びんのなか

想い出話や感想文など。読書メモが多め。ネタバレだらけです。

ナルニア国物語 感想まとめ(2)

 前回の続き。あくまでも私の解釈です。

 ナルニアへ行ける年齢制限について>

 あまり深く追求しない方がいいのかもしれませんが…。

 というのも、各キャラクターのナルニア最後となった年齢(あくまで私の予想)では、

ピーター:15 スーザン:14 エドマンド:13 ルーシィ:12

ユースチス:16 ジル:16

 ナルニアへ呼び出すタイミングは恐らくアスランによって予め決められていると思います。「カスピアン王子のつのぶえ」から「朝びらき丸東の海へ」までが1年しか経過していないことと、エドマンドとスーザンの年齢差を考えるても、やはり「銀のいす」の時点ではエドマンドもルーシィもナルニアへ行ける年齢だったのではないでしょうか。それにもかかわらず、ルーシィは「年をとりすぎた」と言われています。

 こうなったらもう、アスランの言う年齢とは「精神年齢」だと考えるしかありません。アスランから見て、ナルニアで学ぶことがなくなった=「卒業」と考えた方が妥当だと思います。

 本来はユースチスたちも「銀のいす」で卒業だったのではないでしょうか。しかし、思わぬアクシデントがあったためにナルニアへ戻ってしまった。この二人が他のメンバーより早くナルニアへ行けたのは、やはり一番若かったからだと思います。「大人」から一番遠い存在、つまりナルニアに近い心の持ち主というわけです。アスランが「銀のいす」の最後の方で「あんたがたが、ここでふたたびわたしに会う時こそ、あんたがたはここにとどまることになるだろう」と言います。アスランは彼らの最期を知っていたのかもしれません。

 「カスピアン王子のつのぶえ」で、ピーターがすべてを話すことはできないけどと言いながらも、自分とスーザンはもうナルニアへは来られないこと、ルーシィの我慢できるのかとの問いに「できると思う。ぼくの思ってたようなことではない」「その時が来ればわかる」みたいなことを言うのですが、どういうことなのでしょう。ルーシィも「朝びらき丸~」で色々言われていたし。…現実世界でもアスラン(=キリストあるいは神様?)が見守っている、とかそういうことでしょうか。私の読解力がなさすぎるのか、宗教的知識の欠如の問題なのか、この辺りについては最後までよくわかりませんでした。

 

ナルニアの世界観について>

 はじめ、私は人間界と「ナルニアという異世界」だと思っていました。しかし、この異世界には、ナルニア以外にもアーケンやカロールメンなどの国があります。あくまでも異世界の国のうちの一つなのです。イギリスという国と同じように。

 にもかかわらず、この世界はナルニアから始まり、ナルニアから滅んでゆきます。…はっきり言って、納得がいきませんでした。ナルニアはともかく、カロールメンまで巻き添え!?と。始まりの場所はナルニアで、長い歴史の中でカロールメンなどができた、ということなのでしょうか。テルマール人ももともとは人間界から迷い込んだ人たちということなので、もしかしたらカロールメンも偶然人間界からやって来た異教徒なのかもしれません。

 ということは、やっぱりナルニアの地から始まったこの世界は「ナルニア」ということになるのでしょうか。アスランが創造したこの世界はやがて独自の成長を遂げ、アスランの意志から少しずつ離れて「自立」していきます。ですが、誤った道へ向かうこともあります。そんな時に人間界から子どもたちを呼び出して世界を救うのです。そして、世界の「悪」が極限値まで達したとき、アスランは世界を終えます。「善」のみを選び、それらを新しい世界(=理想郷、天国)へと導いたのです。…アスランの掌の上で踊らされている、と思うと何とも微妙な気分ですが。創造主なので、終わらせるのも自由なのでしょう。ここでいう「善」とは、アスランの理想だと思っています。

 「魔術師のおい」の中で、異世界同士の中継地点のような場所がありました。数多くある世界のうちの一つがナルニアナルニアと人間界は本来直接つながってはいなかったはずでした。しかし、ディゴリーとポリーがうっかりナルニアへたどり着いたことで、そこに「人間」というものが存在してしまった。それは偶然だったのか、それともアスランの意志による必然だったのか。アスランナルニアの王を定めるべく、人間界から誰かを連れてくる予定だったのでしょうか。馬車屋の夫婦がナルニアの初代王となったことが必然であれば、連れて来るきっかけを作ったディゴリー達がナルニアへ来たことも必然だったことになります。そうすると、ナルニアに「悪」が持ち込まれたこと自体が必然となり、世界にとって「悪」そのものが必要だったわけです。その理由として考えられるのは、「悪」の存在により「善」を見分けるため。アスランの理想を体現する者たちを選別するために「悪」は存在し、最終的に完全な理想郷が生まれたのかもしれません。

 

<ペベンシー兄妹たちが選ばれた理由>

 物語の都合。…といったらそれまでですが。

 ルーシィがナルニアと縁のある衣装だんすに「偶然」入ってしまったから。まさか。4人の王の存在が決まっていることからも、アスランの中であの兄妹がナルニアへ来ることは決定事項だったのでしょう。

 ナルニアが終末を迎える瞬間に、ピーター達の時間を合わせた。時間の流れはアスランの意志により決定され、予め彼らの運命は決まっていたとも思えます。アスラン(やナルニア)のことをスーザンのように忘れてしまえば、現実世界に留まれたのでしょうか。

 現実→理想でいうと、スーザン→ディゴリー・ポリー・ピーター→エドマンド→ユースチス→ジル→ルーシィのイメージでした。スーザンがはっきりとした現実主義者であるのに対して、ルーシィは完全な理想主義者。ユースチスとジルはまだ現実をよく知らない(=子ども)だと思います。

 

<ハッピーエンド?>

 アスランの意志によってすべてが決定されていくことには、やや違和感がありました。とはいえ、教訓めいた事を気にせず読む分には面白かったです。作品一つ一つに個性があって、似通った内容のものがないので飽きません。特に、「朝びらき丸~」から「魔術師のおい」までは、きれいにまとまったお話だったと思います。

 違和感といえば、子どもが主人公の物語でありながら、普通に戦って殺めていますね。そりゃまあ、戦いなのだから、当たり前ですが。ファンタジーだし。価値観が違うものを力でねじ伏せること自体は「必要」なことなのでしょう。

 それにしても独特なハッピーエンドでした。まあ、みんなこの上なく幸せそうでよかったです(?)アスランが現実での出来事を語った最後の「夢はさめた」が怖かった。