びんのなか

想い出話や感想文など。読書メモが多め。ネタバレだらけです。

こわれた腕環(ゲド戦記2)

 前作で出てきた腕環の物語。

 かなり前に読み終わっていました。色々あって、書いている途中で中断していました…。

 

 

■ あらすじ

 テナーは6歳の時に<アルハ>の名を授かり、カルガド帝国にあるアチュアンの墓所で名なき者たちに仕える大巫女として育てられる。そこは外部との接触のない隔絶された世界で、他の巫女見習いの少女たちとの生活を送ることになる。アルハの教育係はコシルとサーという位の高い巫女だった。そして付き人としてマナンが傍らに仕えている。

 アルハが15歳になった時、コシルから玉座の神殿の地下を案内される。大巫女の役割には、帝国から送られた囚人の処刑も含まれていた。アルハはなんとか役割を果たすが、体調を崩してしまう。

 神殿の地下には大迷宮があり、そこは大巫女だけが自由に行き来できる世界だった。回復したアルハは、迷宮を探索していく。サーから彼女が知る限りの大迷宮についての情報を教えてもらっていた。サーはまた、エレス・アクベの割れたお守りについても語る。割れた片方は神殿の地下の宝庫にあり、もう片方は行方不明だという。そして、幾度となく宝庫に眠る片割れを狙う者たちが墓に侵入しようとしたという。侵入者の中には<魔法使い>もいて、彼らは不思議な術を使うという。

 サーが死んでしまった後、アルハはコシルと二人でこの地を取仕切ることになる。権力欲が強いコシルを避けるアルハは、迷宮だけでなく神殿の探索に熱中するようになった。

 ある時、地下道を歩くアルハはそこにいるはずのない男の存在を目撃する。彼女は男がエレス・アクベのお守りを奪いに来た魔法使いに違いないと確信する。唯一の出入り口は外側からしか開かない仕掛けになっているため、その男は逃げることができず地下迷宮に閉じ込められた状態となる。アルハは男の姿が確認できなくなった不安から、ついコシルに彼の存在を打ち明けてしまう。アルハはその男に強い関心を持っていた。

 結局アルハは男を捕えて、壁画の間に拘束する。本来殺さなければならない相手であるが、アルハは男の生を願っていた。彼はハイタカといって、やはり魔法使いであった。アルハとハイタカの距離は縮まっていき、彼は彼女に“テナー”の名を戻す。

 ハイタカの目的は、彼が所持するエレス・アクベの環の片割れの残り半分を見つけて一つに戻すことだった。彼はテナーに本名“ゲド”を名乗り、二人は強い信頼関係を結ぶ。テナーはアルハを捨て、テナーとしてゲドとともに行くことを選んだのだ。エレス・アクベの環は一つとなった。

 途中ゲドに襲い掛かってきたマナンを死なせたり、迷ったりしながらも何とか二人は地下迷宮を脱出する。闇の怒りを鎮まり、墓は大地に沈んだ。

 アチュアンの墓所を後にした二人はハブナーを目指して旅をする。テナーはゲドがずっと彼女の側にいてくれるわけでないことを知り、失望に近い感情を覚える。再び闇に囚われかけたテナーだったが、今度こそ本当に開放され自由を手にする。そして、テナーはゲドの恩師オジオンが住むゴントへ行くことを決める。

 二人がハブナーに着いて、物語は終わる。

 

 あらすじ書くのが難しい…。雰囲気だけでも伝わればいいのですが…。

 要約すると、<アチュアンの墓所>の大巫女アルハが、迷宮で出会ったゲドと心を通わせて本当の自分を取り戻し、エレス・アクベの環が一つに戻った話です。

 

■ 登場人物

▪ テナー(アルハ)

 今作の主人公で、アチュアンの墓所で名なき者たちに仕える大巫女。地下迷宮の道を覚えられるくらいなので、かなり頭が良いと思われる。外界との接触を断たれた生活を送っていたためか、かなりの世間知らず。自分の中に芽生えた感情に動揺している。年齢は16~17歳くらい?

▪ ゲド(ハイタカ

 アチュアンの墓所にエレス・アクベの環の片割れを求めて侵入してきた魔法使い。彼の力を以てしても、墓所に眠る古代の精霊たちの力に対抗するのは困難だったようだ。年齢は20代半ばくらい?30歳にはなっていないと思う。

▪ マナン

 アルハの付き人。アルハのことを可愛がっており、絶対的に服従していた。アルハもまた、マナンに対して気を許していた。

▪ サー

 双子の兄弟神に仕える第一巫女。背が高く痩せている。厳格で信仰心が厚い。彼女が病気となってからは、自身が知り得た帝国の内情をアルハに伝えていた。

▪ コシル

 大王の第一巫女。ものすごく太っている。冷酷な性格で、信仰心はまったくなく、権力にしか興味がない。アルハも彼女を恐れ、警戒していた。

▪ ペンセ

 アルハと同い年の巫女(見習い)。気安く話ができる間柄。

 

■ 世界観

▪ カルガド帝国

 4つの島からなる。大王はアワバスで帝国を支配している。強大な力を持っているらしい。

▪ エレス・アクベの環

 西国出身のエレス・アクベという魔法使いが、アワバスを支配下に治めようとやって来て、謀反を企んでいたカルガドの一部の領主たちと手を組んだ。双子の兄弟神の神殿の神官との戦いとなり、その中でインタシンという神官がエレス・アクベの魔法の杖を砕き、強力なお守りを真っ二つにした。お守りの片割れはインタシンが奪い、もう片方はエレス・アクベが逃げる前に、味方となった小国の王に手渡した。その後、その国は完全に滅亡させられ、お守りの行方はわからなくなった。(←前作でゲドが受け取っていた)

▪ アチュアンの墓所の大巫女

 大巫女が死ぬと、大巫女が死んだその日の夜に生まれた女の子が次の大巫女となる。女の子が健やかに五歳になると、神殿に連れて来られ一年間教育を受け、儀式を経た後“アルハ”(喰らわれし者)の名を得る。今までの名は<名なき者たち>の手に返される。

▪ 名なき者たち

 非常に強い闇の力を持つ地霊だと思われる。

 

■ 感想

 あちこち旅を続けた前作と違い、物語の大部分は墓所内で進んで行きます。迷宮の描写が複雑すぎて、想像力が追い付きませんでした。変化は少ないものの、続きがとにかく気になるため、どんどん読み進められました。特に、ゲドが登場してからは、テナーの心の動きがリアルだと思いました。その矛盾した行動に、年相応の少女らしさ(?)がよく出ていたと思います。出会った時から、彼女はゲドに強く魅かれていました。

 一方のゲドは、とても成熟した人間となっていました。まあ、あれだけ色々あったらそうなりますね。実際の年の差は不明ですが、なんか先生と生徒といった印象です。この二人は良きパートナーになりそうです。…が、前作に登場したノコギリソウはどうした、と思わずにはいられない。結構いい雰囲気だったのに。

 カルガド帝国の大王は話題に上がる程度で、実際には登場しません。エレス・アクベの環が一つとなり、今後どのように世界が平和になっていくのでしょうか。…というより、大王がこの事態を知ったらどうするつもりなんでしょう。

 

 今作はテナーが自身を縛るもの(闇)から「自立」し、自由を得る物語でした。それは、己の闇と向き合い、最終的に「自己」を確立したゲドの物語と通じるものがあります。どちらも、「自分探し」の旅だったと言えるかもしれません。

 ゲドは今回も大ピンチに救いの手があったわけで、本当に運がいいというか、人との縁に恵まれているなあと思いました。