びんのなか

想い出話や感想文など。ネタバレだらけです。

ナルニア国物語(4)銀のいす

 ナルニア国物語4作目。

銀のいす―ナルニア国ものがたり〈4〉 (岩波少年文庫)

銀のいす―ナルニア国ものがたり〈4〉 (岩波少年文庫)

 

 

ーあらすじー

 いじめっ子にからまれていたジルは、ユースチスとともにナルニアへ行きます。が、うっかりジルはユースチスを崖の下に落としてしまい、離れ離れになってしまいました。その後アスランに出会ったジルは、行方不明となっている王子を探し出すように命じられ、そのためのしるべとなる4つの言葉(王子を見つけるのに必要となる行動)を与えられます。そして、アスランによりユースチスと合流できたのでした。

 ユースチスとジルは年老いた王様を見かけますが、話しかける前に王様は旅立ってしまいます。この王様こそ、前回ユースチスとともに冒険をしたカスピアン王だったのです。第1のしるべでユースチスはカスピアン王に話しかけなければならなかったため、これは失敗となりました。それから2人は王子が行方不明となったいきさつを白フクロウから聞き、沼人の“泥足にがえもん”とともに王子探しへと旅立つのでした。

 ひたすら北を目指して旅をする3人は途中で美しい女性と騎士の2人組に出会います。そして巨人たちの住む城の話を聞き、そこを目指すことになります。にがえもんは警戒しますが、ユースチスとジルは旅に疲れ果てていて、少しでも快適な環境に身を置きたくなっていたのです。ところが、巨人たちはユースチスたちの味方ではありませんでした。彼らは人間を食べようと考えていたのです。3人は逃げるわけですが、それとともにしるべの言葉の2つ目と3つ目も失敗していたことに気付きます。もう最後のしるべを失敗することはできません。

 地下の国へたどり着いた彼らは、そこで旅の途中で出会った2人組と再会します。若い女性は王妃(カスピアンの妻で探している王子の母)を殺害し、王子を攫った魔女でした。そして騎士こそが探し求めていた王子その人だったのです。4つ目のしるべの言葉の通りに王子を助け出し、魔女を倒した彼らはケア・パラベルへと帰還します。

 役目を終えたユースチスとジルは元の世界へと戻り、いじめっ子たちをやっつけ(?)学校自体も改善されたのでした。

 

ー感想ー

 今回初登場のジルが主人公だと思います。この物語では彼女の成長と活躍が描かれています(一番活躍していた)。ジルは、エドマンドやユースチスのように極端な「悪い子」「嫌な子」というわけではありません。彼女には、自分の犯してしまった間違いを認めることができず、自己弁護したり相手のせいにしたりする、意地っ張りで弱いところがありました。そのため、旅の途中で仲間を危険な目に合わせてしまうことや、ユースチスと言い合いになることもたびたびでした。その旅の過程で、自分の愚かさに気付き、勇気をもって立ち向かえるように成長します。彼女が間違いを犯すとアスランが現れて、それに気づかせるのです。とはいえ、何がどうしていけなかったのかということをジル自身が考えて答えを導き出すので、「ああジル成長したなあ」と思いました。今回のアスランは厳しさの中に優しさを持つ父のような存在でした(シリーズを通してそうなんですけど、今回は特に)。

 ユースチスは、ペベンシー兄妹のように「特別」な存在ではなく、あくまでも普通の子として描かれています。なので、戦闘に長けているわけでもありませんが、少なくともどんな環境でも生きていけそうな強さは身に着けていました。アスランは主にジルへと使命を与えるわけですが、それはジルの方が未熟であるからだと思います。今作ではユースチスは自分のためではなくて、他人のために動くことができる人間になっています。それは前の冒険で得たものです。ジルも同様に、物語が終わる頃にはとても勇気のある友人想いの子になっていました。2人は親友になるわけですが、それは強い絆で結ばれた同士、といった感じだと思います。

 2人の子どもたちはもちろんですが、この物語の中で一番頑張っていたのは、たぶん泥足にがえもんです。名前がすごいですね。これ、原書ではなんて書いてあったんだろう。ナルニアシリーズでは、こういった元はどんな言葉で書いてあったのか気になる名前が頻繁に登場します。英語が不得手なので、おそらく読むことはないですが、ちょっと気になります。それはともかく、彼はものすごい悲観主義者なわけですが、それでいてかなりの常識人です。2人の子どもたちが間違った方向へと行きそうになった時には警告してくれますし、それでも止められなかった場合でも相手を責めることなくフォローしてくれます。本当にできた人です。無事に旅を終えることができたのは、彼の存在あってのことです。

 そういえば、タイトルの「銀のいす」。読んでいる途中、タイトルを忘れていました。物語の中で、銀のいすが出てきたときには「ああこれのことかぁ」と思いました。銀のいすは、攫われた王子を縛る魔法だったわけですね。これを破壊することで、王子は解放されたので、まあ旅の目的といえばそうなんですけど…。他の作品に比べて、ややわかりにくいタイトルな気がします。

 前回までと違って、本当に最初から最後まで「普通の子」が主人公だった今作。最後もジルは元の世界への帰還を望みます。この辺りはペベンシー兄妹と違います。そして、アスランの力により現実の世界における環境が改善されます。なんと2人の通っていた学校の悪習が国会を巻き込んで見直されたのです。当時のイギリスの教育制度がどんなものであったかは分かりませんが、作者は何か思うところがあったのかなあと思いました。

 アスランがユースチスたちを元の世界へ戻すときの言葉。それから、カスピアンの言葉。あらためて読み直した時、これらが最終巻への伏線となっていたのかと思うとぞっとしました。