びんのなか

想い出話や感想文など。読書メモが多め。ネタバレだらけです。

童話語り(3)白いオオカミ

 タイトルと全然関係ありませんが、白泉社の公式サイトを見たらコルダの新刊8月くらいに出るみたいです。そして、雑誌の新刊情報で「柚木編スタート」とありました。てっきり次の巻で終わると思っていたのでびっくりしました。もうちょっと続くのかな??

 それはともかく、ベヒシュタイン童話集です。DSの充電の合間に読んでいました。

 

 

 グリム童話のようにドイツの伝承が元になっているらしいです。こちらの方が創作っぽい感じがしました。

 

 ざっくりとしたあらすじと感想。あらすじが適当なので、是非ちゃんと読んでみてください;面白いです。

 

 

■ 白いオオカミ

 道に迷って困り果てた王様に、黒い小人は助ける代わりに「真っ先に迎えに出てきたものをよこせ」という条件を出す。王様は犬が出迎えると思っていたので、その条件を受け容れて道案内してもらう。ところが出迎えたのは王女だった。約束通り王女は小人の元へ行くことになり、白いオオカミが迎えに来てガラスの山を目指す。途中オオカミの言いつけを守らず王女が声を掛けたため、王女は振り落とされて道に迷う。王女は森のおばあさん、風、太陽、月にオオカミの行方を聞いて回る。その都度鳥のスープをごちそうになり、骨を拾い集めさせられるが一本拾い損ねる。オオカミの行方はわからなかったものの、ガラス山に着いた王女は、拾い集めた骨で梯子を作る。しかし、拾い損ねた一本分が足りなかったので自分の指を切り落として梯子を完成させて頂上に辿り着く。黒い小人の隣には既に別の花嫁がいたが、王女は自分に気付いてもらうよう竪琴を弾いて歌う。王女に気付いた小人は呪いが解けて元の王子の姿に戻る。隣にいた偽物の花嫁は消え失せ、二人は結婚した。

 

 絵本で読みたい。幻想的で美しいお話。だいぶ違うけど、きっと大元はグリム童話の「七わのからす」と同じじゃないかと思います。あちらは兄妹の話でしたが。王女が振り落とされた腹いせに城に戻った場合、どうなっていたのでしょう。王子は呪われたまま別の女性(?)と結婚させらただけだったのでしょうか。王や王女の身に何かが起こることもなかったのかな。そもそも王女がオオカミの言う通り、言葉を発しなかった場合はどうなっていたんだろう。この段階で王子が助かる見込みはなかったということ…??

 

■ もてなしのいい子牛のあたま

 三人兄弟の末っ子のハンスは甘やかされて育ったため、のほほんとした性格。旅に出る兄たちに付いて行こうとするが、置き去りにされる。困ったハンスが立ち寄った家にいたのは、ゆりかごで寝ている子牛のあたまだった。子牛のあたまはハンスを盛大にもてなす。ハンスは子牛のあたまとおしゃべりをしながら楽しい時間を過ごす。ある時、ハンスは家に帰りたくなり、子牛のあたまにそう告げると金品とともに快く送り出される。家に帰ったハンスは兄たちに金を盗られそうになるが返り討ちにする。ハンスは人間の醜さに嫌気がさして子牛のあたま元に戻る。帰ってきたハンスに、子牛のあたまは頭から胴体を切り落とすよう頼む。その胴体は黒ずんだ腸のような蛇で気味の悪いものであった。ハンスは子牛のあたまの願い通り、胴体を切り落とす。するとそこには魔法のとけた美しい姫がいた。ハンスと姫は結婚し幸せになった。

 

 ハンスは汚れない心の持ち主だったのでしょう。良くも悪くも世間知らず。きれいな心を持ったお姫さまにはぴったりでしょうが、普通の娘さんとは絶対うまくいかないと思います。

 

■ ねがい小枝をもった灰かぶり

 あるところにとても美しい娘がいて、金持ちの父は彼女を溺愛していた。そのため父は娘の欲しがるものを何でも手に入れてくれた。娘は父に、銀のドレス、金のドレス、ダイヤモンドのドレス、最後にねがい小枝をねだる。父は娘の願いを叶えてやったが、そのために財産どころか命をも失ってしまった。

 父を失ったものの、欲しいものをすべて手に入れた娘は王子と結婚することを目指す。彼女はカラスの羽根でできた上着を纏い、3着のドレスを持って小枝の力で王子の住む城に行く。そして男の子に姿を変え、料理版の下働きとなる。

 隣の国の3日間舞踏会があって、王子も出席することを知った娘は、自分も行かせてほしいと料理番の許可を得る。娘は小枝の力でその辺にあった石や虫や蛙を馬車に変え、自分はドレスを身に纏って舞踏会に参加する。美しい娘にすっかり心を奪われた王子は、彼女の行方が分からなくなったことに苛立つ。苛立った王子のために飲み物をだすことになり、娘はその中に舞踏会で王子にもらった指輪を入れる。指輪に気が付いた王子は、舞踏会で出会った美しい娘を見つけ出し結婚した。

 

 「灰かぶり」や「サンドリヨン」みたいな話かと思ったら、「千まい皮」「ろばの皮」の方でした。一部馬車の件はサンドリヨンでしたが。3作の中でもっとも性格の悪い主人公だと思います。小悪魔的っていうんでしょうかね…。

 

■ 魔法をならいたかった男の子

 リーデルは魔法を習いたくて、本物の魔女のばあさんについていく。ばあさんは魔法を教える気など更々なくて、フリーデルを食べようと考えていた。魔女の家にはリースヘンという従僕として仕える女の子がいた。彼女は幼い頃両親のところから攫われて、無理矢理魔法を教え込まれていた。フリーデルの容姿に心を奪われたリースヘンは彼を救うため、魔法を使って逃げ出す。二人が逃げ出したことに気付いた魔女が追って来るが、リースヘンの魔法が魔女に打ち勝ち、晴れて二人はいっしょになった。リースヘンがフリーデルに魔法を教えることはなかった。

 

 師匠と弟子の魔法くらべが面白いです。リースヘンの方が一枚上手でした。それにしても容姿って重要ですね。フリーデルがリースヘンの好みでなかったら、おそらく魔女の食事になっていたでしょう。

 

■ おふろにはいった王さま

 傲慢な王は、ある時聞いた聖書の一節にたいそう腹を立てて、その箇所を消し去るよう命ずる。神は王の無礼なおこないに対して罰を与えるため、天使を王の姿に変えて城に遣わす。

 風呂から上がった王は、神の力で天使を王だと思い込んだ人々によって、城から追い出される。なんとか城に戻った王だったが、今度は危険人物扱いされて家臣に襲われかける。天使によって助けられた王は、神の尊さを思い知り心を入れ替える。その後、王は己が消し去った聖書の一節を元に戻し、つつしみ深い王となった。

 

 神に対する敬意を忘れてはならない、というお話。神様云々は別としても、謙虚さは必要だと思います。

 

■ ウサギ番と王女

 金持ちの王には美しい王女がいた。ある時王女が結婚したいと思ったので、集まった求婚者たちに三つの難題を与える。一つ目の仕事を誰も成功させることが出来ない中、最後に順番が回ってきた羊飼いの青年もまた困り果てる。そんな時おばあさんが現れ、青年を励まして笛を与える。青年は笛のおかげで王と王女の妨害に遭いながらも仕事を成功させる。青年は求婚者の中で最も身分が低かったため、王たちは青年の成功を快く思っていなかったのだ。そして、青年は二つ目、三つ目の仕事も笛の力で成功させる。羊飼いの青年を婿として迎えたくない王と王女は、青年に袋の中を嘘でいっぱいにするよう言う。とうとう嘘のネタが尽きてしまった青年は、王と王女の恥ずかしい話を暴露しようとする。王は慌てて王女との結婚を認め、青年と王女は結婚した

 

 童話って、こういう結婚相手探し多いですね。国の存亡に関わることをこんなリスキーな方法を使って大丈夫なんだろうか…。一番の被害者は王女だと思います。いちおう青年の容姿は整っていたようですが、本当によかったのでしょうか…。

 

■ 魔法つかいのたたかい

 本づくり職人の青年が、放浪の末無一文になったため求職していたところ、とある親方に雇われる。親方から与えられた仕事はとても簡単だったが、ある一冊の本だけは絶対に触れないよう命じられていた。

 ある時親方が出掛けることになって、その間に青年は禁じられていた本を読んでしまう。その本には魔法の使い方が書かれてあって、青年は魔法を使えるようになった。

 実家に帰った青年は、手に入れた魔法の力で父の協力を得て金儲け(詐欺)をする。しかし青年の裏切りに気付いた親方(魔法使い)が追って来る。青年は魔法の力で返り討ちにし、逃げている途中で出会ったお姫さまに結婚を迫る。お姫さまは魔法を使わないことを条件に青年と結婚する。青年はお姫さまの願い通り、魔法を使うことをやめて本を焼いた。

 

 この主人公クズ過ぎです。(いちおう)世話になった親方との約束を破って、魔法の力を手に入れる→魔法を使って詐欺で金儲け→追ってきた親方を殺す。しかも最後は指輪になって勝手にお姫さまの指にはまっただけなのに、指輪をはめてもらったので婚約してもらって嬉しいと言って、なぜか婚約成立させているんです。ハッピーエンドとして描かれていますが、ものすごく微妙な気分になります。

 

■ ウサギとキツネ

 お腹をすかせたウサギとキツネがいて、そこにパンを持った娘が通りがかる。そこで、二匹は協力してパンを手に入れようと考える。娘が死んだふりをしたウサギに気を取られている間に、キツネがパンを持ち去ったのだ。ウサギも起きてキツネを追うが、キツネはパンを独り占めしようとする。腹を立てたウサギはキツネを言いくるめて、凍りかけている池で魚釣りさせる。池が凍って、しっぽを入れたままキツネは動けなくなり、その間にウサギはパンを食べてしまった。

 

 他人を騙してはいけない。教訓的なお話。ウサギはキツネに「春が来るまで待ってろ」と言いますが、恐らくそれまでに凍死が餓死すると思います。

 

■ 七枚の皮

 ある金持ちの殿さまがいて、彼は妻をそこまで愛してはおらず、常に妻に対して暴言を吐いていた。それで罰が当たったのか、二人の間に漸く生まれた子どもはヘビだった。夫の激しい怒りを買った奥方は、息子とともに離れでの生活を送ることになる。20年後、ヘビは母に結婚したいから花嫁を探してほしいと頼む。奥方は困ったものの、息子のために花嫁探しを始めるが、当然のことながら相手から断られ続けた。そして、奥方はニワトリ番の娘のことを思い出し、彼女に頼み込む。一晩考える時間を貰った娘のところに天使が現れ、ヘビを魔法から救って結婚するよう助言する。娘が結婚することを受け入れたので、結婚式が執り行われる。その夜、娘はヘビに脱ぐよう言われるが、「あなたがおぬぎなさい」と返す。このやり取りを繰り返す度にヘビは脱皮していき、七回目で魔法が解けて美しい若者の姿になった。殿さまも喜んで息子を迎え入れ、奥方とも仲直りした。

 

 息子に魔法をかけたのは誰なのでしょう…。神様が殿さまに罰を与えたのではなさそうですね。殿さまは結局反省してないし、きっと自分の悪いところなんて、全く気付いてなさそうです。今後殿さまがモラハラしないことを祈るばかりです。

 

■ 明月

 とてもりっぱなバルコニーのある家に住んでいる男がいた。ある夏の夜、男が目を覚ますと、バルコニーにたくさんの美しい女たちが集まってパーティーを開いていた。男が彼女たちに混ぜてもらおうと挨拶すると、女たちは男を招き入れる。男は会話を楽しみながら、出された食べ物を口にする。食べ物が口に合わなかったため、男は「塩をお願いできますか」と声を掛けた。その途端、女たちは猫の姿となって散り散りに逃げて行った。この日は男が飼っている猫の誕生日で、近所の猫たちと集まって祝っていたのだ。担がれたと思って腹を立てた男が棒で殴ろうとしたため、彼の猫はどこかへ逃げ去り二度と帰って来なかった。男がこの夜のことを友人たちに繰り返し話したので、友人たちは面白がって彼にあだ名をつけて揶揄った。

 

 気の短い人です。人によったら十分楽しめただろうに、勿体ないことをしたなあと思います。飼い猫もかわいそう。きっと主人を慕っていただろうに。

 

 

 生きていく上で大切なこと、それは「頭を使うこと」と「容姿の美しさ」という印象が強かったです。この童話集、あまり人柄の良さは重要視されていないと思いました。気立てが良くて健気な主人公って、表題作の「白いオオカミ」くらいでしょうか。ストーリー展開そのものより、登場人物の個性が光る童話集でした。

 お付き合いいただきありがとうございました。