びんのなか

想い出話や感想文など。読書メモが多め。ネタバレだらけです。

オズのチクタク

 オズシリーズ8作目。アメリカの少女ベッツィが登場。

 

 

ーあらすじー

 オズの片隅にある小さな国ウーガブーの女王アンは、ある日オズの国を征服しようと軍を立ち上げます。しかし、グリンダの魔法によってオズの外の国をさまようのです。

 その頃、ベッツィ・ボビンはロバのハンクとともに難破して荒海を漂っていました。そして気が付くと、バラの花の人間たちが住むバラ王国へとたどり着いていたのです。そこで行方不明の弟を探しているというモジャボロに出会います。彼らはバラ王国の人たちが望まない「女王」を摘み取ったことで、<バラの花>たちの怒りを買って王女ともども追放されてしまいました。

 バラ王国を追い出された後、ベッツィたち一行に、虹からはぐれてしまった虹の娘ポリクローム、オズマに遣わされたチクタクが加わります。チクタクによるとモジャボロの弟は地底の王ラゲドー(=ノーム王)に捕らえられているようです。そんなわけでノーム王を目指すことにしたベッツィたちは、その後アンたちの軍隊とも合流します。

 その様子を見ていたラゲドーの魔法でベッツィたちは<地中トンネル>へ落とされてしまいました。行きついた先は妖精たちの国で、支配者チチチ‐フーチューにより若龍クオックスを伴って送り返されることになります。チチチ‐フーチューはクオックスにラゲドーに罰を与えることを命じました。

 ラゲドーはクオックスにより魔法の力を取り上げられ、王座も剥奪されました。そして新たな王となった侍従長カリコの協力もあり、探していたモジャボロの弟とようやく再会できたのです。

 旅の目的を終えた一行はそれぞれの場所へと帰ります。ポリクロームは空へ、アンはウーガブーへ。ベッツィ、ハンク、モジャボロ兄弟はオズマによってオズの国へ迎えられるのでした。

 

ー登場人物ー

いつも通り多いです。適当に割愛しています。

ベッツィ・ボビン:活発で気の強い女の子。元の世界に帰りたいとは全く思っていないよう。オクラホマ出身。

ハンク:乱暴者のロバ。ベッツィの大切な友だち。

モジャボロ:自由気ままな旅人。弟探しにあたってオズマから<愛の磁石>を持っていくことを許された。

ポリクローム:とても美しい虹の妖精。今回もうっかり地上へ取り残されてしまう。

チクタク:モジャボロを手伝うためにオズマに遣わされたロボット。タイトルにもなっているのに、ほとんど活躍していない。

モジャボロの弟:本名不明。ラゲドーにより<醜い男>にされてしまった。本人曰く元はかなりのハンサムだったらしい。やや自意識過剰。

オズガ:バラの王女。バラの王国の住人は男性の支配者を求めていたが、オズガが女性であったことから追放される。優しくて穏やかな性格。

アン:狭い田舎の国での生活に飽き飽きして世界征服をもくろむ女王。わがままで世間知らず。故郷で生きる幸せに気付き、(オズマにより)みんなで帰還する。「オズの虹の国」で登場したジンジャー将軍を彷彿させる。

ヤスリのジョー:ウーガブーの軍隊で唯一の兵卒(=実戦する一般兵)。頭が切れる野心家で、「戦争と虐殺がなにより好き」などと宣う危険人物。…と思いきや、バラの王女に一目惚れしてあっさり翻意する。

○○のジョー:ウーガブーの将校たち。

ラゲドー:ノーム王。旧ロークワット。何故か名前が変わっている。すべてを忘れたはずだが、どういうわけか悪党度がパワーアップしている。

カリコ侍従長。旧執事長。この人は有能でまとも。ノーム王となる。

ガフ:将軍。この人はきっと悪い心を忘れたままだったのだろう。

チチチ‐フーチュー:別名偉大なるジンジン。<ふつうの市民>。妖精の国の絶大な力を持つ支配者。おとぎの国の住民たちの間でもその名を轟かせ、畏れられている。<ふつうの市民>というのは、人間に何かしらの恩恵を与える義務を持たない妖精、ということ。心を持たず知性と正義感をもっており、悪事を働けば公平に裁き、厳格な罰を与える。

クオックス:ノーム王討伐を命じられた気のいい若龍。若いため老龍の話をうっとおしく思っている。ノーム王討伐自体が彼にとっての罰となっているらしい。

オズマ:密かにベッツィたちを見守っていた。彼女の世界はドロシー中心に回っている気がする。

ドロシー:オズマのよき相談相手。とても重要な役割を果たした。

魔法使い:いつもオズマの傍らにいる魔法使い。グリンダの弟子。

グリンダ:強大な力を持つ王室付の魔女。

 

ーその他ー

☆オズの国の知名度

 密かなおとぎの国だと思っていたらベッツィはオズの国のことも、オズマやドロシーのことも知っていた。…なぜ!?

☆モジャボロとポリクローム

 「オズへつづく道」でドロシーとともに旅をしていたはずなのに、めちゃくちゃ初対面っぽかった。

☆ノーム王(ラゲドー)の魔法

 以前は魔法のベルトを失ったために魔法が使えなくなっていたが、魔法のベルトなしでも色々な魔法を使えていたようだ。

☆トトのお喋り

 ずっと謎だったトトが喋れない理由。…喋れないふりをしていたらしい。さすがにハンクまで喋りだすと、トトが喋らない理由が見当たらないので仕方がないのかも。ちなみにハンクはオズへ来てから言葉を話すようになった。なので、「おとぎの国」ではなく「オズの国」に来ることで動物でも話せるようになる…(ビリーナが辿り着いたのはエヴの国だけど)。

☆魔法のベルト

 今回存在すら登場せず。今までオズマがベルトを使って移動させていたが、そういった描写は一切なし。チクタクはグリンダの魔法で移動、モジャボロたちは魔法使いの魔法で移動。万能な分、回数制限でもあったのか。

☆ベッツィのこと

 「帰る家がない」ということから、もともと両親がいなかったのか。船の事故で死亡したのかとも思ったが、それならベッツィがもうちょっと悲しんでいてもいいはずなので。元の世界に帰りたいと願ったりしていないし、独りぼっちだったのかもしれない。

 

ー感想ー

 タイトルが内容とほぼ関係なかった気がします。チクタクは登場したのですが、存在自体を忘れそうになるレベルで影が薄かったです。他の登場人物の存在感がありすぎ。

 アンという女の子は、田舎での退屈な日常にうんざりして外の世界へと攻撃的な目的を持って飛び出します。彼女は浅はかで、やることなすことうまくいきません。結局うんざりしていたはずの日常が恋しくなって故郷に帰るところなんか、まさしく家出娘です。それでも以前登場したジンジャー将軍に比べると、可愛げがあったように思います。それより気になったのはヤスリのジョー。彼の路線変更にまったくついていけませんでした。好戦的な危険人物→愛する姫を守る騎士…ものすごい変わりようです。

 三度目の登場となったノーム王ですが、この人どんどん悪党になっていってます。その分、すべてを失ってさまよいカリコに保護された時は本当に憐れでした。

 あと、この物語において一番存在感があった(と思う)チチチ-フーチュー。心を持たず公平に裁く絶対的な存在として、おとぎの国の住人達に畏れられている彼は神様のようでした。

 どちらかというとキャラクターの存在感が強すぎて物語の印象が薄かったです。物語としては、[アンが世界征服を目指す旅に出た]+[モジャボロが弟を探している]→[悪党として立ちはだかるノーム王と対決]といったところなのですが。モジャボロの弟探しが本来の旅の目的のはずなのに、ここがいまいち(私にとって)どうでも良かったから…なのかもしれません。この、モジャボロの弟の気弱で自意識過剰気味というぼんやりとした個性のせいか、感動の再会もいまいち盛り上がらず。

 モジャボロの弟がオズに来ることができたのは偏にドロシーのおかげです。ベッツィとハンクについてはドロシーだけでなくオズマも気に入っていたので問題なし。ところが、モジャボロの弟については2人とも本当に興味がなさそうでした。オズマに至っては、彼について「わたしに何も要求する権利はない」と言っています。ただ、弟を残してモジャボロ、ベッツィ、ハンクをオズに呼ぶわけにはいかず、ドロシーがモジャボロを失いたくないと最後の一押しをしたこともあり、なんとかモジャボロの弟も迎えられました。「オズは困っている人たちすべての避難所ではないのですよ」と言いながら。さすがにオズマは支配者として移民問題には慎重でした。たしかに、ドロシーが言うように「オズの国は混みあってはいない」からといって、何でもかんでも移民を受け入れていたら国が立ち行かなくなるでしょう。だからこそ、オズマが言うように「移住を要求できるだけの理由」がないと受け入れるわけにはいかないのです。…ベッツィとハンクが持つ理由が「みんなと仲良くできそう」「一緒にいたら楽しそう」という極めて曖昧で個人的な感情によるものでなければ、説得力があったのですが。

  たぶん今作の見どころは「ベッツィの登場」と「トトが喋った」この2点に尽きると思います。意地でも喋ろうとしないトトのこだわり(?)がすごい。あと、木挽き台の馬、ライオン、ハンクが、それぞれ自分たちの大好きなオズマ、ドロシー、ベッツィがいかに素晴らしい女の子であるかを張り合うところは微笑ましかったです。みんなかわいい。個人的にはオズマと木挽き台の馬の組み合わせが好き。

 魔法使いが本当の大魔法使いに近づいていってるのが個人的には嬉しかったです。ドロシー→オズマの親友兼相談役、魔法使い→オズマの大臣とか側近みたいな感じでした。

 

オズのつぎはぎ娘

 オズシリーズ7作目。表紙絵を見てもわかると思いますが、見どころはかかしのロマンス。

 

 

 

ーあらすじー

 オズの寂れた処にナンキーおじさんと一緒に住んでいた少年オジョ。オジョはおじさんと魔術師のピプト博士の家を訪れます。ピプト博士は<いのちの粉>の発明者で、妻のマーゴロットのためにパッチワークキルトの人形(=ツギハギ娘)に命を与えて召使を作ってやろうとしていました。ピプト博士の家には他にも<いのちの粉>で生命を与えられたガラスのネコ、バングルがいます。ところがツギハギ娘に命を与える際ハプニングが起きて、ナンキーおじさんとマーゴロットは大理石になってしまいます。この魔法を破るためには、エメラルドの都にある<六つ葉のクローバー>、ウィンキーにいる<黄色いチョウの左の羽根>、<暗闇の井戸の水を1ジル>、<ウージイのしっぽの先の毛を3本>、<生きている人間のからだの油を1滴>が必要だそうです。これらを探すためにオジョはツギハギ娘のスクラップスとバングルとともに旅に出ます。

 旅先で出会ったウージイはしっぽの先の毛を抜いてもよいと言ってくれますが、どんなに引っ張ても抜けないので同行することになりました。それから危険な葉っぱから偶然助けてくれたモジャボロも加わり、エメラルドの都を目指します。途中、木挽き台の馬に乗ったかかしに出会い、かかしとスクラップスは惹かれ合うのでした。

 エメラルドの都に着いたところで、オジョは<六つ葉のクローバー>を見つけます。ただし、オズの法律でこれを摘み取ることは禁止されていました。しかし、オジョはおじさんを助けるため法律を破ってクローバーを摘みました。そしてオジョはオズマの命令で逮捕され、囚人となってしまいました。その後、自分の罪を認め赦されたオジョは、スクラップス、かかし、ドロシーとともに再び旅に出ます。

 <暗闇の井戸の水>を無事手に入れたオジョたちは、次にチョウの羽根を手に入れるため、ウィンキーのブリキの木こりを訪ねます。ここで、ブリキの木こりから<生きている人間のからだの油>を手に入れ、残るは<黄色いチョウの左の羽根>だけになりました。しかし、生き物を傷つける行為を一切認めないブリキの木こりは、チョウの羽根を取ることを許しません。絶望したオジョでしたが、ブリキの木こりはオズマのところへ行くことを提案します。

 エメラルドの都へ戻ると、大理石となったナンキーおじさんとマーゴロット、そしてピプト博士がいました。グリンダに命じられて魔法使いは、ピプト博士から魔力を剥奪し、大理石となった2人の魔法を解いて元に戻します。こうしてオジョは大好きなナンキーおじさんと再会することができたのでした。

 

ー登場人物ー

オジョ:主人公。貧しくて退屈な生活に飽きてきている。自分が<不運なオジョ>だから、何事もうまくいかないのだと思い込む。本来は心優しい少年だが、おじさんを救うために何かと利己的な行動が多い。

スクラップス:ツギハギ娘。オジョが脳みそをこっそり追加したためか、容姿同様ぶっ飛んだキャラに。かかしのことを心からハンサムだと思っている。

バングル:ガラスのネコ。ピンクの脳みそとルビーの心臓を持っている。このため、うぬぼれやで高慢な性格となった。常識はある方。魔法使いによってピンクの脳から透明の脳に入れ替えられて、つつましい性格となった。

ウージイ:箱が組み合わさったような生き物。怒ると火を吐くことができる。ミツバチが大好物。自分がとても恐ろしい生き物だと思い込んでいる。

モジャボロ:放浪癖がある。今回はオズの国の案内役。

オズマ:オズの国の最高支配者。心優しい美少女。絶対的権力によりオズに平和と安定をもたらしている。

ドロシー:オズマの親友で王女。カンサス出身。質素で着飾ったりすることを好まない、素朴な少女。冒険慣れしている。

トト:ドロシーのペット。今回は特にトラブルの原因とはならず。

かかし:スクラップスに一目惚れ。彼女の前ではいいかっこしようと頑張っている。あまり知恵の部分では活躍しなかった気がする。ジンジャー(@オズの虹の国)にメンテナンスしてもらっているらしい。

魔法使い:今回一番活躍した人。グリンダの弟子だと思っていたら助手になっていた。

ブリキの木こり:慈愛の精神の持ち主。生きとし生けるもの総てに愛情を注ぐ。理想が高く、例外を許さない。

ジャック:頭のカボチャは自給自足。一泊させてくれた。

ナンキーおじさん:オジョの大切な人。ものすごく無口。

ピプト博士:<ねじくれ魔術師>。体中曲がっている。性格がねじくれているわけではない。モンビばあさんに<いのちの粉>を渡した。魔法使いによって魔力を剥奪されたが、体のねじくれをまっすぐにしてもらった。

マーゴロット:ピプト博士の妻。気のいいおばちゃん。従順な召使を欲しがっている。

 

ーその他ー

☆ユリカについて

 「オズのエメラルドの都」で一切触れられていなかったので、てっきり措いて行かれたものだとばかり思っていたら、オズへ来ていたらしい。白い子ネコだったはずだが、ピンクの子ネコになっていた(「オズと不思議な地下の国」で、ユリカがピンクに見えるような描写はあった)。宮殿の人気者だとか。ちなみに、今作での出番は全くない。

☆いのちの粉

 振りかけると命が宿る魔法の粉。これによって、ジャックや木挽き台の馬、空飛ぶガンプが生まれた。

 「オズへつづく道」でいのちの粉を作った魔術師は死んだことになっていた。そして、ダイナという親戚のおばあさんが遺品を引き取った際に手に入れ、うっかり敷物のクマに全部振りかけてしまったので、この世にいのちの粉はもう存在しないはずだが…。

☆カタマラ水

 振りかけると大理石になる。「オズの虹の国」でチップ少年が大理石にされかけたのと同じ魔法かどうかは不明(こちらの場合、モンビが調合して飲ませようとしていた)。

☆不思議な住人達

・チス:大きなヤマアラシ(のような生き物)。針を発射して通行人にケガを負わせる。針は回収しなければならない。

トッテンホット:夜行性のいたずら小鬼。

・ユープ:人間を食べたがっている巨人。

・トビハネ族:一本足で飛び跳ねながら移動する。

・イッカク族:額に角を持つ。くだらない冗談を言うのが大好きで、それが元でトビハネ族と戦争状態になっていた。

☆魔法について

 オズの国では、グリンダとその助手の魔法使い以外が魔法を使うことを一切禁止されている。

 <北のよい魔女>はどうなったのか。彼女自身、ギリキンの国で<魔女>が住むことを禁止していたはずだが。

☆カドリングの国

 あまり開けていなくて危険な地域らしい。カドリングの国って、グリンダがいる国なのに…?

 

ー感想ー

 主人公がメインキャラではなく、普通のマンチキンの少年だったことが新鮮でした。魔法を解く材料集めの旅を通して、オジョの成長が描かれています。彼は世間知らずで、自分の利益を最優先することに疑問を持ちません。法を犯すこと、命あるものの体の一部を奪うことを正当化しようとします。大切なおじさんを何とかして救いたいオジョの気持ちはよくわかります。だからといって例外を認めてしまうことは、やはり許されないことだと思います。今回、オズマとブリキの木こりはそういった意味でとても大切な役割を果たしていました。

 オズマはオジョに自分の罪の重さを気付かせます。また、法律は為政者の気まぐれで作られたものではなく、どんなに馬鹿馬鹿しく思えるものでもちゃんと意味があると伝えます。一方ブリキの木こりは優しい心の持ち主ですが、その優しさは平等です。どんなに小さな命にも分け隔てなく愛情を注ぎ、オジョの都合で犠牲にはできないと突っぱねます。彼らの友人達も同様の考えです。困っている者の立場からすると、彼らの公平さは理不尽で意地の悪いものに感じてしまうかもしれません。それでもこうした彼らの甘やかさない優しさは素敵だなと思いました。…まあ、オズマも木こりもかなり極端に描かれてはいますが。木こりなんか、こんな人がそばにいたら息苦しくて仕方がないです。それでも今回のオズマと木こりが今までで一番好き。

 初登場となったトンデモ娘のスクラップスはかなり頭が良いです。ただし、常識や倫理観は欠如しているので、自分の本能のままに行動します。なので、オジョを助けたいと思えばオズマや木こりにも平気で反論します。彼女の自由さは、本来のオズのキャラクターそのもののような気がしました。オズは平和でとても安定した国となりましたが、それはオズマの独裁による秩序と調和によるものです。善人だらけでやや「うそくさい」世界における彼女の存在は、いい具合でアクセントとなっていました。

 他作品との矛盾点やツッコミどころも多かったですが、作品単体としては色々な要素が盛りだくさんで、今までのオズシリーズの中でもかなり面白かったと思います。物語のテーマがしっかりとしていてわかりやすく、エピソードそれぞれも考えさせられる内容となっていました。また、キャラクターも個性豊かで楽しかったです。冒険慣れしているドロシーもきっちり活躍してくれたのも嬉しい。最後、魔法の力ですべてが丸く収まったのもオズらしいと思いました。

オズのエメラルドの都

 オズシリーズ6作目。物語の転換期…となるのかも。長いので目次をつけてみました。

 

ーあらすじー

 いよいよ生活が困窮して明日にも家がなくなりそうになったドロシーは、オズマにヘンリーおじさんとエムおばさんとともにオズで暮らしたいと願います。オズマはこれを快く了承し、すぐさま2人をオズへと呼び寄せます。

 ドロシーはオズマの提案で、生活が一変して戸惑うおじさんとおばさんとともに旅行へ行くことになりました。旅行には魔法使い、モジャボロ、オンビー・アンビー、ビリーナ、トトが同行することになりました。馬車を引くのは木挽き台の馬です。こうしてドロシー達はオズのあちこち(カドリングの国~ウィンキーの国)を廻ります。

1.チョッキンペットの村

 ミス・チョッキンペットの作った切り紙人形たちが住んでいる村。人形だけでなく家などすべてが紙でできている。

2.コンガラパズルの国

 住人がジグソーパズルでできている。知らない人を見るとバラバラになりたくなる。他所の人がはめ合わせてくれるのを待っている。

3.道に迷ったので一旦森でキャンプ

以下、朝の散歩で道に迷って魔法使いたちとはぐれてしまったドロシー、トト、ビリーナのみ訪問。

4.キッチンランドの国

 様々な調理器具が住んでいる国。統率能力皆無の大包丁が王様。

5.バンの町

 すべてがパンや焼き菓子でできている町。もちろん住人もパンや焼き菓子。住人(および町)が食べ物でできているという性質上、それらを食物とするドロシー達とは全く相容れない。

6.ウサギの都

 ピンクの目をした森のウサギたちをオオカミなどの外敵から護るために作った都。ウサギたちに文明社会を与えた。文明社会を嫌悪し昔の野ウサギに戻りたいと言っては泣いてばかりの王様だったが、現在の居心地の良さに気付いて王であることを続ける決心をする。

7.ようやく魔法使いたちと合流。ダラダラ村(ダラダラと要点なく喋る人達が住む村)とトリコシ村(取越し苦労ばかりしている人達が住む村)に立ち寄る。

8.ブリキの木こりの城へ。

 と、このようにドロシー達があちこち廻っている一方で、実はノーム王が復讐を企てていたのです。老獪なノームのガフが司令官となり、バケクビ族・ガリゴリ族・妖魔まぼろし族を味方につけた敵勢は、砂漠の地下にトンネルを掘って刻一刻とエメラルドの都へと近づいてきていました。

 偶然魔法の絵によって気付いたオズマからの知らせを受けたブリキの木こりから、ドロシー達はその話を聞かされます。ブリキの木こりの他、かかしやジャックとも合流した一行は打開策を見出せずにエメラルドの都へと戻るのでした。

 オズマは戦うことを否定し、オズの運命を受け入れる覚悟をしていました。しかし、<禁断の泉>の存在を知ったかかしに名案が浮かび、不戦で敵たちを退けることに成功します。

 今回の危機でオズが危険と隣り合わせであることを認識したオズマは、グリンダに相談します。オズを外の世界から切り離すべきだと。そして、オズは外からは見えなくなったのでした。

 

ー登場人物ー 

*途中で力尽きたためかなり適当です;多すぎるよ…。

ドロシー:主人公。おじさん、おばさん想い。自分の道は自分で切り拓く。何があってもめげないし、相手が誰であろうと物怖じしない強い女の子。

ヘンリーおじさん:オズへ来て戸惑いつつも、わりと適応している。

エムおばさん:オズでは今まで信じていた常識が悉く覆されるため文句も多いが、それなりに楽しんでそう。いわゆる“普通の人”。

オズマ:オズの絶対的存在。ドロシーのかけがえのない親友。少女でありながら、非常に細やかな気配りができ、また支配者としての役割を自覚している。

魔法使い:以前は“オズ”と呼ばれていたが、ややこしくなってきたせいか最近では“魔法使い”となっている。グリンダに魔法を教えてもらい、本当の「魔法使い」となった。現在修行中だが、かなり有能らしい。

トト:ドロシーのペット。相変わらずトラブルメーカー。

ビリーナ:しっかり者の黄色いメンドリ。卵をかえしまくった結果、ニワトリ村の女王となったらしい。子々孫々みんなメンドリなら“ドロシー”、オンドリなら“ダニエル”と名付けられている。エムおばさんとは主婦同士の言い合いみたいになっている。分別があって、時にはドロシーの保護者のよう。

モジャボロ:ドロシーの友人。相変わらずモジャモジャ。優しい人柄。

オンビー・アンビー:オズマによって最高司令官に任命された。唯一の兵卒。といっても軍人としてはほぼ無意味。今まで割愛していたが、「オズのオズマ姫」から登場している(「虹の国」に登場していた近衛兵と同一人物かどうかは不明)。

木挽き台の馬:疲れ知らず。魔法使いにオガクズの脳みそをつめてもらって知性がアップ。

ブリキの木こり:ハエや蚊にいたるまで、生きているものすべてに対して慈愛の心を持っている。ウィンキーの国の皇帝。この人は生粋の軍人だと思う(元・木こりだけど)。

かかし:とても穏やかで知性溢れるかかし。今回もその知性でオズを救った。

ジャック:ウィンキーの国で百姓(カボチャ畑)をしている。

チクタク:眠らない、食べない。木こりやかかし、ジャックなどとの違いは、“生きていない”こと。あくまでもロボット。

ムシノスケ:体育大学の教授となっている。学問は魔法使い発明の薬を飲むことで身に付くので必要ないらしい。

ジェリア・ジャム:オズの城の小間使い。「オズの虹の国」からずっと登場している。

ノーム王:名前はロークワット。単細胞でとても乱暴。有能な部下の助言にも聞く耳を持たない。

ガフ:ノーム王より頭が良い分、悪者度もこちらが上。自ら危険を冒してでも凶悪な一族たちを味方に付けたりと、目的のためには手段は択ばないタイプ。

グリンダ:美しい<よい魔女>。世界を簡単に救うことができるくらいとても強い魔力を持っている。たいてい物語の終盤に登場して力を貸してくれる。

 

ーその他ー

☆敵勢力のこと

○バケクビ族・・・とても頭が小さいので段ボールで作った大きな頭の被り物をしている。強い力を持っていて戦いを好むが、頭は悪い。報酬は本物の(大きな)頭。

ガリゴリ族・・・とても大きくて強い。骨と皮と筋の肉体。親分はガリプー。人を痛めつけて苦しめることが大好き。バケクビ族に比べると知恵はある(はず)。報酬はオズの住人2万人。

まぼろし族・・・強い魔力を持つ危険極まりない邪悪な一族。報酬は罪のない人々をめちゃくちゃにする喜び。

☆魔法のベルト

使用者の願いを何でも叶えてくれる。もともとロークワット王のものだったが、ドロシーに奪われた。…オズマがずっと持っているみたいだが??

☆魔法の絵

 オズマの部屋にある絵。オズマが見たい風景をどこでもリアルタイムで見ることができる。

☆魔法の本

 グリンダが持っている。世界で起こったあらゆる事件が記録されていく。

☆禁断の泉

 この泉の水<忘却の水>を飲んだ者はすべてを忘れてしまう。悪い心も忘れてしまい、生まれたばかりの純真な心となる。とはいえ、言葉などは覚えているようなので、生活に困らない程度の知識は忘れないようである。

 

ー感想ー

 とうとうドロシーどころかヘンリーおじさんとエムおばさんまでオズの住人となった今作。ドロシーを現実の世界へ留めていたのは2人の存在だけだったので、2人がオズの住人となることができるなら、ドロシーが現実世界に留まる理由はなくなってしまいました。今までもカンサスでの苦しい生活の話がちょこちょこ出てきましたが、とうとう家を手放さなくてはならなくなりました。このカンサスでの描写が妙にリアルで、ドロシー自身もとても現実的なものの考え方をする少女だと思います。カンサスでの貧しい生活と対照的にオズは理想郷のように描かれています。それは前作「オズへつづく道」でも感じました。

 オズの国は「おとぎの国」のうちの一国です。とても豊かで住民はみな幸福。病気は存在しません(←ビリーナの息子はカゼがもとで死んでしまった、とありましたが;)。「お金」が存在せず、財産はすべて国のものでそれで国民を養います。また、生産したものはお互い分け合います。働く時間と自分のために使う時間は同じくらいだそうです。どちらかというと社会主義的な国家…みたいな感じですね。アメリカとはだいぶ違うようです。

 支配者のオズマは今までと違って、「オズの国の理想的な」支配者だったと思います。武力を否定し、対話を望みます。そして最後まで国民を見捨てません。…「オズのオズマ姫」での武力行使で従わせようとしていた人間と同一人物と思えませんね。いきなり攻め込まれて何も分からないうちに奴隷にされる国民はたまったものじゃないと思いますが。それ以前に、<禁断の泉>の水を飲ませなくても、<魔法のベルト>で敵を無力化して送り返せばよかったのでは??と思わなくもないです。

 当時のアメリカの社会情勢についてはよく分かりませんが、ボームにとっては理想とかけ離れた社会だったのかなあ、と思ってしまいました。

 今回久し振りに悪者が出てきたこともあり、最後まで楽しめました。物語もノーム王とドロシーの話が同時進行となっており、ドロシー達が何も知らずに面白旅を満喫している分、ノーム王の計画の進行が余計に恐ろしいものに感じます。おとぎの国らしく、不思議な住人達もたくさん出てきて、それぞれの持っている問題点が考えさせられる要素になっていました。

 やはりグリンダは最強でした。なんかもう、神様みたい。オズマもどんどんカリスマ的存在になってきて、「普通の少女」ドロシーとはいいバランスの友人関係だと思います。「オズへつづく道」ではあまり好きになれなかったモジャボロは影が薄かったです。一方、魔法使いは大活躍でした。本物の魔法を使えるようになってたし。ビリーナとエムおばさんのやり取りは面白くて好きでした。

 今まで「おとぎの国」は外の世界(現実の世界)と普通につながっていたみたいです。なので、気球や竜巻などの手段(?)で来ることが可能でした。しかし、オズが実は安全ではないことが分かってしまい、外の世界から完全に切り離されてしまいました。この「外の世界」はどの範囲を指すのでしょう。<死の砂漠>の周りのおとぎの国も含まれるのかな?いずれにせよ、オズの国は完全に閉鎖されて<オズの物語、おしまい>となったのです。とてもきれいな終わり方でした。ユリカがどうなったのか気になりますが。

 

 

オズへつづく道

 オズシリーズ5作目。これも当初翻訳を割愛されてたらしいです。理由はオズシリーズ以外のボームの作品からの登場人物が出ているから。あと、あまり人気がなかったから…らしいです。

オズへつづく道 (ハヤカワ文庫NV)

オズへつづく道 (ハヤカワ文庫NV)

 

 

ーあらすじー

 ドロシー(とトト)はモジャモジャ頭でボロボロの服を着た男=モジャボロに道を尋ねられ、案内しようとします。しかし、どういうわけか道に迷ってしまい、途中で出会ったボタン・ブライトという少年も連れて、色々な国を通りながらオズを目指します(オズへたどり着けば帰れるから)。

1.キツネの国へ。オズマの誕生日パーティーが開かれることを知る。ボタン・ブライトの頭がキツネになる。

2.キツネの国を出たあと虹の娘ポリクロームも同行者となる。

3.ロバの国へ。モジャボロの頭がロバになる。

4.ロバの国を出たあとミュージッカーに出会う。

5.スクードラーに捕まりスープにされかけ、逃げる。

6.<死の砂漠>に到着。モジャボロの知り合い(ジョニー・スグヤール)にサンドボードを作ってもらい砂漠を越えてオズの国(ウィンキーの国)へ。<真実の池>でモジャボロとボタン・ブライトの頭が元通りになる。

 なんとかオズの国へたどり着いた一行は、ドロシー達を迎えに来たチクタクとビリーナに会います。そして、ブリキの木こりの住むウィンキーの城で1泊してからエメラルドの都へ向かうのでした。途中でジャックを訪ね、更に馬車を引いて迎えに来た臆病ライオンと腹ぺこタイガーと合流します。

 エメラルドの都へ着いたドロシー達を懐かしい面々が大歓迎します。ドロシーは「王女」として誕生パーティーの招待客をオズマの代わりにもてなすのです(オズマは準備で忙しいから)。

 晩餐会、祝賀会と大いに盛り上がった後、<魔法使い>の作ったシャボン玉にサンタクロースが魔法をかけて、招待客たちはそれぞれの場所に帰ります。ドロシーとトトは<魔法のベルト>で帰るのでした。

 

ー登場人物ー(多いので適当に割愛してます;)

ドロシー:主人公。今回自然災害の力以外でおとぎの国へやって来たと思っていたら、オズマが呼び寄せていたらしい。オズの国では王女様。

トト:ドロシーのペット。相変わらずおとぎの国へ来ても喋れない。吠えたり飛び掛かろうとするたびにドロシーに叱られている。

モジャボロ:<愛の磁石(ラヴ・マグネット)>の力で、モジャボロのことをみんな好きになってくれる。最初はもらったものだと言っていたが、実は盗んだものであった。オズマによって手放すことを決め、今後誠実に生きることを約束してオズの国へ住むことが許される。

ボタン・ブライト:とても可愛らしい容姿の男の子。口癖は「わかんない」。ほとんどの質問に対して、この返答。ほぼ会話は成立しない。

ポリクローム:虹の娘。大変美しい女の子。よく踊っている。虹の橋から落っこちたらしい。露のしずくか霧のケーキしか食べない。

オズマ:オズの絶対的支配者。ドロシーの親友。誰よりも美しい姿と心を持っている。

ビリーナ:勝気なメンドリ。10羽のヒヨコをかえした。名前はみんなドロシー(!!)

チクタク:ゼンマイ仕掛けのロボット。心はないがとても頼りになる。

ジャック:久し振りに登場のカボチャ人間。頭が熟れすぎてダメになるたびにオズマに作り直してもらっている。ダメになった頭はそれぞれ墓を作って埋めている。ちょっと頭が良くなった。

ブリキの木こり(ニック・チョッパー):心優しいウィンキーの国の皇帝。ブリキに強いこだわりを持っている。

かかし:知恵者の藁人間。おおらかな性格。オズマの誕生日に合わせてマンチキンの国で藁を新調し、顔を書き直してもらった。

臆病ライオンと腹ぺこタイガー:腹ぺこタイガーのせいで、臆病ライオンの影が余計に薄くなったような…。

魔法使い:オズ。手品でみんなを楽しませてくれる。祝賀会の司会者。

グリンダ:南に住む<よい魔女>。美しく強い力を持っている。

北の魔女:よい魔女。ドロシーが初めに出会った魔女で、旅の道標を示してくれた重要人物なのに扱いが…。名前もいまだに不明。でも存在を忘れられてなくてよかった。

サンタクロース:ゲストの1人。トナカイは留守番らしい。もっともおとぎの国にふさわしい人物。

 

ーメモー

☆<愛の磁石(ラヴ・マグネット)>

 生きとし生けるものみんなが所持者のことを好きになる。モジャボロが手放した後はエメラルドの都の門に掛けられている。

☆スクードラー

 裏表に顔がついていて、両面とも正面となっている。自分の首を投げて攻撃してくる。

 

ー感想ー

 前作の「オズと不思議な地下の国」と今作「オズへつづく道」はどちらかというと番外編的な印象でした。今回あまり楽しめなかったのは、物語がやや単調だったこともありますが、一緒に旅する仲間が微妙だったのもあります。ポリクロームはともかく、モジャボロとボタン・ブライトがちょっと苦手だったので…。

 モジャボロは楽して人の好意を得ようとしていました。オズマから「磁石を盗んで悪いことをしたと思っているか」と問われた時、「盗んでよかった」と答えます。理由は結果的にドロシー達と出会い、オズに来ることもできたから。…いや、盗んだこと自体が問題だから。いちおう盗んだ相手のむすめは幸せになったらしいが、そういうことじゃない。自分本位の理屈を平然と並べるあたりが、強かに感じられてどうも好きになれませんでした。

 ボタン・ブライトは可愛らしい設定だったわけですが、なんでも「わかんない」と答えるので、イライラしました。幼くてたよりないイメージなんだろうけど、私にはそれが可愛らしさには結びつきませんでした。彼の正体(?)はよく分かりませんでしたが、サンタクロースとオズは分かったみたいです。そのうち判明する日が来るのでしょうか。

 まあ、モジャボロもボタン・ブライトもおとぎの国にふさわしいキャラではあったと思います。前作で登場したゼブに比べてだいぶ現実離れしていたし。ポリクロームはかわいかったです。たぶんオズの女の子キャラでは今のところ一番かわいいと思います。ドロシーもオズマも性格的に結構たくましいため、「かわいい」とはちょっと違う気がする。

 終盤、オズの国に着いてからはお馴染みの面々が登場して楽しかったのですが、ちょっと出番が少なかったのが残念でした。それでもおそらく今までのキャラクターがほぼ全員登場していたのは嬉しかったです。また、詳しくは知りませんが他作品の登場人物(サンタクロースまで!)がゲスト出演していたこともあって、お祭り的作品だと言えるのかもしれません。

 

金色のコルダ 大学生編 (2)

 先日発売された「金色のコルダ大学生編」の2巻目。いちおう火原の活躍回…でしたが、色々カオスでした。火原はかっこよかったです。

 感想は新刊のネタバレとなりますので、折りたたみます。

 

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オズと不思議な地下の国

 オズシリーズ4作目。なんですが、翻訳された順では9作目となっています。というのも、当初は諸事情でこれと次の作品は翻訳されてなかったようです。私も昔読んだときは何も考えず出版順に読んだのですが、「オズのオズマ姫」のあとがきに「4冊目と5冊目は割愛します」みたいなことが書いてあり、今回初めてその事実を知りました。色々理由はあったみたいですが、その一つにストーリーがやや冗長であることがあったようです。読後、他作品に比べて単調な気はしましたが、今読み直すととても重要な作品だったと思いました。なぜかというと、「オズの虹の国」で感じた疑問の答えがいちおう描かれていたから(納得できるかどうかは別として)。

 ーあらすじー 

 ドロシーは駅で子猫のユリカ、迎えに来ていた少年ゼブとともに地震のはずみで(?)馬車(馬のジムも)ごとおとぎの国へ飛ばされてしまいます。そこは地下の世界で、ドロシー達は色々な国を旅しながら地上を目指します。

 以下、地下の国での出来事。ほぼトラブルに遭遇→逃げて次のエリアの展開。

1.野菜の国(野菜人間(マンガブー人)が住んでいる国)でオズと再会。マンガブー人に襲われて逃げる。

2.姿が見えない者たちが住む国(ボウの谷)へ。見えないクマに襲われる。

3.リボンを集めている自称発明家の老人に会う。

4.ガーゴイルに遭遇し捕まるが脱走。

5.コドラ(子どものドラゴン)に遭遇、逃げる。

6.行き止まりになってしまい、ようやくここでオズマに助けを求めることになる。

 そして、全員エメラルドの都に着き、盛大にもてなされます。お馴染みの面々もドロシーに会うために集まります。ユリカがオズマを怒らせて裁判になって危うく死刑になりかけるといったハプニングはありましたが、みんな楽しい時間を過ごします。

 その後、そろそろ家に帰りたくなったドロシー達は元の世界に帰るのでした。

 

ー登場人物ー

ドロシー:主人公。どういうわけかしょっちゅう災害に巻き込まれてはおとぎの国に飛ばされる。

ユリカ:子ねこ。ちょっと性悪なところがある。といっても別にみんなの足を引っ張ったりするわけではなく、ただ自分の欲望を忠実に口にしているだけ。おとぎの国では喋ることができる。

ゼブ:ドロシーの親戚の男の子。ドロシーと違っておとぎの国にあまり馴染めない。要は普通の子。

ジム:ゼブの馬車馬。骨と皮の老馬。プライドは高い。

オズオマハ出身のペテン師。サーカスに所属していた。手品用の9匹のちっちゃなコブタを連れている。

9匹のコブタ:オズの手品用。喋る。ハツカネズミくらいの大きさ。ユリカの食欲をそそる。1匹はオズマにプレゼントされるが…。

オズマ:オズの国の最高支配者。ドロシーの親友。ドロシーの魔法のベルトを使ってドロシー達を助けた。

木挽き台の馬:疲れ知らずの馬(もどき)。本物の馬であるジムと競争して勝ち、彼のプライドをズタズタにする。

その他の登場人物:かかし、ブリキの木こり、臆病ライオン、腹ぺこタイガー、ビリーナ、ムシノスケ、チクタク

 

ーメモー

☆オズの名前について

 本名が寿限無並みに長ったらしい名前であったため、初めの頭文字2つを取ってOZと名乗った。オズの国に来たからオズと名乗ったわけではなかったらしい。ちなみに、オズの支配者の名は必ず<オズ>または<オズマ(女性の場合)>となる。

 …オズマの父は「パストリア」だったのでは?

☆オズが「オズ」にやって来た時

 「オズ」は東西南北4つの国に分かれていて、それぞれの国を魔女が治めていた。オズはその中心に<エメラルドの都>をつくり、自分が支配者となった。

☆「オズ」の国について

<『オズの不思議の地下の国』によると>

 オズがやって来る以前、もともとオズの国は1人の支配者によって治められていた。しかし、4人の魔女が結託してそれぞれの地域を支配するため、当時のオズの王(オズマの祖父)を追い出した(モンビが拉致監禁した)。

 その後、4人の魔女のうち北と南は<よい魔女>が<悪い魔女>を退治した。この頃にオズがオズの国にやって来た。

 北の魔女に退治されたモンビはそれでもオズマの祖父を幽閉したままだった。その後オズマの父も閉じ込められ、オズマが生まれた。オズマは王女であることがバレないように男の子(チップ)に変身させられていた。←祖父、父はどうなった?父はいつ捕まったのか。それからオズマの母は??

<『オズの虹の国』との矛盾点>

・グリンダによると、オズがパストリア(オズマの父)から王座を奪った。また、オズがモンビに頼んでオズマの存在を隠してもらった。→オズの祖父がオズの前王。そもそも<オズの国>にオズがやって来た時すでに前王(たぶんオズマの祖父)はいなかったのなら、オズが王座を奪ったわけではないし、オズマの存在も知らなかったことになる(実際オズマの存在を知らなかった)。そして、オズがモンビを訪ねる理由もない。

・モンビは北の魔女が禁じていたため<魔女>ではなかった。←<北の魔女>に征伐されて<魔女>から格下げになったのか?

 いちおうまとめると、

<オズ>という1人の王が支配する国があった]→[4人の魔女が王を追い出し、オズを4つの地域(国)に分けてそれぞれが支配するようになった]→[北と南は<よい魔女>によって<悪い魔女>が退治された]→[オズが<オズの国>へ来た]→[オズが4つの国の中心に<エメラルドの都>をつくり、<オズの国>として統治した]→[ドロシーがオズにやって来て悪い魔女を退治した(どの国にも悪い魔女がいなくなった)]→[オズがかかしに王座を譲り故郷に帰る]→[ジンジャーによるクーデターによってかかしが王座を奪われる]→[グリンダの助力によりオズマが王座を奪還する

といった感じだと思います。

☆ドロシーとオズマの約束の時間

<オズのオズマ姫>では毎土曜の朝

<オズと不思議な地下の国>では毎日4時

 確かに土曜の朝だと下手したら1週間くらい待たなければならないのでストーリー上無理があるかも。とはいえ、毎日4時だった場合、オズマがもっと早くドロシーを助けることができたような気もする。ドロシーが望まない限りは絶対にオズマは魔法のベルトが使えないのか?(ドロシーが合図を送ればオズマがベルトを使ってくれるという約束)

☆トトだけ喋れない?

  ビリーナ、ユリカだけでなくジムやコブタまで喋れたのに…

☆ジャックは大丈夫?

 チクタクや木挽き台の馬は登場しましたが、ジャックは登場しませんでした。頭が熟れすぎたのでしょうか…。

 …たぶん他にもあるかもしれませんが、読んでいてぱっと気が付いたのはこのあたり。

 

ー感想ー

 深く考えてはいけないとは思いつつ、色々気になる部分が多かったです。不思議なキャラクターは相変わらず多かったですが、一緒に旅する仲間がアメリカ出身者ばかりでおとぎの国のキャラクターがいなかったせいか、あっさりしていた気がします。地下の国での冒険のあたりは物語が単調に進んで行くこともあって、少し物足りなさを感じました。いつもは愉快な仲間たちのずれた会話の中に強い信頼関係が感じられたのに、今回はそういった場面はあまり見られませんでした。

 今作のテーマはきっと「オズの<オズの国>への帰還」だと思います。そして、ゼブ、ユリカ、ジムは今回限りのゲストキャラみたいな扱いのようです。ゼブはおとぎの国へ来て楽しむよりはむしろ戸惑いの方が大きかったし、ユリカはその自由奔放な性格のせいでみんなに嫌われてしまいました。ジムもおとぎの国での現実が厳しすぎてつらい思いをします。こうして、オズとドロシー以外はおとぎの国に馴染むことはできませんでした。そうやって考えると、ドロシー(とオズ)の適応力がすごいといえるのかもしれません。

 見どころとしては、物語終盤の裁判でしょうか。オズマがもらったコブタがいなくなったことで、ユリカが食べたのではないかと疑われてしまいます。ユリカのふてぶてしい態度がオズマを怒らせてしまい、裁判となるのです。ここで、検察にムシノスケ、弁護人にブリキの木こりが選ばれ、陪審員にはおなじみのメンバーから9人が選ばれます。一旦ユリカは死刑を宣告されますが、オズと木こりがイカサマで無実にしたところ、反発したユリカ自身の口から真相が語られるのでした。

 ユリカが無罪となってもオズの面々はユリカを避けます(しかも部屋から出ないように言われる)。それはユリカがコブタを食べるチャンスがなかったから結果的に食べなかったに過ぎないと考えたからです。これって罪を犯すかもしれないと思われた(犯罪を犯す要素を持った)人は、たとえ現実に罪を犯していなくても隔離されるということですよね…。正直なところ、そうしてくれと思わないでもない気もしますが。実際には人道的に問題がありそうです。猫は小動物を食べることは当たり前で、それは本当に罪なのでしょうか。腹ぺこタイガーが良心が本能に勝っていることを考えると、おとぎの国でのみ成立する「罪」なのかも。弁護人はイカサマに加担するし。他の作品でもそうでしたが、オズの人々が必ずしも「正義」としては描かれていないようです。

 ユリカもジムはもちろん、ゼブもおとぎの国より現実の世界で生きる方が楽だと考えます。本来の自分として生きていくことができるので当たり前です。むしろどちらの世界でもやっていけるドロシーやオズが特殊だと思います。

 今回は少し番外編的な印象のあるお話でした。当初翻訳を割愛された理由もわからないでもない感じです。オズが<オズの国>に戻ってきたこと以外に他作品とつながりはなさそうです。ゼブ、ユリカ、ジムなどは今回限りのようですし。あと、ドロシーとビリーナの再会シーンは面白かったです。ビリーナ、元気そうで何よりでした。