びんのなか

想い出話や感想文など。読書メモが多め。ネタバレだらけです。

読書の秋

 最近急に本が読みたくなってきました。そういえば「読書の秋」っていいますしね。なんで「読書の秋」何だろうと思って調べてみたら漢詩が由来となっているそうです。

 私はフィクションを読むことが多いです。最近はファンタジーが多かったですが、推理小説なども以前はよく読んでいました。

 小説にせよマンガにせよ、面白いと思った作品があると、その作家さんの作品を読み漁る傾向があります。

 以前、東野圭吾にはまっていたことがあって、それこそ片っ端から図書館で借りて読みまくっていました。少し前に加賀恭一郎のシリーズのドラマ(映画?)をテレビで放送していて(録画しただけ)、ふとまた読みたくなっていました。

 で、調べたら「赤い指」という短編集以降の4冊を読んでなかったみたいなので、ちょっとずつ読んでいこうかなと思っています。とりあえず古本屋さんで「赤い指」だけ買いました。あと、「祈りの幕が下りる時」はあったのですが、間の作品がなかったのでとりあえずまた今度でいいやと。

 他にもオズを読んでいたせいで、「ピーターパン」とか読んでみたいです。昔読んだのは恐らく子供向けの絵本だったはずなので、たぶん色々端折られた内容なんだろうし。

 あともう少しで十二国記の最新作が発売ですね。電車で広告を見た時はどきどきしました。ああ早く読みたい。できれば全巻買い直して読みたい。

 読みたい本はたくさんあるけど、11月末までは無理っぽい…というか趣味などに時間を費やしている場合ではないので、とりあえずその日を乗り越えたら、読みまくりたいです。頑張らなくては…。

 

オズまとめ(2)

 ちょっと時間が空きました。今回は主に時間の経過と魔法について色々。

■□考察(つづき)■□

■ 外の世界での時間の経過

 ここで「外の世界」がどの範囲を指すのか難しいところですが、とりあえず私たちの住む世界地図に記すことが可能な世界としておきます。

 ドロシーは「オズのエメラルドの都」でオズの住人となるまでに4回オズへ行っています。では、「オズの魔法使い」から「オズのエメラルドの都」までにどれくらいの時間が経過したのでしょうか。

1.「オズの魔法使い

 ドロシーが竜巻でオズへ行く。(それなりに長い時間の経過があったと思われる。どんなに少なくても1か月以上は経過しているはず)

2.帰還後(数か月くらい?)

 ヘンリーおじさんが過労で体を壊す。療養のためドロシーと一緒にいとこの住むオーストラリアへ行くことになる。

3.「オズのオズマ姫」

 前作ほど長い時間の滞在ではないと思われる。(長くても1か月以内)

4.帰還後

 オーストラリアでの生活→ヘンリーおじさんが元気になってアメリカへ帰る。

*ドロシーが随分長い間、と言っているので1か月どころではないと思う。

5.「オズと不思議な地下の国」

 せいぜい1~2週間くらい?

6.帰還後

 特に何もなくカンサスで生活。

7.「オズへつづく道」

 数日~1週間くらいか。

8.帰還後

 生活がどんどん苦しくなる。竜巻で失った家を建て直すために農場を抵当に入れていたが、借金の返済が滞ってきたため農場を売却しなければならなくなる。

9.「オズのエメラルドの都」

 家族3人(+2匹)でオズへ移住。

 ドロシーのオズでの滞在時間の合計自体はそこまで長くなさそうですが、外の世界でどれくらい経過したかというと―1年以上は経っている気がします。むしろ、数年くらい経っていそうです。というのも、ヘンリーおじさんとエムおばさんがどんどん年を取っているように感じるからです。そうなると、たとえばドロシーが初めてオズへ行った時が10歳くらいだったとして、移住した時には12~13歳くらいになっていた…のかな?

 とはいえ、ドロシー自体はそんなに成長した感じがないので、1年以内であると考えた方が妥当なのかも。浮き沈みが激しすぎる気もしますが(家の経済状況もそうですが1年に4回の行方不明はさすがに無理があると思う)。

 個人的にはドロシーのオズの滞在時間が1~2年くらいあって、周囲の時間はそれなりに経っているのにドロシーだけが成長しなかった方が面白いと思います。 

■ 登場人物たちの年齢

 作中、具体的な年齢の記載はありません。オズマが14~15歳くらいの外見らしいですが、ドロシー達については何も書かれていませんでした(あとがきに作中ドロシーが12歳くらいと書かれている、とありましたが…どこだったんだろう??)。ベッツィがドロシーより1つ年上、トロットが1つ年下です。また、ボタン・ブライトはドロシーより2~3つ年下らしいです(「オズへつづく道」の時点で)。

■ ドロシーがオズへ移住してからの時間経過について

 「オズのグリンダ」までには何年も経っているようですが―。

 ベッツィがオズへ来るまではともかくとして、トロットがオズへ来るまでには年単位での時間が経過していたのではないでしょうか。

 何故かというと、ボタン・ブライトが初登場時より明らかに成長しているから。ボタン・ブライトがドロシーより2つ3つ年下、ということはトロットより1つ2つ年下となります。ですが、どう考えても初登場時のボタン・ブライトが9~10歳とは思えません。めちゃくちゃ幼くて、幼稚園児みたいな感じでした。

 オズの住人となる「オズのかかし」でトロットの冒険に合流した時には、かなりしっかりしていたので、絶対に何年か経っていると思います(キャラ変の可能性は考慮しない)。

■ ボタン・ブライト

 いちおう外の世界(フィラデルフィア)出身の男の子ですが、彼自身がとても不思議な存在です。おとぎの国と現実の世界の狭間に存在しているみたい。初めて彼に触れた時はちょっとイライラしましたが、その独特の雰囲気はマザーグースっぽいキャラクターだと思いました。

■ 魔法を使う者たち

 魔女・魔法使い

 基本的には人間。圧倒的に魔女の方が多いと思われる。彼らの魔法には道具や決まった手順が必要となる。なので、手順が間違っていれば魔法は発動しない。魔力というより知識が必要となる。ある程度の素質さえあれば魔法を使うことができるが、オズマがグリンダと魔法使い以外の者が魔法を使うことを禁じている(妖精やユークーフーなどはこの法律の対象とはならないらしい)。

*グリンダは特別な存在な気がします。年齢不詳だし。

 妖精

 基本的に幸せ(というか何らかの恩恵)を与えるための魔法を使う。魔女たちの使う魔法と違い、特別何かの道具や手順は必要とせず無から生じる。相手の使った魔法に法則があれば、その魔法を解くためには法則(手順など)が必要となる。

 ユークーフー

 変身を得意とする魔女の一種。普通の魔女とは異なり、人間とは全く別の種族であると思われる。ユークーフーの魔法にも何らかの道具が必要となるらしい。非常に強い力を持つ。

■ 色々な魔法のアイテム

 魔法のアイテムさえあればドロシーにだって魔法が使えます。

 銀の靴

 東のわるい魔女が履いていた魔法の靴。ドロシーがカンサスへの帰還に使ったため消滅した。本当は色々な力を持った靴だったらしいが、その力を発揮することはなかった。

 魔法のベルト

 元の所有者はノーム王。身に着けている者の身を守ること、1日に1回願いを叶えてくれること、願った相手を変身させること等ができる。

 魔法の絵

 オズマの部屋に掛けてある絵。自分が見たい景色をリアルタイムで見ることができる。

 魔法の本

  グリンダの所有物。世界で起きたあらゆることが記録されていく。ただし、人が起こした出来事に限られる。

●  魔法の道具の入ったカバン

 魔法使い(オズ)が魔法を使うための道具を入れたカバン。

 銀の王笏

 オズマが魔法を使う時に使う。

 黄金の洗い桶

 イップのクッキー職人ケーキが所有する洗い桶。ダイヤモンドが散りばめられた黄金製。呪文を唱えることで大きくなり、人を乗せてオズ国内の好きな場所へ移動することができる。

 魔法の笏杖とピンクのコグマ

 クマ・センターを治めるラベンダー・グマが所有する魔法の道具。<魔法の錫杖>は見たいものの現在の幻を映し出し、<ピンクのコグマ>は尋ねられた質問に対して正確に答えることができる(過去に起きたことのみ。未来については答えてくれない)。

 魔法のカーペット

 グリンダよりオズマに進呈された巻きカーペット。広げると死の砂漠の上を通ることができる道となる。

● トロットの指輪

 トロットが人魚からもらった指輪。海で困ったことがあれば、人魚を呼んで助けてもらえるらしい(指輪が活躍したことは一度もなかった)。

● 金のふちなし帽

 呪文を唱えると空飛ぶサルがやって来て3回だけ命令を聞いてくれる。空飛ぶサルにとって命令を聞くことは<罰>だったが、グリンダによって解放された。

 いのちの粉

 振りかけたものに生命を宿すことができる。これによってジャックや木挽き台の馬、ガラスのネコ、スクラップスたちが誕生した。

 カタマラ水

 かけた対象が大理石に変わる。

 愛の磁石(ラヴ・マグネット)

 これを持った者は誰からも好かれる。心臓(ハート)のない者に対しては効果がない。

 魔法の真珠(あまりオズとは関係ないですが)

 ピンガリー王家に伝わる3色の真珠。攻撃、防御、導く力を持つ。

 

9/30 少しだけ追記しました。

懐かしのゲーム(4)幻想水滸伝

 すごく好きでした。今でも好きです。

 弟がFF9をやっていたのを見て、RPGやりたいっと思って買ったのがきっかけです。中古ゲームを適当に探して見つけたのが「幻想水滸伝Ⅱ」。タイトルを何となく聞いたことがあったのと、イラストがきれいだったことで選びました。

 やり始めて思ったのが、なんかこれ前作からの続きなんじゃ…。そりゃ「Ⅱ」なんだからそうなんでしょうが。絶対に「Ⅰ」からやるべきでした。本当に。登場人物たちが懐かしそうに会話しているのを、かなり疎外感を感じながら見ていました。

 

幻想水滸伝Ⅰ>

 Ⅱからやり始めたこともあって、イラストの違いにちょっとびっくりした気が。こちらの方も味があって好きです。Ⅱをやっててまったくわからなかった「坊ちゃん」が主人公です。かなり重いストーリーで、ハッピーエンドにはなりません。個人的には108星揃わない方のエンディングの方が好き。主人公の背負ってしまったものの重さと切なさが伝わってきます。仲間はたくさんいるけれど、ものすごく孤独な主人公でした。

 キャラクターは物語の性質上、大人が多く登場します。仲間の中で主人公の親友ポジションのキャラクターはいませんね。こういったところが余計に彼の孤独を強く感じました。テッドのエピソードは何度見ても悲しいです。過去の村に行った時に流れる音楽が余計に悲しい。

 印象的だったのはエルフのシルビアが仲間になるシーン。主人公たちのことは怖いけどキルキスが信じるものなら信じられる、みたいなことを言っていた彼女がすごく愛おしかったです(うろ覚えなのでちょっと違うかもしれませんが)。あと、ラスボス戦前のタイ・ホーとヤム・クー(とキンバリー)の会話が面白くて好きでした。ちなみに好きなキャラクターはクレオです。最終戦にも連れて行きました。

 

幻想水滸伝Ⅱ>

 Ⅰに比べてあらゆる面で大幅にボリュームアップした続編。ストーリーも複雑になり、登場人物たちのキャラクターや人間関係も厚みがありました。ドット絵も表情豊かでかわいいです。

 主人公はⅠに比べてやや幼さの残る少年といった印象。こちらの方が優しくて精神的に逞しい気がします。義姉のナナミのおかげでか、あまり孤独な印象はありません。とはいえエンディングによって彼の人生が大きく変わるので、孤独となるかどうかはプレイヤー次第かも。ノーマルエンディングはかなり切なかったです。

 ストーリーも好きですが、キャラ達が本当に楽しめる作りになっていました。あらゆる会話パターンを試したくなるし、目安箱や探偵への依頼も全部見たくなります。サイドストーリーやサブイベントも充実していたし、そういった意味でも本当に面白かったです。

 ある意味もっとも印象に残ったのはルカ。ものすごく強烈なインパクトの持ち主で、ラスボスより明らかに遥かに目立ってました。めちゃくちゃ強くて、あっさり全滅したため本当にこれ倒せるのかと疑ってしまいました。それまでの戦闘でそんなに苦労することがなかったから尚更しんどかった…。

 

<幻想水滸外伝>

 Vol.1と2、両方プレイしました。OPアニメは良かったのですが…。ゲームの出来以前にテキストADVというものが私には向いていないと思いました。途中までやって放置していましたが、Ⅲにデータが引き継げるということで攻略サイトを駆使してクリアしました(引き継いだからと言ってそんなにお得感はない)。

 

幻想水滸伝Ⅲ>

 前作から色々な意味で大きく変わった作品。賛否両論あったみたいです。私は十分楽しみました。仲間が集結してからラストまでが駆け足すぎでしたが。それまでが丁寧に描かれていた分、落差が激しすぎました。ええっ、もう終わり?みたいな。そんなわけでストーリーも終盤付近までは良かったと思います。ラストに関しては不満ではありませんが、もう少し捻ってほしかったです。システム自体は楽しかったです。あと、OPアニメがすごく良かった。

 キャラクターについては、主人公たち一行というかメインキャラたちは本当に丁寧に描かれていたと思います。なので、それぞれに感情移入しやすくて、トーマスを含め、どの章の主人公も好きでした。一方、旧作からの引継ぎキャラは正直微妙でした。わざに引継ぎキャラ作らなくてもよかったのでは…?と。たとえば、星辰剣出るならもうちょっとビクトールの話題出してほしかったし、せめてシエラが出てくれれば…といった感じです。個人的にはメグの娘が出るくらいなら、ヒックスとテンガアール(あるいは彼らの子ども)が出てほしかったです。自分の思いとはちょっとずれがありました。

 

 Ⅳ以降はやっていないので、よく分かりません。シリーズ自体完結していないのが残念です。回収されていない伏線があるので、完結してほしかった(ⅣとⅤやってない私が言うのもなんですが)。

 

幻想水滸伝 ティアクライス

 ナンバリングタイトルとは全く世界観を別とした新作。幻想水滸伝なので108星集めとか本拠地システムなどはあります。

 このゲーム、母の暇つぶし用に買ったため私自身はプレイしていません。母の隣でサポートする程度だったので、全部見たわけでもありません。でも、隣で見ていて面白かったです。ストーリーもきれいにまとまっていたと思います。ただ、声がついていてびっくりしました。

 主人公はかなり自己主張が強かったです(悪い意味じゃありません)。主人公を支えてくれる幼馴染たちもいるし、そういった意味では今までの主人公のたちよりだいぶ恵まれてるなと思いました。

 

オズまとめ(1)

 オズシリーズ14冊全部読んだ感想と考察(?)を。主に「エメラルドの都」くらいまで。

■□感想■□

 (たぶん)20年以上前に読んだせいか、ほとんど内容を覚えていませんでした。いや、本当に読んだのか疑わしいレベルで。

 あらためて読み直すと、いろんな意味で面白かったです。とにかく作品ごとにツッコミどころが多くて、他作品との矛盾点だらけでした。設定がころころ変わっているので、あまり深く考えてはいけないと思いつつも、やはり気になります。そのあたりを自分なりの適当な想像で補うと楽しいと思います。それにしても、「ええっ…どういうこと?」を感じずに済んだ作品て、ほぼなかったような…。敢えて言えばリキティンクくらいか。特に「オズのエメラルドの都」でいったん完結したせいか、「オズのつぎはぎ娘」以降はパラレルワールドではないかというくらい設定が違いました。

 

  オズシリーズを一言でいえば「おもちゃ箱」でした。とても色とりどりで楽しいものがたくさん入っている、そんな感じです。作品それぞれが独立した個性をもっていて、ドロシー以外の視点で語られている番外編や外伝的作品も多いです。また、作品自体の構成も複数のパターンがあるので、そこまでマンネリ感を感じませんでした。

 作品全体の共通点としては「ハッピーエンド」これに限ります。すべてが丸く収まって、みんな幸せになります。悪いものは懲らしめられ、正しい道へと導かれます。ご都合主義といえばそれまでですが、そこがオズの素晴らしいところだと思います。

 また、女性が強く描かれているのも特徴かと。あまり気弱なキャラクターは出てきません(ぱっと思い出すのって、「オズのチクタク」に登場したバラの王女くらい?)。大抵の女性キャラは気が強くてさっぱりしています。ネコやメンドリなど、人間でないものまで、みんな気が強く、自立しています。一方の男性陣は、どちらかというと穏やかな性格のキャラクターが多いです。が、よくわからないところでプライドが高い。たいてい変なこだわりで言い争っているのは男性(人間以外含む)キャラクターです。

 オズシリーズはあまり押しつけがましい教訓のない作品で、子どもが読むことを念頭に置かれているためか、とても素直で優しい世界です。登場人物たちは裏表のない性格で、複雑な思考回路の持ち主もいません。その一方で、社会的な問題については考えさせられる場面が多く見受けられました。子ども向けにデフォルメされてはいますが、作品ごとに何かしらの問題提起がありました。1900年~1920年にわたって書かれたこのシリーズは、日本ではまだ明治時代~大正時代(!)だったようです。それでも今でも十分通用するような問題が多く、時代関係なく同じような問題があるんだなと感じました。

 第1作目の「オズの魔法使い」がすごく有名ですが、それ以外ではいったん完結した「オズのエメラルドの都」までが比較的知られているのではないでしょうか(「オズと不思議な地下の国」「オズへつづく道」は番外編みたいなものなので除く。この2作は当初翻訳もされていなかった)。ディズニー版の映画では「オズの虹の国」「オズのオズマ姫」が元になっているし、私が子供の頃に放送していたアニメは「オズのエメラルドの都」までを再編したような内容だったみたいです。

 ここでちょっとアニメ版の思い出について。あまりにも昔に見たので、あまり憶えていませんが、とにかくオズマがかわいくなかったことにショックを受けた記憶があります。持っている本の挿絵のオズマが美少女だったので、かなり期待していたのですが…。たぶん面白かったはず。最後まで見たはずなので。

 「オズの魔法使い」は別格ですが、それ以外だと「オズのエメラルドの都」までであれば「オズのオズマ姫」が好きです。ドロシーとオズマの合流や、ノーム王初登場など重要イベントが多く、前2作の登場人物がほとんど登場します。何より大好きなビリーナが大活躍するのです(後半ほとんど登場しなくなったのが本当に残念)。物語自体もテンポよく楽しめました。

 

■□考察■□

■ オズの国

 地球上の何処かにおとぎの国があって、その中の国の1つがオズ。何処にあるかは不明だが、地図上には存在しないと思われる。イメージとしては「まっくら森のうた@谷山浩子」。

 オズの国の住人(はじめからオズに存在している者)がすべて細胞レベルで不老不死なうえ、動物が喋ることができる。ただし、これは「おとぎの国」でもオズだけのようで、周辺国にこういった特性があるわけではない。なので、バラ王国へたどり着いたロバのハンクは喋ることができなかったし(オズのチクタク)、ピンガリー島のインガ達には死が存在する(と思われる。少なくとも不老ではない)。(オズのリンキティンク)そうなると、インガやリンキティンクが何年後かにオズを再び訪れた場合、インガ達だけが年をとっていて、オズの住人はそのまま…ということになるのだろうか?

 外の世界から来た者については、いちおう不老となるが不死であるかどうかはわからない。子供向けの作品なのでアレだが、おそらくオズには生殖行為は存在しないのではないだろうか。そうでなければ人口過密状態に陥ってしまうだろうし、成長というものが存在しない世界において必要がないように思われる。きっとラーラインの魔法によってオズの国は得たものも大きかったけれど、失ったものもそれなりにあったのではないだろうか。それにしても永遠に赤ちゃんであるとか、その成長しない赤ちゃんを育て続ける母親とかってある意味怖い。

■ おとぎの国

 あらゆる不思議なものが存在する世界。人間や動物には分類できないような不思議な生物が数多く存在している。その中には魔法を使うことができる者、不老不死やものすごく長寿な者などがいる。おそらく妖精ははじめから不老不死の存在。

■ オズマ

 少なくとも「オズのエメラルドの都」までは妖精の設定はなかったと思う。ポリクロームもそうだが、「オズのブリキの木樵り」で当たり前のように魔法を使っていてびっくりした(ポリクロームは「オズのチクタク」で妖精であると明言されていたが)。

 当初の設定では、オズ王家の末裔。ちゃんと父(と祖父)がいた。しかし、その後ラーラインがオズの支配者として置いて行った妖精という設定に。

■ オズマの魔法

 登場してしばらくは魔法が使える感じではなかったので、魔法を使う能力はあったけれど、はじめは知識や技術が足りない状態だったのだろう。“オズマ”に戻るまではずっと普通の人間の男の子だったから。

■ オズの歴史(私の妄想なのであまり真剣に受け取らないでください;)

1.おとぎの国の砂漠の中心にオズという国があった。この国はオズ王家によって治められていた。

2.ある時4人の魔女が王を誘拐して王位を剥奪し、東西南北にオズを分割した。王は北のモンビによって幽閉された。その後、王の息子(と妻)も幽閉された。

3.北と南はよい魔女がわるい魔女を斃して、支配権を剥奪した(依然王とその息子は幽閉されたまま)。

4.オマハから<魔法使い>がやって来て、エメラルドの都をつくりオズを統一した。

5.オズの前支配者について知った<魔法使い>がモンビを訪れた。モンビは真実を語らず、知らぬ存ぜぬを貫き通していた(罰せられることを恐れたから?)。

6.前王の息子の妻は子ども(=オズマ)を身籠っていた。その頃、偶々上空を通りがかった妖精の女王ラーラインがオズを「理想郷」に変えることにした。そのためには妖精の支配者が必要だと考えたラーラインは、オズの正統な支配者の血を引く胎内にいるオズマを妖精とした。

7.オズマが生まれてオズは理想郷となった。オズマが生まれたことを知ったモンビはオズマと両親、祖父を殺すことにした。オズマは妖精であるため殺すことができず、人間の男の子に変身させ、妖精の力を封印することが精々だった。そして、オズは「完全な理想郷」ではなくなってしまい、(不老)不死の効果は停止した。このためオズマの両親たちは殺されてしまった。(少なくとも何年かは不老不死の世界だったと思われる。ブリキの木樵りがブリキ人間になったくらいだから)

8.ドロシーが竜巻でオズの国へやって来て、西と東の悪い魔女が消滅する。<魔法使い>は外の世界へと帰り、かかしがオズの支配者となる。<オズの魔法使い

*この頃のオズには「死」が確実に存在していた。「オズの魔法使い」は結構残酷な描写が多い。

9.ジンジャーによるクーデターでかかしが王座を剥奪される。その後、グリンダによってオズマが元の姿に戻り、妖精の力を取り戻したことで、オズは再び「理想郷」となる。<オズの虹の国>

10.ドロシーが嵐の海原から再びオズへやって来て(厳密にいうとエヴの国だが)、オズマと出会う。ドロシーとオズマは親友となり、ドロシーはオズの王女となる。<オズのオズマ姫>

11.ドロシーが地震で三度オズへ(最初に着いたのはおとぎの国の別の場所)。この冒険で<魔法使い>と再会。<魔法使い>はオズの住人となる。<オズと不思議な地下の国>

12.ドロシーがオズマの誕生日パーティーに呼ばれる。ここで出会ったモジャボロがオズの住人となる。<オズへつづく道>

13.ドロシーがオズマに頼んでヘンリーおじさん、エムおばさんとともにオズの住人となる。以前打ち負かしたノーム王が復讐を企てたため、グリンダによってオズは外の世界から(周囲の国からも?)隔絶される。<オズのエメラルドの都>

 

 

 

 

 

 

オズのグリンダ

  オズシリーズ14作目。こちらで最終作となります。あとがきによると、作者のボームは死の直前までかかってこの作品を書き上げたとのことでした。そんなわけで、完結ではないようです。

オズのグリンダ オズの魔法使いシリーズ

オズのグリンダ オズの魔法使いシリーズ

 

 

 

ーあらすじー

 グリンダを訪れたドロシーとオズマは、<魔法の本>でスキーザーとフラットヘッドが争っていることを知ります。オズの支配者として争いを止めるため、オズマはドロシーと2人だけでこっそり未知の国へと旅立ちます。

 フラットヘッドたちの最高執行官サイ-シツから話を聞いたうえでオズマは、争いを止めるよう忠告します。しかし、耳を貸さないサイ-シツはオズマとドロシーを捕えようとします。一瞬の隙をついて逃げ出した2人はスキーザーの国へ向かいます。

 スキーザーたちの女王クーイーオーと面会したオズマは、自分たちが両者の争いを仲裁するために来たことを伝えます。クーイーオーもサイ-シツと同様にオズマの話を聞き入れず、オズマとドロシーは捕らえられてしまいます。そして、2人は世話をしてくれることになったレディ・オーレックスから、争いの本当の原因を聞いたのでした。

 フラットヘッドたちの攻撃に備えて、スキーザーたちの住むドームは島ごと湖中に沈められました。クーイーオーは潜水艇で攻撃に出ます。ところがサイ-シツと対峙したクーイーオーは、ダイヤモンド・スワンに変身させられてしまいます。このため、クーイーオーは魔法を使うことができなくなり、彼女の魔法で沈められた島は浮上することができず、湖中に閉じ込められたのです。

 2人の危機を知ったグリンダは緊急でオズの重要人物たちを招集し、対策会議を開きます。話し合いの結果、グリンダたちはスキーザーの魔法の島へ行くことにしました。

 潜水艇に取り残されていたスキーザーの若者エルヴィックは、クーイーオーの魔法で3匹の魚となっていた<魔法の達人>に導かれ、ユークーフーの<赤毛のリーラ>を訪れます。そしてリーラの魔法で<魔法の達人>たちは元の姿に戻ったのです。

 <魔法の達人>たちの協力もありグリンダたちは、魔法の島を浮上させてオズマとドロシー(とスキーザーたち)を救出することに成功します。そして、スキーザーとフラットヘッドの争いも終わり、平和がもたらされたのでした。

 

ー登場人物ー

*主要なキャラクターだけです。多すぎた…。オズの救出隊メンバーは<その他>の項に記載しています。

ドロシー:主人公。活発で好奇心旺盛な女の子。オズマとは大親友。

オズマ:オズの支配者。絶対的存在ではあるはずだが、オズマの存在自体を知らない者たちも多い。とても強い魔力を持った妖精。非常に高い理想をもっていて妥協を許さない。

グリンダ:オズでもっとも力のある魔女。沈着冷静で、オズマの忠実で有能な部下。

魔法使い:グリンダの弟子。優秀な魔法使い。

サイ-シツ:フラットヘッドの支配者。自己中心的な性格で、権力を振りかざしている。脳ミソ缶を3つ取り込んでいるため、他のフラットヘッドより頭が良い。

ローラ:サイ-シツの妻で魔女。脳ミソ缶を4つも持っていたため、強い力を持つ魔女であったが、クーイーオーによって黄金のブタに変えられてしまった。

クーイーオー:スキーザーの女王。傲慢で冷酷。非常に研究熱心で優秀な発明家の魔女。ダイヤモンド・スワンの姿が気に入ったため、何事に対する興味も失った。

レディ・オーレックス:聡明なスキーザーの女性。クーイーオーのお気に入りだったため、多くの情報を持っている。救出された後は新たなスキーザーの女王となった。

エルヴィック:スキーザーの若者。クーイーオーとともに潜水艇に乗っていた兵士のリーダー。誠実で機転が利く。

スクラップス:つぎはぎ娘。陽気で落ち着きがなく、自由な言動で周囲を困惑させることもあるが、非常に頭が良い。今回も彼女の知恵が役立った。

赤毛のリーラ:ユークーフー(魔法使いの一種らしい)で変身の名人。滅多に本当の姿に戻ることはない。他人に干渉されることもすることも嫌う。ひねくれているが、悪人ではない。

魔法の達人:フラットヘッドを治めていた3人の美しい少女たち(フラットヘッドではない)。魔法を使ってフラットヘッドだけでなくスキーザーにも、さまざまな恩恵を与えていた。クーイーオーの策略で魚の姿へと変えられてしまった。(これが原因で、スキーザー、フラットヘッドそれぞれを傲慢な独裁者が治めるようになった。)

 

ーその他ー

☆銀の王笏

 オズマが魔法を使うための王笏。攻撃や防御もできる武器でもある。

☆魔法の指輪

 ドロシーがグリンダから渡された指輪。危険な状態にあることをグリンダに知らせることができる。

☆魔法のベルト

 身につけたものをあらゆる危難から守ってくれる。他にも色々できるが、今回は特にベルトの魔法が役に立つことはなかった。

☆オズマ

 妖精の女王ラーラインがオズをおとぎの国へと変えた時、オズを治める妖精を1人措いて行った。それがオズマ。(シリーズ序盤のオズマの父、祖父の話は…??)

☆グリンダのチャリオット

 空飛ぶチャリオット。白鳥が引いていたはずだが、今回はなぜかコウノトリだった。

☆フラットヘッド

 魔法の山に住んでいる。頭が真っ平らで脳ミソの収容スペースがないので、脳ミソの缶詰をポケットに入れている。脳ミソの缶詰はラーライン(妖精の女王)がオズをお伽の国としたついでにくれたらしい。

☆スキーザー

 魔法の島の建てられたガラスのドーム内の都市に住んでいる。ドームや内部の大理石の建物は<魔法の達人>たちによって作られた。身体的な特徴は特にないと思われる。

 

☆オズマの相談役

 かかし、ブリキの木樵り、スクラップス、モジャボロ、チクタク、カボチャ頭のジャック、キャプテン・ビル、ヒキノバシ・ウォグル・ムシノスケ、ヘンリーおじさん、オズの魔法使い

*相談役以外の救出隊同行者

 ベッツィ、トロット、ボタン・ブライト、オジョ、ガラスのネコ、臆病ライオン

 

ー感想ー

 前作「オズの魔法くらべ」のほのぼのとした雰囲気と違って、ややシリアスな内容となっていました。今回もほぼオズに住む主要人物はほとんど登場していました。

 オズの片隅にある国に平和をもたらすお話です。争っているスキーザーとフラットヘッド両国とも支配者だけが強い力を持っていました(国民は虐げられている)。特にスキーザーの場合、クーイーオーがいなければ魔法で動いていた仕掛けのすべてが使えず、島が沈んだままとなってしまいます。一部(というか1人)が大切な情報などを独占していると、その人の身に何かあった場合、後どうしたらいいんだって話の典型例のようでした。

 この物語のテーマの一つとして、「魔法が万能ではない」ということがあると思います。魔法がすべて「無」から生み出されるわけではなく、仕掛けや道具が必要となっていて、方法がわからなければ使うことも解除することもできません。そういったことが今作では特に強調されていたように感じられました。

 スキーザーの国の文明は近代的で(動力源が魔法であったとしても)機械が多用されています。そういったことを発明したクーイーオーはかなり進歩的な人物で、伝統的な魔女のイメージのグリンダとは対照的でした。グリンダの有能さは、魔法というよりむしろ、冷静な判断力や統率力といった形で表れていました。

 また、ドロシーとオズマの2人が一緒に行動するのは「オズのオズマ姫」以来ではないでしょうか。そもそもオズマがエメラルドの都の宮殿から離れることがあまりないので、当たり前なのですが。オズ全土の支配者としてその責務を全うしようとしているオズマと、あくまでも普通の少女ドロシーの違いがはっきりと描かれていて、オズマに比べてドロシーは(考え方が)かなり幼く思えました。

 全体としてはきれいにまとまっていて、中だるみすることなく楽しめました。3人の<魔法の達人>たちのエピソードは、どれもおとぎ話らしくて好きです。潜水艇などの近代的な要素と伝統的なおとぎ話の要素がほどよく混ざっていたと思います。ただ、オズの住人たちの不思議で面白い会話はあまりなかったので、そこが少し残念でした。

 

 

 

 

  

オズの魔法くらべ

  オズシリーズ13作目。冒頭の作者のことばやあとがきに書かれていますが、作者のボームは病に冒されながら作品を執筆していたようです。

オズの魔法くらべ (ハヤカワ文庫NV)
 

 

ーあらすじー

 マンチキンの少年キキ・アルーはこっそり変身の魔法を盗み出し、国を飛び出してあちこちの国を渡ります。そしてエヴの国で元ノーム王のラゲドーと出会います。ラゲドーに唆されて、キキはオズへ攻め込む手伝いをすることにしたのです。

 そんなわけで、キキはラゲドーとともに<ごたまぜ・けもの>ラ=サ=ワ(ラゲドー命名)に変身して、ギリキンにある森のググ王(ヒョウ)を訪れます。ラゲドーはググにオズに攻め込むよう焚きつけます。

 その頃、オズマ姫のバースデープレゼントとして、トロットは魔法の島にある魔法の花を、ドロシーはサルを10匹ほど手に入れようと考えていました。トロットはキャプテンビルとともに、ガラスのネコの案内で魔法の島へと向かいます。一方、ドロシーは魔法使いとともに、臆病ライオンと腹ぺこタイガーに乗ってギリキンの森へと向かいます。

 なんとか魔法の島へとたどり着いたトロット達は、ここで思わぬ災難に遭います。トロットとキャプテン・ビルの足から根が生えて島から離れられなくなってしまったのです。ガラスのネコは助けを呼びにオズの宮殿へ戻ります。

 ググの森へやって来たドロシー達はググ王に会って、サルを貸してほしいと頼みます。その様子を見て動揺したキキは魔法を使ってドロシー達だけでなく、ググ王まで違った姿へと変身させます。その後、魔法使いがキキの魔法を盗み聞いて元の姿に戻り、キキとラゲドーを木の実に変えてしまいました。そしてググとの交渉の末、ドロシー達はサルを借りることができました。

 ドロシー達を追って来たガラスのネコに話を聞いたドロシー達は、トロット達を助けに行きます。無事島から離れることができたトロットたちは、<魔法の花>を手に入れることができました。

 エメラルドの都の宮殿ではオズマのパーティーが盛大に催され、トロットやドロシーのプレゼントも各々のプレゼントを贈ったのでした。そして、彼らの冒険談を聞いたオズマは、木の実となった彼らを元の姿に戻すよう告げます。元の姿に戻ったキキとラゲドーは<忘却の水>を飲んで、すべてを忘れてしまったのでした。

 

ー登場人物ー

ドロシー:主人公。行動力があり機転が利く女の子。

トロット:ドロシーの友人。まっすぐな性格。

魔法使い:ドロシーとは古い付き合いの友人。数々の冒険を共にしてきた。陽気な老人で、様々な魔法を使うことができる。

キャプテン・ビル:トロットの親友。片足が義足の年老いた船乗り。温厚で冷静な大人。

臆病ライオン:穏やかで優しいライオン。

腹ぺこタイガー:良心をもっているため常に飢えている。

ガラスのネコ:ガラスでできた美しいネコ。ピンクの脳とルビーの心臓を持っていて、うぬぼれが強く冷たい性格。おだてに弱い。ものすごいスピードで世界のあちこちを駆け回っている。

グリンダ:最高位の魔法使い。美しい大人の女性。

キキ・アルー:父親が優秀な魔術師のマンチキンの少年。根性悪で小心者だが、頭は良くないため一人で何かができるわけではない。警戒心は強い。

ラゲドー:元ノーム王。オズの国への強い憎しみを持つ。弁の立つ策略家だが、思慮の浅さと気の短さが災いしてうまくいかない。

ググ:ググの森の支配者。冷静で公正な判断をする。クマ、灰色類人猿、ユニコーンの3頭が相談役。

ひとりぼっちのアヒル:色とりどりの羽毛を身にまとう孤高のアヒル。魔術が使える。

 

 

ーその他ー

☆ガラスのネコ

 「オズのつぎはぎ娘」のラストで、魔法使いが<ピンクの脳>から<透明の脳>に入れ替えて、つつましく行儀のよいネコになったはずだったのでは…?明らかに性格が以前より悪くなっている上に、こんなに行動的ではなかった気がする。

☆オズの国での外の世界から来た人たち

  永遠に生きることができるか、病気にかからないのかは今のところ不明。オズマでさえわからないらしいので、ドロシー達はとりあえず注意深く守られる。

☆グリンダの魔法の本

 オズの国の“人々”が何事かをすると本に書き込まれる。鳥やけものが何かをしても書き記されない。

 ☆ラ=サ=ワ

 ライオンの頭と、サルの体と、ワシの翼と、先っぽに金の球飾りのついたロバのしっぽを持つ<ごたまぜ・けもの>。

ー感想ー

 前作「オズの消えたプリンセス」の方が「魔法くらべ」だった気もしますが…。それはともかく、今回もドロシーが主人公の「オズの国」でのお話です。

 見どころとしては、まずは悪役でお馴染みのラゲドー。国を追い出されたようです。カリコに追い出されたのか、ラゲドーが自ら出ていったのかは分かりませんが。本当に懲りない人です。

 トロットとキャプテン・ビル、ドロシーと魔法使い、といった2組の少女とおじさん(老人?)コンビが冒険に出るわけですが、それぞれに個性があって面白かったです。キャプテン・ビルはどっちかというとトロットの保護者っぽいですが、魔法使いはドロシーの相棒といった感じです。

 ガラスのネコは存在を忘れかけていたので、こんなに活躍するとは思っていませんでした。やや「つぎはぎ娘」の頃とはキャラクターが変わっていますが、やはりユリカとは相性が悪いようです。

 興味深かったのはググの森のけものたちです。ググは王としてけもの達を治めています。このググ王は支配者というより統治者と言った印象でした。相談役の3頭は個性的で、ユニコーンが単純で好戦的な性格であるのに対し、クマは慎重で保守的、灰色類人猿は平和主義者。争いごとが起きれば、それに対する罰を協議して決定します。また、オズに攻め込むといった重要な決定には森のけもの全員を参加させて、それぞれが自分で考えて答えを出すよう言い渡します。最終的な判断はググが下すのでしょうが、かなり民主的だと思いました。独裁的なオズ(ググの森もオズの一部だが、オズの支配からは独立していてお互い不干渉みたい)とは対照的です。けもの達のほうが民主的というのがなんだか面白いです。そもそも民主的な国って今までに登場しなかった気がします。

 今回オズシリーズとしては目立った特色がなかったように思います。オズマの誕生日プレゼントを手に入れる冒険の裏側でラゲドーがオズへの復讐を企て、最後は忘却の水を飲んですべてを忘れる流れは「オズのエメラルドの都」と似ていました。「エメラルドの都」に比べて、危機感がなくほのぼのとしていますが。ラゲドーとキキは初めからお互いをまったく信用しておらず、いつか出し抜いてやろうと考えています。そんな信頼関係のなさから、計画自体が失敗に終わります(このあたりのラゲドーとキキのやり取りは面白いです)。ラゲドーと違い、キキの中途半端さは大それたことをやるのに向いてなかったのでしょう。何も分からないうちにすべてを失ったと思うとちょっと憐れ。ドロシー達もわけがわからなかったでしょうが。

 誕生日パーティーに数多くのキャラクターが集まってオズマを祝う場面は、とても華やかで楽しいものでした。本当にレギュラーというか、オズに住んでいるキャラクターはほとんど登場していました。スクラップスがグリンダの隣、というのが可笑しかったです。こういう場面ってイラストが見たいなあ。

オズの消えたプリンセス

 オズシリーズ12作目。今回は久し振りに“オズ”です。ドロシーが大活躍でした。

 

オズの消えたプリンセス (ハヤカワ文庫NV)

オズの消えたプリンセス (ハヤカワ文庫NV)

 

 

 

ーあらすじー

 ある日オズマが忽然と姿を消します。そして、オズマの部屋からは<魔法の絵>も。それどころか、グリンダの<魔法の本>やその他の魔法の道具や薬、魔法使いの魔法の道具一式が入ったかばんも、何もかもが無くなっていたのです。

 そんな一大事にとあって、さっそくオズマ捜索隊が組まれ、それぞれ各方面へと出発します。ドロシーは、ベッツィ、トロット、魔法使い、ボタン・ブライト、スクラップス、臆病ライオン、ハンク、木挽き台の馬、ウージイとウィンキーへ探しに行くことにしました。途中でこっそりついて来たトトも合流します。

 その頃、ウィンキーの国のはずれに住むクッキー職人のケーキの大切な洗い桶もなくなっていました。ケーキは国で一番の知恵者(と思われている)カエルマンとともに洗い桶探しの旅に出ます。

 ドロシー達はウィンキーの未開の土地を進みながらオズマの行方を探します。なかなか手掛かりが見つからない中、ハークの都でドロシー達は有力な情報を得ます。以前ハークには靴職人のウグという魔術師がいたそうなのです。この人物がオズマや魔法の道具の数々を盗んだに違いないと考えた一行は、ウグのもとへと向かうことにしました。

 一方、カエルマンとケーキはクマ・センターの王ラベンダー・グマとピンクのコグマのおかげで、探している洗い桶は靴職人ウグが持ち去ったことが分かります。ケーキの必死の頼みで、ウグのもとへ行くのにクマ王とピンクのコグマが同行してくれることになりました。

 そして、ウグの城へ向かうドロシー達とカエルマン達がとうとう鉢合わせました。お互いの事情を話し合った上で、両者は協力することにしたのです。

 妨害に遭いながらも何とかウグのもとに乗り込んだ一行でしたが、またもやウグの魔法で危機に陥ります。ドロシーが魔法のベルトを使ってこの危機から脱すると、さらにドロシーは魔法のベルトの力でウグをハトに変えます。ところが、ハトに変身したウグは、ケーキの洗い桶を使って逃げてしまいます。

 ピンクのコグマのおかげでオズマも見つかり、奪われた魔法とウグの魔法の道具のすべてを持って、一行はようやくエメラルドの都への帰還を果たします。洗い桶は、かかしと木樵りが偶然手に入れて持ち帰ってきました。ウグはというと、心を入れ替えてハトのままで生きていく決意をしたのでした。

 

ー登場人物ー

ドロシー:主人公。カンサス出身。オズマの親友でオズの王女。数々の冒険を経験しているだけあって、ちょっとやそっとのことでは動じないしっかり者。

ベッツィオクラホマ出身。ドロシーより1つ年上。

トロット:カリフォルニア出身。ドロシーより1つ年下。

オズマ:みんなに慕われるオズの支配者。たいへん美しい妖精の少女。

グリンダ:オズマに仕える<よい魔女>。膨大な魔法の知識を持つ。

魔法使いオマハ出身。グリンダとともにオズの国で魔法を使うことが許されている。

ボタン・ブライトフィラデルフィア出身。しょっちゅう迷子になっている。

スクラップス:自由奔放なつぎはぎ娘(パッチワークの人形)。実は頭が良い。

トト:ドロシーの愛犬。今回は普通に喋っている。自己主張が強い。

臆病ライオン:自分で臆病だと思い込んでいるライオン。穏やかで優しく思慮深いが、トトに対しては結構ドライ。

木挽き台の馬:オズマの愛馬(?)。シリーズ通して大活躍。冷静。

ハンク:ベッツィの親友のロバ。気が短くて愚かなところがある。

ウージイ:四角い箱の集合体のような不思議な生き物。スクラップスと仲がいい。

カエルマン:高慢で野心家のカエル。<真実の池>に入ってしまい、本当のことしか言えなくなった。

ケーキ:イップ人のクッキー職人。代々受け継がれている洗い桶がなければ美味しいクッキーが焼けないらしい。洗い桶が最優先事項。清々しいくらい自分のことしか考えていない(でも憎めない)。カエルマンとはいいコンビ。

ラベンダー・グマ(クマ王):クマ・センターを治めている。王笏で見たいものの幻を映すことができる。

ピンクのコグマ:ネジを巻くと喋る。過去に起きた事実なら何でも教えてくれる。

ウグ:元々ハークの都に住んでいた靴職人。魔術師だった曾祖父の資料を研究して魔術の腕を上げた。

かかしとブリキの木樵り:親友同士。お互い生身でないこともあって、とても気が合う。

 

ーその他ー

☆オズの国の住人と外の世界の住人

 オズの住人は原則不老不死。病気にもかからない。実際、オジョが「ぼくをやっつけてしまうことはできないよ」と言っている。一方、魔法使いによると「わしらは自分たちで気をつけなくては」と言っているので、外から来た者は年は取らないが死なないわけではないらしい。

☆魔法のベルト

 ノーム王から取り上げたもの。使い方さえわかれば色々できるらしい。ドロシーが知っていることは、身に着けている者の身を守ってくれること、1日に1つ願いをかなえてくれること、変身させること(たぶん無制限)。

☆トロットの指輪

 海で困ったことがあれば人魚を呼んで助けてもらえる。

☆ケーキの洗い桶

 宝石をちりばめた黄金の洗い桶。呪文を唱えると大きくなってオズの好きなところへ移動することができる。

☆オズマ捜索隊

*グリンダが指名。何とも微妙なグループ分け。キャプテン・ビルは留守番。

マンチキン

 オジョ、ナンキーおじさん、ピプト博士

 → 馴染みの国だから(確かに。危険には向かない)

■カドリング

 かかし、ブリキの木樵り

 → 勇敢で疲れ知らずだから(ウィンキーではないのか)

■ギリキン

 モジャボロ、モジャボロの弟、チクタク、カボチャ頭のジャック

 → 危険がいっぱいだから(…??モジャボロ兄弟は外の世界出身だけど大丈夫?)

■ウィンキー

 ドロシー、あとはおまかせ(あらすじ参照)

 → (カドリングの方が危ないからというグリンダの配慮だろうか)

☆色々な国

■イップの国

 ウィンキーのはずれにある台地にある国。イバラの茂みで囲まれている。

■アザミ族の住む都

 幻の石壁に囲まれた都。身体の中が純金で内張りされていてアザミを食べる一族が住む。長はココ=ローラム。機械仕掛けのドラゴン型チャリオットが自慢。

■ハークの都

 巨人たちを従える痩せっぽちのハーク人が住む。ハーク人はゾソーゾという薬を飲んで大変な力持ちになっている。

■クマ・センター

  ぬいぐるみ(たぶん)のクマたちが住んでいる。

 

-感想ー

 「オズのエメラルドの都」以来、久し振りにエメラルドの都が物語の中心となっています。主人公もドロシーです。その他、ベッツィやトロット、魔法使い、ボタン・ブライト、スクラップスなどが登場して、かなり豪華な顔ぶれとなっています。今回は、冒険物語というよりはサスペンスに満ちた物語でした。国の中心で起きた大事件(オズマの行方不明と魔法道具の消失)と国のはずれで起きた小さな事件(クッキー職人の洗い桶紛失)という、一見何の関係もなさそうな2つの出来事。それぞれの視点で物語が進んで行って合流する展開は、わくわくしました。また、敵の正体が途中まで明かされなかったり、オズマの居場所のヒントが出されていたりと、先が気になる展開となっていました。

 久し振りにドロシーが活躍したのも嬉しかったのですが、それ以上に臆病ライオンがメインで登場してくれたのが嬉しかったです。「オズの魔法使い」のメインキャラクターの中で一番影が薄いライオン。かかしやブリキの木樵りの強い個性に押されていまいちぱっとしない印象でしたが、今回はしっかりとスポットライトが当たっていました。トトがライオンに相談(?)しても、返答が辛辣です。「悩むのは勝手だけど、ボクには関係のないことだ。巻き込まないでくれ」ーみたいな感じで。人生経験豊かな大人と子どもの会話みたい。トトは幼いイメージ。臆病ライオンだけでなく、トト、ハンク、ウージイ、木挽き台の馬といった人間以外のキャラクターの会話が多いのが楽しかったです。かかしとブリキの木樵りは本当に仲良しで、会話もほのぼのとしていました。

 興味深い会話と言えば、スクラップスがカエルマンに「洗い桶なら別のものを使えばいいじゃない」みたいなことを言った時の返答として、カエルマンは「なぜきみたちは別の支配者を立てないのか。いなくなった人の方がいいからだろう。それと同じで(ケーキは)自分の洗い桶がいいんだ」と言います。それ以前にドロシー達がハークの大皇帝から「あなたたちが賢明なら国のために新しい支配者を選ぶだろう」との忠告を受ける場面があったので、なおカエルマンの言葉が重く感じられました。ちなみに、トトもなぜか大切なうなり声を失います。こちらはまったく気に留められていませんでしたが。

 悪役として登場したウグは、ハークの大皇帝が言うように「厳密な意味での悪党ではない」です。野望自体が悪意から生まれたわけではなく、目的を達成する手段が悪事だということで。どっちにしろ、たいそう迷惑な悪党でした。ハトになって反省して、元の姿に戻ることを自ら拒否したところは、今までの悪役との大きな違いだと思います。

 それよりいつも思うことですが、オズ(というよりはエメラルドの都)の危機管理意識ってものすごく低いです。警備がザル。しかも、オズの支配者といっても、支配されていることすら知らない者たちの多いこと。原則性善説によって成り立っているオズの世界は、危険に対する防衛手段をほとんど講じていません。いろんな意味で大丈夫じゃない気がします…。

 読んだのが昔すぎて、ほとんど覚えていない中で、今回は珍しく「洗い桶」と「ハト」だけは記憶にありました。ドロシーがへウグを<平和のハト>ではなく<ハト>に変身させたところはものすごく印象的だったのでしょう。ここだけはちゃんと覚えてました。それにしても黄金で宝石が散りばめられた洗い桶って、めちゃくちゃ重そう…。調理器具でもないのに、なんでこれがあったらクッキーがうまく焼けるのか。