びんのなか

想い出話や感想文など。読書メモが多め。ネタバレだらけです。

十二国記(5)風の万里 黎明の空

 間があきましたが、十二国記です。エピソード4となります。陽子が王になってからのお話。「月の影 影の海」の続き。

 上下巻で一冊のボリュームもかなりあるため、できるだけ簡潔にしたかったのですが、無理でした。メインの主人公は陽子ですが、基本的には陽子、祥瓊、鈴の3人の少女が主人公で、3人それぞれの視点で物語が進みます。おかげで登場人物がとにかく多いです。内容わかっていても人間関係や地名がややこしくて混乱したので、フローチャートや相関図を作ってみました。

 

 今回情報量がとにかく多かったため途中で切っています。

 (3/17 誤字を訂正しました)

 

 

 ■□あらすじ■□

 後半かなり端折りました。

<上巻>

□ 陽子

 景王となった陽子だったが、官吏たちは何も分からない陽子を相手にしないため、結局官吏たちの言いなりとなっている状態だった。朝廷は靖共(冢宰。官吏で一番偉い)派と反靖共派で二分されていた。麦州候の浩瀚(前王が斃れた後に起った偽王に最後まで抵抗していた州候)の処遇についても揉めており、陽子はどちらの言い分が正しいのか判断できず、ひたすら己の無力感に悩まされていた。

 好き放題言い合う朝廷にキレた陽子はとうとう主要な官吏の役職を解任し、景麒を冢宰に据え、街へ降りる(もちろん秘密裏に。雁で政治を学ぶということにしている)。

 街(瑛州の固継というところ)に降りた陽子は遠甫のもとで学んでゆくことになった。その里家には陽子と同じ年頃の少女蘭玉と彼女の弟桂桂がいた。遠甫を時折訪ねる男を不審に思った陽子は、その素性を調べる。

□ 祥瓊

 圧政を敷き続けた峯王は、月渓に討たれる。公主(王の娘)の祥瓊は目の前で母を殺され、仙籍を剥奪され一市民として里で暮らすよう言い渡される。

 里で慣れない生活を強いられて3年くらい経った頃、里の者たちに素性がばれて危うく殺されそうになる。すんでのところで月渓に助けられた祥瓊は、恭へと国外追放となった。慶では同じ年頃の少女が王になったという話を聞き、祥瓊は自分が失った一切のものを手に入れた(であろう)景王に対して憎しみを抱いていた。

 恭に着いた祥瓊は供王(珠晶)の下女として働くが、ある時宝飾品と騎獣を盗み柳へと脱走する。高級宿に泊まった祥瓊はそこで柳の様子を見に来ていた楽俊と出会う。恭の要請で捕らえられた祥瓊だったが、賄賂を渡すことで解放される。楽俊と過ごすうちに祥瓊は自分の愚かさに徐々に気付いていく。

□ 鈴

 身売りされて東京へ行く途中、鈴は蝕に巻き込まれて慶に辿り着く。その後才で飛仙の梨耀の下女として仙になった鈴だったが、梨耀の執拗な虐めに耐え抜く日々を100年くらい送っていた。慶に登極した女王が同じ年頃の胎果であることを聞いた鈴は、一方的に親近感を覚える。

 とうとう梨耀のもとから逃げ出した鈴は、采王(黄姑)に助けを求める。黄姑は鈴の未熟さを見抜き、下界での暮らしを勧める。絶望した鈴は、景王に会いたいと黄姑に願う。黄姑はその願いを聞き入れ、旅の世話をする。

 慶への旅の途中、船上で出会った少年清秀と過ごす中で鈴は己の甘えを自覚していく。徐々に弱っていく清秀を景王に助けてもらおうと首都を目指す鈴だったが、清秀は鈴が少し離れた間に馬車で轢き殺されてしまう。偶々居合わせた陽子は鈴に清秀の亡骸を引き渡し、彼の最期の言葉を伝えた。

 

<下巻>

□ 陽子

 止水では郷長の昇紘が七割の税を徴収していた。そんな慶の現実を知った陽子は、景麒にあらためて浩瀚について聞く。そんな中、里家が襲撃され、遠甫が連れ去られる。瀕死の桂桂は金波宮へと運ばれるが、蘭玉は息絶えていた。陽子は遠甫の行方を探す。

□ 祥瓊

 祥瓊は楽俊に慶まで送ってもらう。彼は祥瓊に景王の友人であると告げたのだった。

 慶に着いた祥瓊は磔の現場に遭遇する。思わず石を投げつけて追われるが、陽子に助けられる。さらに追手がやって来るが、陽子に逃がされた祥瓊は桓魋によって助けられる。桓魋は和州で乱を起こし、王に慶の現状を知らせたいと考えていた。桓魋に賛同した祥瓊は桓魋と行動を共にする。

□ 鈴

 清秀を失った鈴は、清秀を轢いたのが昇紘であると知る。昇紘や彼を野放しにしている景王に激しい憎しみを抱いた鈴は、昇紘を引きずり下ろす計画を立てていた虎嘯や夕暉の仲間となる。

□ 武器売買の仲介している労のところで祥瓊と鈴が出会う。

□ 遠甫の手掛かりを探していた陽子が鈴たちと合流。

 ▪ 昇紘を討つため決起する。

 ▪ 昇紘を捕えることに成功。遠甫を攫ったのが呀峰(和州候)であることがわかる。

□ 逃げ道を失い危機に陥るが、桓魋たちが応援に来る(祥瓊も同行)。

 ▪ 陽子、祥瓊、鈴が出会う。祥瓊、鈴は陽子が景王であることを知る。

□ 王師(王直属の軍)が出てくる。

 ▪ 裏で糸を引いていたのは靖共だった。

□ 陽子が景麒を伴い、王師を一喝。靖共、呀峰、昇紘を捕えるよう命じる。

□ 陽子は王宮に戻り大幅な人事異動を行い、朝廷を整理する。

 ▪ 祥瓊と鈴は陽子とともに学ぶという名目で王宮で過ごすことになる。

 ▪ 陽子が決められずに悩んでいた初勅は<伏礼の撤廃>となった。

 

■□登場人物■□

*年齢は外見の年齢です。青文字は既出のキャラです。

■ 陽子

 景王。16歳。王となったはいいが、何も分からないため官吏になめられている。おまけに女王であるというだけで失望されている(所謂女性蔑視とは異なる)。

 非常に真面目な性格で悩みやすい。自分の非をまっすぐ認められる強さを持った少女。気弱と思われていたが、実際は官吏を威圧するくらいの覇気を持っている。延王と同様、自ら剣を手に取り戦う(冗祐を憑依させて)。下界では中陽子(チュウ・ヨウシ)と名乗っている。

 現代日本で生まれ育ったためか、地位に対する考え方がこの世界とは合わないところがある。

■ 祥瓊

 元・芳の公主。16歳。何不自由ない生活を送っていたが、月渓が父である王を斃したことからすべてを失う。美しい容姿であったが、苛酷な生活の中でそれすらも失われる。

 己の公主としての責任に気付かずすべてを奪った月渓を恨んでいたが、楽俊との出会いで多くを学び己の過ちに気付く。かなり気が強い。

■ 鈴

 本名・大木鈴。16歳。海客である自分をこのうえなく不幸だと思っている。自分の不幸に酔っていて、誰からも理解されないと嘆く。とにかく思い込みの激しい性格で、ありえないくらいの行動力の持ち主。

 清秀との関わりの中で、己の未熟さを徐々に自覚していく。3人の主人公の中で一番長く生きているが、精神的には一番幼い。

 

■ 景麒

 慶の麒麟。無愛想で冷たい印象。真面目な性格でずけずけものを言うが、言葉が足りないところがあり、陽子とのコミュニケーション不足が深刻。格式を重んじる景麒に対して、現代日本から来た陽子の価値観にはかなり溝がある。

 王として成長していく陽子に安心するが、平気で無茶をする主に気が休まらない。

■ 遠甫(えんほ)

 陽子の先生。固継の閭胥(長老)。松塾の閭胥みたいなものをやっていたらしい。実は伝説扱いとなっている松伯という飛仙で、達王(慶が繁栄していた頃の王)に呼ばれて朝廷にもいた。太師となる。

■ 蘭玉

 陽子の滞在先の里家で生活する少女。弟想いのしっかり者。襲撃に遭った際、陽子の御璽を見つけて敵から隠すように息絶えた。

■ 桂桂

 蘭玉の弟。襲撃に遭い瀕死だったが、一命を取り留めた。

■ 虎嘯(こしょう)

 拓峰で昇紘を討つ計画を立てる者たちのリーダー。大男。難しいことは考えられないが、まっすぐな心の持ち主。

■ 夕暉(せつき)

 虎嘯の弟。14~15歳。兄と違い、穏やかで聡明な少年。実際に策を練っているのは夕暉の方で、参謀的な役割をしている。

■ 桓魋(かんたい)

 和州候・呀峰に対して反乱を画策している。虎嘯たちと違って倒そうと考えているわけではなく、乱を起こして王に現状を知ってもらうことが目的。元麦州州師将軍、青辛(せいしん)。禁軍左軍将軍となる。熊の半獣(楽俊と違って普段は人の姿)。

■ 柴望(さいぼう)

 桓魋とともに和州で乱を起こそうとしている。元麦州州宰。松塾出身。和州候となる。

■ 浩瀚(こうかん)

 元麦州候。民に慕われていたが、靖共の策略で失脚し追われる身となる。松塾出身者で、柴望や桓魋に指示を与えていた。30歳前後の怜悧な印象の人物。今作でのキーパーソンだが、終章まで登場しない。

■ 労

 労蕃生(ろうはんせい)。茶斑の髪の小男。松塾出身者で、柴望の協力者。虎嘯とは古馴染みで、武器の調達を仲介していた。

■ 梨耀(りよう)

 才の先々代の王の愛妾だった飛仙。下男下女たちに無理難題を押し付けて困らせることを楽しんでいる。特に鈴を虐め抜く。後宮にいた頃は王が道を踏み外すのを窘めるような女性だったらしい。

■ 清秀

 12歳くらいの蜜柑色の髪をした少年。利発で鈴の本質的な問題点を看破する。妖魔に襲われた頭の傷が原因で衰弱していく。

■ 月渓(げつけい)

 芳の恵州候。王の圧政から民と国を守るため、国が崩壊する前に王を討った。民に慕われているが、己の罪深さを自覚しているため玉座を望んでいない。

■ 沍姆(ごぼ)

 仙籍を剥奪された祥瓊の里家の閭胥。峯王を憎んでおり、祥瓊が公主であったことを知ってからはつらく当たるようになる。いちおう(最低限の)道理を弁えた人物で、私刑されそうになった祥瓊を助ける。

■ 靖共(せいきょう)

 慶の冢宰だったが、キレた陽子に太宰とされる。朝廷の最大派閥の頂点にいて強い権力を持つ。浩瀚を陥れ遠甫を攫った黒幕で、呀峰をいいように使っている。今作三大悪党のトップ。己とは真逆の道を知る松塾出身者を忌み嫌っている。

■ 呀峰(がほう)

 和州候。民を苦しめ続ける悪党。強かな人物で、尻尾を掴ませない。

■ 昇紘(しょうこう)

 和州・止水郷の郷長。呀峰に輪をかけてえげつない悪党。呀峰の保護のもと好き放題している。

 

■ 尚隆

 延王。陽子を気に掛けて王として色々アドバイスしてくれる。

■ 六太

 延麒。陽子の様子を見て心配しているが、彼女なら自分で乗り越えられると信じている。

■ 楽俊

 陽子の友人の半獣。普段はネズミの姿をしている。雁の大学生で非常に博識。六太の依頼で柳の様子を見に来ていたところ、祥瓊と出会う。困っている人間を放っておけない。

■ 黄姑

 采王。善政で国民から慕われている。老女。賢く穏やかで優しい性格。残念ながら彼女の優しさは鈴には伝わらなかった。

■ 揺籃(ようらん)

 采麟。鈴より年下に見える…ということから14~15歳くらい?とてもおっとりしている。黄姑は二王目。彼女の言葉も鈴には届かなかった。

■ 珠晶

 供王。12歳くらいの少女。とても気が強く、供麒に対して尊大な態度で接する。王としての責任感が強く、自分のもとで働いている者たちに対する感謝の念も忘れない。

■ 供麒

 恭の麒麟。赤銅に近い金の髪、がっしりとして朴訥とした印象の麒麟麒麟はすらりとして優美な姿の者が多い)。性格もぼーっとしてそう(麒麟にしてはあまり賢そうじゃない;)。

 

■ 仲韃

 祥瓊の父で、前峯王。苛酷な法を以て国民を苦しめ続けたことで月渓に討たれる。 非情に潔癖な性格で、僅かな間違いも許さない。一方で妻や娘に非常に甘かった。

■ 佳花

 祥瓊の母で前王后。自分や娘より優れた者たちを無実の罪で陥れるなど、王に讒言していた。国が傾いたのはむしろこの人のせいかもしれない。

■ 峯麟

 仲韃を峯王に選んだ麒麟。二代にわたって暗君を選んだことから国民に絶望を与える。このため王とともに殺された(三代目の王を選ばせてもらえなかった)。

 

■□メモ1■□

 わかりづらいので整理してみました。

■ フローチャート (わかりやすいのか…?)

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 ■ 相変わらずわかりづらい相関図。(本当にわからん)

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 ■ 別の角度から

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 微妙ですが、自分の整理には役立ちました。とにかく地名を覚えるのが苦手でだいぶ混乱したので。お前だけだとか言われそうですが。

□ 瑛州

 首都<堯天>がある。陽子は北韋の固継という里で世話になった。労の家は北韋内にあった(陽子が嗅ぎまわっていたので引っ越した)。

□ 和州

 今作のメインとなる舞台。ここの止水郷の郷長が昇紘。拓峰は止水郷の郷都で、虎嘯・夕暉が住んでいた。

 州都は明郭。ここで活動していたのが桓魋たち。呀峰は州候なのでここにいる。

 イメージ的には州=都道府県、州都=県庁所在地、郷=市、呀峰は知事、昇紘は市長…みたいな感じ?行政システムが根本的に違うので、あくまでもイメージですが。

□ 麦州

 浩瀚が州候をしていた州。松塾があったところ。