏やかで知性溢れるかかし。今回もその知性でオズを救った。

ジャック:ウィンキーの国で百姓(カボチャ畑)をしている。

チクタク:眠らない、食べない。木こりやかかし、ジャックなどとの違いは、“生きていない”こと。あくまでもロボット。

ムシノスケ:体育大学の教授となっている。学問は魔法使い発明の薬を飲むことで身に付くので必要ないらしい。

ジェリア・ジャム:オズの城の小間使い。「オズの虹の国」からずっと登場している。

ノーム王:名前はロークワット。単細胞でとても乱暴。有能な部下の助言にも聞く耳を持たない。

ガフ:ノーム王より頭が良い分、悪者度もこちらが上。自ら危険を冒してでも凶悪な一族たちを味方に付けたりと、目的のためには手段は択ばないタイプ。

グリンダ:美しい<よい魔女>。世界を簡単に救うことができるくらいとても強い魔力を持っている。たいてい物語の終盤に登場して力を貸してくれる。

 

ーその他ー

☆敵勢力のこと

○バケクビ族・・・とても頭が小さいので段ボールで作った大きな頭の被り物をしている。強い力を持っていて戦いを好むが、頭は悪い。報酬は本物の(大きな)頭。

ガリゴリ族・・・とても大きくて強い。骨と皮と筋の肉体。親分はガリプー。人を痛めつけて苦しめることが大好き。バケクビ族に比べると知恵はある(はず)。報酬はオズの住人2万人。

まぼろし族・・・強い魔力を持つ危険極まりない邪悪な一族。報酬は罪のない人々をめちゃくちゃにする喜び。

☆魔法のベルト

使用者の願いを何でも叶えてくれる。もともとロークワット王のものだったが、ドロシーに奪われた。…オズマがずっと持っているみたいだが??

☆魔法の絵

 オズマの部屋にある絵。オズマが見たい風景をどこでもリアルタイムで見ることができる。

☆魔法の本

 グリンダが持っている。世界で起こったあらゆる事件が記録されていく。

☆禁断の泉

 この泉の水<忘却の水>を飲んだ者はすべてを忘れてしまう。悪い心も忘れてしまい、生まれたばかりの純真な心となる。とはいえ、言葉などは覚えているようなので、生活に困らない程度の知識は忘れないようである。

 

ー感想ー

 とうとうドロシーどころかヘンリーおじさんとエムおばさんまでオズの住人となった今作。ドロシーを現実の世界へ留めていたのは2人の存在だけだったので、2人がオズの住人となることができるなら、ドロシーが現実世界に留まる理由はなくなってしまいました。今までもカンサスでの苦しい生活の話がちょこちょこ出てきましたが、とうとう家を手放さなくてはならなくなりました。このカンサスでの描写が妙にリアルで、ドロシー自身もとても現実的なものの考え方をする少女だと思います。カンサスでの貧しい生活と対照的にオズは理想郷のように描かれています。それは前作「オズへつづく道」でも感じました。

 オズの国は「おとぎの国」のうちの一国です。とても豊かで住民はみな幸福。病気は存在しません(←ビリーナの息子はカゼがもとで死んでしまった、とありましたが;)。「お金」が存在せず、財産はすべて国のものでそれで国民を養います。また、生産したものはお互い分け合います。働く時間と自分のために使う時間は同じくらいだそうです。どちらかというと社会主義的な国家…みたいな感じですね。アメリカとはだいぶ違うようです。

 支配者のオズマは今までと違って、「オズの国の理想的な」支配者だったと思います。武力を否定し、対話を望みます。そして最後まで国民を見捨てません。…「オズのオズマ姫」での武力行使で従わせようとしていた人間と同一人物と思えませんね。いきなり攻め込まれて何も分からないうちに奴隷にされる国民はたまったものじゃないと思いますが。それ以前に、<禁断の泉>の水を飲ませなくても、<魔法のベルト>で敵を無力化して送り返せばよかったのでは??と思わなくもないです。

 当時のアメリカの社会情勢についてはよく分かりませんが、ボームにとっては理想とかけ離れた社会だったのかなあ、と思ってしまいました。

 今回久し振りに悪者が出てきたこともあり、最後まで楽しめました。物語もノーム王とドロシーの話が同時進行となっており、ドロシー達が何も知らずに面白旅を満喫している分、ノーム王の計画の進行が余計に恐ろしいものに感じます。おとぎの国らしく、不思議な住人達もたくさん出てきて、それぞれの持っている問題点が考えさせられる要素になっていました。

 やはりグリンダは最強でした。なんかもう、神様みたい。オズマもどんどんカリスマ的存在になってきて、「普通の少女」ドロシーとはいいバランスの友人関係だと思います。「オズへつづく道」ではあまり好きになれなかったモジャボロは影が薄かったです。一方、魔法使いは大活躍でした。本物の魔法を使えるようになってたし。ビリーナとエムおばさんのやり取りは面白くて好きでした。

 今まで「おとぎの国」は外の世界(現実の世界)と普通につながっていたみたいです。なので、気球や竜巻などの手段(?)で来ることが可能でした。しかし、オズが実は安全ではないことが分かってしまい、外の世界から完全に切り離されてしまいました。この「外の世界」はどの範囲を指すのでしょう。<死の砂漠>の周りのおとぎの国も含まれるのかな?いずれにせよ、オズの国は完全に閉鎖されて<オズの物語、おしまい>となったのです。とてもきれいな終わり方でした。ユリカがどうなったのか気になりますが。