びんのなか

想い出話や感想文など。読書メモが多め。ネタバレだらけです。

ナルニア国物語(2)カスピアン王子のつのぶえ

 ナルニア国物語の2作目「カスピアン王子のつのぶえ」。物語の時系列順ではなく、発表順に感想を書いていこうと思います。「ライオンと魔女」の続編であるこの作品、ぺベンジー兄妹も全員参加で、新たにカスピアン王子などが登場します。

 やっぱり私の持っているのと表紙絵が違いますね。中の絵も違うのかな。

 以下、適当なあらすじと感想。長いです。

 

カスピアン王子のつのぶえ―ナルニア国ものがたり〈2〉 (岩波少年文庫)

カスピアン王子のつのぶえ―ナルニア国ものがたり〈2〉 (岩波少年文庫)

 

ーあらすじー

 前作より1300年後のナルニアでのお話。ナルニア人追いやられてしまい、テルマール人(要は普通の人間。魔法などのファンタジックなことを信じない)が支配する時代となっています。本来のナルニアを取り戻す物語です。

 学校へ行くため汽車を待っていたペベンシー兄妹はいきなり異世界へ飛ばされます。そしてすぐに彼らはナルニアへ帰ってきたことがわかりますが、どうも様子がおかしいことに気付くのでした。その後辿り着いた廃墟は、自分たちが王・女王となって政をしていたケア・パラベルの城だったのです。色々城を調べているうちに、宝物庫でサンタクロースからの贈り物を見つけますが、スーザンの角笛だけは見つかりませんでした。

 4人は偶然、川に落とされそうな小人を助けます。この小人はトランプキンといって、4人の王たちを探しに来ていたのでした。トランプキンは、ナルニアを支配しているミラースに子どもができたので本来の王位継承者であるカスピアン王子が追われる身となったこと、カスピアン自身は本来のナルニアを取り戻そうとしていることなどを4人に話します。カスピアンは逃亡中にトランプキンたちナルニア人に出会い、ナルニアを取り戻すために立ち上がったのです。そして、カスピアンが家庭教師に託されたスーザンの角笛を使ったために、4人が再びナルニアへやって来たことがわかります。

 カスピアンのもとへと急ぐ一行でしたが、散々道に迷います。正しい道に導くアスランは初めルーシィにしか見えません。そのため、他の兄姉にはまったく信じてもらえず、さらに険しい道へ進んでしまいます。アスランに諭されたルーシィは再度他の兄姉を説得します。そしてとうとう、他の兄姉たちもアスランに再会することができたのでした。

 なんとかカスピアン達と合流した一行はミラース(というかテルマール人)を退け、ナルニアを取り戻します。そして、ナルニア人との共生を拒む者に、アスランは別の住む場所を与えます。その場所とは、現実世界(ピーター達がもともと住んでいる世界=人間界)のどこかの島のようです。というのも、テルマール人は遥か昔にナルニアへやってきた人間界の住人だったのです。カスピアン自身も人間を祖先にもつ、いわゆるアダムのむすこなので、正統なナルニアの王となる資格があるそうです。そんなわけで、カスピアンはナルニアの王となり、4人は役目を果たしたので帰還します。

 

ー感想ー

 ひたすら道に迷っている話だった気がします。あとリンゴ。城跡でずっとリンゴを食べていて、それが何となく印象深いです。

 今回は失われた、あるいは忘れられた信じる心を取り戻す物語でした。アスランが見えない=信じる心が失われているということみたいです。一番純粋なルーシィはすぐに見えます。そして、エドマンド、ピーターの順にアスランを見ることができます。エドマンドはアスランを見たいという気持ちが強く、ピーターも同様に見えること自体が当たり前だと思っていたことから、アスランを信じる気持ちは強かったのでしょう。しかし、スーザンにはなかなか見ることができませんでした。それは、彼女心の弱さがあったからのようです。

 言葉を話さないクマに襲撃された時のスーザンとルーシィのやり取りが印象的。ルーシィが<元の世界でも人間の心が荒んでしまったら、人間の姿をしていても本当の人間なのか、けもの人間なのかわからなくなる>みたいなことを言うのに対して、スーザンは<そういう想像は意味ない>と返します。ルーシィには、もしかしたら、元の世界で人間の心が少しずつ荒んでいってるように思えているのかもしれません。

 前作の問題児だったエドマンドはすごくいい子になっていました。彼は分析力に秀でているようです。それから、ルーシィの一番の理解者。あと、ピーターのことを強く信頼しています。ルーシィは一番アスランに依存したキャラクターだと思います。純粋な分、盲目的に信じてる、そんな感じ。それだけ強い想いがあるからこそ、すぐにアスランを見ることができたのでしょう。ピーターは責任感が強い、頼れるお兄さん。また、自分の過ちをきちんと受け止める強さをもっています。一の王というだけあって、もっとも王にふさわしい人物だと思います(少年だけど)。スーザンは…。一番ませている感じです。女の子の方が成長が早いからなのか、ピーターより大人びた感じです。それゆえ、あっという間に子ども時代の純粋さを失ってしまうのかもしれません。一応、心の弱さを克服したはずですが…。そして、今作から登場のカスピアン。古の「ナルニア」に強く惹かれる人物です。正義感と好奇心が強い少年です。彼のような人物がナルニアの王様になるのであれば、きっとナルニアナルニアらしく反映するでしょう。

 最後の方で、多様性を受け入れられる人と受け入れられない人は、共生できないため分かれて住むことになります。要は、ナルニア人(=人間以外でも喋る様々な生き物たち)との共存ができないと考える普通の人々は人間の世界へ送られるわけですが、文明とか全然違う異世界へいきなり行って本当に彼らは大丈夫なのでしょうか。まあ、隔絶された島みたいだし、ある程度アスランの加護もありそうなので当面はやっていけるのでしょうが。価値観に深い隔たりがある場合、どちらが正しいとかではないし、共存はできない。確かに。現実の私たちの世界ではどうでしょう。こんなふうに分かれてお互い干渉しなくて生きていけるなら、どんなに楽だろうと思います。それから、この頃のアスランは心が広かった。